バリん子U・エ・Uブログ

趣味、幸せ探し! 毎日、小さな幸せを見つけては、ご機嫌にハイテンションに生きているMダックスです。

奇跡はあるんだよ 完成版

2015-02-24 22:28:57 | お話 ペットロス
少年は奇跡を探していた。
「今日は塾の日だ。2ページ残っている宿題を・・・・」
そこまで考えて、少年は自分が微笑んでいることに驚いた。
立ち止まって考え込む少年の頬に、ビルの間から午後の光が差している。
自分が生まれる前から家にいたあの子のあたたかさだと気付く。
優しい毛皮の感触までが蘇ってくるようだった。
あの子はいつもここにいる。それは小さな奇跡だった。


ママは奇跡を願わずにはいられなかった。
あの子を亡くして、ママでなくなった女は旅に出た。
少しでもあの子に近づけるような気がしたから、飛行機の旅にした。
もちろん、星はどこまでも遠く、雲の上にも天国はなかった。
けれど、煌めく白い雲を見つめたとき、気が付いた。
あの子の一部は大気に融けて雨になり雲になり空気になって彼女を包む。
あの子はいつもここにいる。それは小さな奇跡だった。


お父さんは奇跡は信じていなかった。
朝起きて仕事に行き、仕事から帰ってきて眠る。
その繰り返し。ある週末に夜更かしをして、お酒を過ごした。
酔っ払って、思わずあの子の名前を呼んでいた。
自分の魂にあの子が刻まれていることに気が付いた。
あの子はいつもここにいる。それは小さな奇跡だった。


そして、何より、一緒に過ごした日々こそが、奇跡だった。