「本日も読書」

読書と映画の感想。ジャンル無関係、コミック多いけどたまに活字も。

島津は屈せず

2011年06月07日 | book
毛利は残った、の近衛先生の本が新聞広告にちらっと
出ていたので買いに行った。
久しぶりですなあ、文芸書で前作良かったから買いにいこう、というのは。

主人公は島津惟新。
関が原の戦いで、敵中突破をはかり家康の肝を冷やした武将です。
話の中心的には毛利は残った、の島津版ではあるのだが、それよりも前の
豊臣の九州攻め終盤から話は始まる。

それでねえ、思ったのはこの話は「苦労性の猛将」の話というかw
なんかイメージつきにくいですかね。

惟新は、毛利輝元のように当主、というわけではないのですね。
お兄さんが当主。
このお兄さんとの関係がよそよそしく、まあ確執というほどでも
ないが、惟新は仲良くしたいのに、お兄さんは冷めている。
ツンデレですなww
まあ最後までデレは無いのだけどww
ともかく壁があるというか、一線を引いている。

それは惟新が優れた武将だからなのですね。
しかも頭もよく、薩摩にこもっている兄とは違い、
中央の、豊臣、家康の動きをよくつかんでいる。
それでお互いすれ違いが生まれる。

だけど惟新はとにかく兄には尽くす。
兄にとってかわる気は無い。

それでこの本ではですね、そのせいで
最初から最後まで軍勢がそろわない、というのが面白い。

だって惟新は朝鮮に攻め、伏見で兵を集め、西軍につくことになって
関が原にいったときも、結局満足な兵は本国からこないんです。

毎回「兵が足りないから送ってくれ」「どうなってるんだ」
と書状を送るばかり。
そのたびに石田三成に「兵が足りないようだがどうなってるんだ」といわれ
ほかの武将には「その程度の兵しかいないのか」と見下され、
強くものを言いたいのに、兵が少ないから惟新もなかなか軍議でものをいえない。

少しずつ自費でやってくる薩摩の兵士達も
数十人、数百人単位で、他の小説なら武将達は数千人、数万人を動員するのに
惟新、天下分け目の大戦で1500人くらいですよ、しかも兵糧なし。

朝鮮出兵のときも兵士が全然集まらず、仕方ないので周りの数十人だか、数百人だかで
先行するのだが、すでに数万の大軍を率いたほかの武将たちの後を追うので
「物見遊山」状態という、もう情けなさ過ぎてユーモラスww

家康がついに動き出したときは、
伏見城かどこかに詰めるため十数人で向かう。
すると城のなかの徳川勢に「兵士が全然いないから入れてやらん」と
言われてwww

このへんは最初から家康が仕組んだともいえますが、
ともかくずーーーーーっと兵が足りない。
それっばかり。

だけどね、強いんです。この少ない薩摩の兵たちが。
もう無茶苦茶強い。
朝鮮では5000で20万の相手を敗走させ、
関が原では1500で押し寄せる東軍の真っ只中を進み逃げる。

最後は兄や息子と一緒にのらりくらりと
家康からの上洛しろ命令をかわし続け、
領土をきっちり守るという。

兄の龍伯だっけかな、彼の心情を一切描いていないので、
兄がどう思っているのかわからない。
単純な愚かな当主ではなくて、どうも深謀遠慮もある謀略にも
たけているような。

話的には、毛利は残ったよりもスッキリした感じは無いかもしれない。
結構最後まで苦労させられっぱなしだしw
ただ、毛利は残った、と一緒に読んでいると、
この長州と薩摩があとで徳川をなあ、と思ってなかなか感慨といいますか、面白い。

島津は屈せず
クリエーター情報なし
毎日新聞社

最新の画像もっと見る

コメントを投稿