紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

★16 姉さん被り

2023-08-12 06:31:02 | 「とある日のこと」2023年度


私の早朝散歩のコースは家を基準にあちらこちらに向かっている。大抵は折り返さずにぐるりと回って家に戻るコース。この朝は、堤防の獣道を上った。日の出の写真を撮ったりしながら、しばらくその場に留まる。何といっても日の出を見るのが好きだ。毎回同じような風景でも、どこか違う。この朝は、雲が厚く、太陽が千切れて、滲んで、それでも、雲間の朱色が時たまカッと照り付ける。ひと時、太陽と向き合い、幸せ感を頂く。

「さて、どっちへ行こうかしら」一つ目の坂を下って大きな農家さんの花園へ向かう。 
 花園は農道と大きなお屋敷の間の柘植の生垣に沿ってある。奥行3m×15mほど。いつも季節の花が咲いている。どなたもいない早朝、じっくりと眺めて撮らせて頂くのだ。

 高齢の姉さん被りが熊手を使って、柘植の生垣の剪定した枝葉や、花壇の雑草を抜いたものを一か所に集めていた。声をかけると優しい笑顔をこちらに向けた。枝葉や雑草は花壇の隅に重ねて置き、一年すると良い堆肥になり、野菜の植え付時、土にすき込むと良い肥料になると言った。農道を挟んで、県道に沿った600坪ほどの畑がある。
「こちらの畑はお宅様のですか?」と私が聞くと、
「そうなの。草を生やして、汚くしていてもと思って、少しずつ野菜を植えているのですよ。畑は売っても安いから。切り売りはしませんよ。売るのなら一括してでないと」
畑は何種類もの野菜を少しずつ植えてあり、少人数の家族用に見えた。

 近年、子供と一緒に暮らしたくない。親と一緒に暮らしたくない。お互い自由に干渉せずに暮らしましょうという世相。大きなお屋敷で立派な家でも、老いた夫婦二人やまた一人暮らしなどが多いと聞く。この姉さん被りのお家もそうなのだろうか?




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