「本日も読書」

読書と映画の感想。ジャンル無関係、コミック多いけどたまに活字も。

森の聖者

2005年01月15日 | book
アメリカの環境主義思想の大本がこの人だそうだ。
「森の聖者-自然保護の父ジョン・ミューア」加藤則芳 小学館

IBMに続いてまたも伝記・・・珍しいよねえ。
あっちは自伝、こっちはあくまで伝記。
新天地アメリカに家族と一緒に旅立ったジョンは、
狂信的な父と対立しながら大学へ。時は南北戦争。
徴兵から逃げ、カナダへ。自然の豊かさに気付き・・・

伝記というのは良い面ばかり、と言われるが、
それでもやっぱりこの人は聖者だったのだろう。
内気で自然を愛し、「自然保護」なんて誰も考えていない
時代にそれを実践し、訴え、そのために自ら進んで、権威ある大学教授と論争をし
さらに汚い政治の世界へ・・・

山の中にいて「下界」の面倒ごとは避けたい。
そんなある種純粋だけど変な人間を支える家族、カー教授、
たくさんの人々。
人付きあいは下手で非社交的なジョンだけど、優しくて
自然が好きで造詣の深い彼の魅力に皆が支援する。
羨ましいほど支えられている。

だけどそれはあくまで彼の魅力があったから。
非社交的ではあってもその優しさは常に苦しんでいる家族を助け、
傷ついている他人に気付き、手を差し伸べる。
彼とエマソンとの出会いはジーンときます。
互いに相手ともっと早く出会えれば、と思ったことでしょう。

後半では尊敬していても、進むべき道が違う森林局長官
ギフォード・ピンショーとの対立は結構あっさり書かれているけど、
相当辛かったと思うんですよね。

私はピンショーの本も読んだことがあるんですが、この人は非常に
厳しい人だったらしいんです。
だけど自らにアメリカの国有林を守っていこうという使命を持っている彼にとって
政治の世界でジョンと対立するのは宿命だったのかもしれない。
この自伝ではピンショーはそこまで尊敬される人のように描かれてはいないですが。
国立公園をつくった男と国有林をつくった男の対立!

政治の話のあたりはずいぶん漠然としているなあ、と思ったのですが、
聖者の話としてはこうなるのかも。
ミューアにとって一番厳しい時期だからかなり興味あるんですけどね。
自然保護から遠ざかっていた時期や、
「下界」からやっとヨセミテにもどってきたたら、どうもよそよそしくなった・・・
とか、彼の変化も見もの。

ジョンを支えたのは大統領すら含まれます。
大統領と野宿するってのは・・・
こういう時代があったってのは幸せだったのかもしれないが、
自然を守ろうという人々は大変だったでしょう。
今の自然保護の原点がここにあります。


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