アトケロ戦闘記~皮膚筋炎やらなんやら~

見た目は元気、中身は・・・。
毎日、のんびり、戦います。

さぶ

2019-02-09 | 読書
先日の通院の際の「お供」。
面白くてのめり込んで読んでいたら、診察に呼ばれてビックリ。
そんなわけでほんとは結構待ってたんだけどあんまり苦にならなかった。
というわけで、読書感想文です。m(__)m



「働く」ということは何なのか、40を過ぎた今でも、いや、今でこそなのか、考えさせられることは多いです。
単純に考えれば、生活をしていくために仕事が必要なだけなのだけれども、それだけではない何かも、なくはないのだろうと思います。
長々と入院生活を送ることがたびたびあって、働くこともできないでいたときなどは、どんな仕事をしているひとでも輝いて見えました。
その輝きはきっと”それだけではない何か”、だったんだろうと思います。

さて、今回読んだ、山本周五郎「さぶ」
表具店で職人を目指して働くさぶと栄二の物語。
栄二は盗みの濡れ衣を着せされたことで人間不信に陥りますが、流れ着いた人足寄場で人と人とのつながりと絆を思い知り、さぶとの友情に支えられ、人として成長していきます。
自分を貶めた人々への復讐心の塊だった栄二が、数々の出来事を経て、自分の身に起こった不運さえも自分にとって「よかったこと」ととらえるようになる変化はどんな人の心にも刺さるのではないでしょうか。
自分の身に起こる(かもしれない)不幸や不運を私たちはどんなふうにして乗り越えていけばいいのか。
その在り方を示してくれているようにも思えました。

物語の主人公はさぶではなく栄二です。
この物語に「さぶ」というタイトルを付けた作者の真意はどこにあるのか。
物語を読みながら、ずっと考えていました。

さぶは栄二とは違って、男前でもなく、愚図でドジで仕事も栄二のようにはできません。
しかし、さぶの作る表具に必要な”のり”は天下一品で、栄二の職人としての仕事もさぶの”のり”に支えられて成り立つのだと語られます。
人としても真逆のように見える二人ですが、お互いがお互いを必要とし、支え支えられながら苦境を乗り越えようとしていく姿や、栄二を描きながらもさぶの生き様を描き、栄二の中にさぶの生き方を投影しながら栄二の人としての成長が描が描かれているところは、誰一人として自分本位では生きていけないという作者のメッセージがあったのではないかと感じました。

生きる、ということを見つめなおさせてくれる、温かい小説だったと思います。
最近、『山本周五郎』にはまっているのですが、これもよかった。
まだまだはまりそうです。

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