おもいでの夏

2005-05-22 | literature

「おもいでの夏」(Summer of '42)。高校生の頃だろうか,小説化されたものを読み強く印象に残った。舞台は戦時下1942年の夏,メーン州の海辺の町(メーンはマサチューセッツの北に位置する)。15歳の主人公ハーミーが,出征した夫の帰還を待つ年上の女性ドロシーに恋をする。やがて夫戦死の電報が届く・・・。翌朝ドロシーは,忘れられない手紙をハーミーに残して,いずことなく去る。1971年に公開。ドロシー役がジェニファー・オニール。音楽がミシェル・ルグラン。それから数十年たちハーミーが海辺の町に戻ったシーンが印象に残っている。仲がよかった幼友達たちのそれからの運命,一人は朝鮮戦争で戦死し,一人は・・・。かたちこそ違え,だれにでもある永遠の夏。

映画化のあと小説化,さらにはミュージカル化されたこの物語は,原作者ハーマン・ローチャーの自伝に基づくものあるとのこと。それについて,http://www.satonao.com/cinema/42.htmlに興味深い話が紹介されていたので転載させていただく。

<つい最近、「おもいでの夏」のミュージカル化にともない、ハーマン・ローチャーがインタビューされました。この中で、質問者がやはり、この物語がどこまで自伝的なのかについて質問したところ、登場人物は全て実存した人を実名で出したのことです。そう、ドロシーもです。「おもいでの夏」の映画が1971年に公開され、ヒットしたあと、ハーマン ローチャーは、数多くの「私がドロシー」という手紙を受け取ったとのことですが、その中の一つ、オハイオ州カントン市から来た手紙を見た時:「筆跡で彼女だということが分かりました。名字は無く、返信の住所も記されていませんでした。文面の内容からは、私がその後どうなったのか心配していたらしく、「30年前のことはそのままそっとしておきましょう」といったことで、手紙の響きでは、彼女は再婚して、子供や孫までいるらしいのです。>

追記
IMDbという映画サイトで確認したところ(http://www.imdb.com/title/tt0067803/trivia)
Trivia for Summer of '42 (1971) の項目に以下の記述があった。

*Though author Herman Raucher admits to moving the order of certain events around and interchanging some dialogue, the movie is (according to those involved) an accurate depiction of events in Raucher's life in the summer of 1942 on Nantucket Island; he didn't even change anyone's name. He began writing the screenplay as a tribute to his friend Oscy, who'd been killed in the Korean War, but midway through writing it Raucher realized that he wanted to make it a story about Dorothy, who he had in fact neither seen nor heard from since their last night together as depicted in the movie. Raucher admits that in all the time he knew her, he never bothered to ask her what her last name was.
映画は,ハーマン・ローチャーの体験した,ナンタケット島での1942年の夏の出来事をほぼ忠実に表現したもの(ナンタケット島はケープ・コッドの南にある避暑地)。登場人物も実名を使った。はじめは朝鮮戦争で戦死したオシーへのトリビュートとして脚本を書き始めたが、途中で本当はドロシーについての物語として書きたいと思っていたことに気づき、そのように書きかえた。あの夜以後ドロシーと会ったことも、手紙をもらったことも一度もなかった。

*During an interview on "The Mike Douglas Show" (1961), Herman Raucher said that after the novel and movie were released, several women wrote letters to him claiming to be Dorothy. One of the letters was indeed from the real Dorothy, who wanted to know if she had psychologically damaged Raucher, and also informed him that had been happily remarried and was now a grandmother. It was the last time that Raucher, by that time married with children, heard from Dorothy.
「マイク・ダグラスショー」(1961)でのインタビューでローチャーが語ったこと:ローチャーは,小説と映画の公開後ドロシーから手紙を受け取る。そのなかで,ドロシーは彼を傷つけてしまったのではないかと心配していたこと,幸せな再婚をして孫もいることを知らせる(このときには、ローチャーは結婚していて子どももいた)。「おもいでの夏」はこの手紙を受け取るために書かれたラブレターだったのかもしれない。

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