満月通信

「満月(バドル)」とは「美しくて目立つこと」心(カリブ)も美しくなるような交流の場になるといいですね。

200のハディースその7

2006-10-29 | ハディース&子どものための物語
بسم الله الرحمان الرحيم

السلام عليكم


賞賛に値する人格、性質について(嫉妬、憎悪、虐待、侮辱の禁止)[その2]

 アブー・フライラ(رضى الله عنه)によるとみ使い(صلى الله عليه و سلم)は言われました。
「互いに嫉妬し合ってはならない。値段を吊り上げてはならない。憎悪し合ったり敵対し合ったりしてはならない。他人の取引に割り込んではならない。アッラーの僕として互いに兄弟になりなさい。ムスリムは他のムスリムの兄弟である。彼を虐待したり、見捨てたり、侮辱してはならない。敬神はここにある(と胸を三度指さした)。人にとっての悪は兄弟であるムスリムを侮辱することである。全てのムスリムは他のムスリムに対して神聖な存在であり、彼の生命、財産、名誉を犯してはならない。」
(ムスリムによる伝承)

 中世アラブの歴史学者で「歴史序説」を著したイブン・ハルドゥーンは
「強い嫉妬の心を持つ者は、他人が手中した物やその満足な様子を見て羨み、その者の羨望が極度に高まると、それを享受している者からそれの消滅を切望する。」
(小笠原良治「アラブの秘密」)
とその心理を分析しています。
 嫉妬の災難から逃れるためにアッラーのご加護を願わなければならないほどです。
『黎明の主にご加護を乞い願う。・・・また嫉妬する者の嫉妬の悪から』
(黎明章113章1-5節)
 
 嫉妬は人間の本性かと思うほど誰にでも湧き出る感情ですが、
「嫉妬を避けなさい。嫉妬は善行を食べてしまいます。ちょうど火が薪を食べてしまうように。」
(アブー・ダーウードによる伝承)
とあるように嫉妬の害悪は明らかです。

 劣等心や嫉妬心を持たずに生きることができるか。どうすればそれらを捨てることができるかについて、学者・西部邁は若かりし頃の克服方法を語っています。
「誰かを相手にしていて自分にまたしても込み上げてくる嫉妬の感情があれば、あわてふためくようにして、『うらやましいね、君は』と言ってしまうことにしたのです。言ってしまったとたんに嫉妬の感情はなくなる。そういう工夫を身につけたのです。」
(「人生の作法」飛鳥出版社)

 これは参考になります。この世には優れたものと劣っているものがあり、評価を受ける人もいれば評価されない人もいますが、全てはアッラーの計らいで、その理由は人知では推し量ることができません。

 立派なものを見た時アラブの社会では、マー シャーア=ッ=ラーما شاء الله(アッラーが望まれたものは何でも実現するであろう)と言ってアッラーを称えます。
 ムスリムは兄弟です。
「(経済的に困っている)兄弟の必要に応えると、今度はアッラーが応えた人の必要を満たしてくれます。また他のムスリムの苦悩を取り除く人に対し、アッラーが審判の日の苦悩を一つ取り除いてくれます。」
(アブー・ブハーリーとムスリムによる伝承)

 アッラーはムスリム一人ひとりを神聖なものとして造られました。虐待や侮辱は人間の神聖さを否定するものです。そして自分の胸(心)に湧き起こる荒ぶる感情の正しいコントロールが敬神につながります。このハディースは同胞同士が相手を尊重し支えあうことを勧め、人間の尊厳を守るのがムスリムの姿であることを説いています。

アッラーのご加護と祝福がありますように
والسلام