「「ロミオとジュリエット」はシェイクスピアの国のバレエ団の金看板と呼べるレパートリー。過去最強ともいえるスター陣の競演を連日見比べることができると同時に、ソリストから群衆までが物語の中で生きぬくこのバレエ団の演劇性が余すところなく味わえます。」
運よく最前列・中央付近の席を取ることが出来たので、環境は最高。
指揮者のクーン・ケッセルズさんとの距離は2メートルもない。
おかげで、舞台と音楽だけでなく、ケッセルズさんの指揮と鼻歌まで堪能することが出来た。
この日のキャストは、ジュリエット:マリアネラ・ヌニェス、ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル。
まず、41歳のヌニェスの脚が細く見えるのに驚く。
というのも、昨年のロイヤル・バレエ・ガラで来日した際は、例によって筋肉質で逞しい脚が目立っていたからである。
1年で脚を細くするというのはおそらく不可能だろうから、これはやはり衣装の効果なのだろう。
他方、相手役のブレイスウェルは、映画版でロミオ役を務めていることもあり、イメージ通りのロミオ、要するに「ザ・ロミオ」という印象である。
私は、これまで新国立劇場(マクミラン版)とK‐Ballet(熊川哲也版)を観ているのだが、真っ先に気づくのは、ロイヤルのダンサーたちは、コール・ドに至るまで全員が「顔で演技している」ということである。
舞台の隅々まで・一人一人観察したのだが、例外なく表情をフルに使って演技している。
これに比べると、日本のバレエ団は、特に男性ダンサーの表情が乏しく見えてしまう。
さて、今回私が一番感動し、かつビックリしたのは、1幕ラストの「バルコニーのパ・ド・ドゥ」のラスト・シーンである。
バルコニーでロミオを見送るジュリエット(ヌニェス)が、感極まって、「はぁ~ッ!」という大きなため息を漏らしたのである。
この瞬間私は、全身の力が抜けてしまった。
ヌニェスは、到底言葉では表現出来ないほどの喜びを、身体の動き=ダンスで表現するのではなく、ため息で表現したのである。
41歳の(離婚歴のある)女性が、これだけで13歳の少女に見えてしまう。
なんだかもうこれで「お腹いっぱい!」という感じになってしまった。