※前回の山口の記事はこちら(20節・大宮戦、0-1)
※前回の磐田の記事はこちら(19節・千葉戦、1-0)
今季の山口のリーグ初勝利の相手が、目下首位に立っている磐田。
折り返しの最初の試合で再び相まみえる事となり、当時(5節)とは見違えるほどのチーム状態となっている磐田相手に、山口はどんな結果を残す事が出来るかという要素が注目された一戦。
開幕当初は4バック(4-4-2)に始まり、3バックへの移行(3-4-1-2)で一時的に結果を出すも再び停滞、現在は7戦未勝利(3敗4分)という成績の山口。
この日のフォーメーションは3-4-2-1と、流れ着く所に流れ着いたような感じでしょうか。
渡邉晋監督が仙台時代(5年半)に使用した基本フォーメーション(3-4-1-2はオプションといった感じでしょうが)を、1年で全て使う事となっている今季。
試合前の渡邉監督のインタビューから、磐田に対する分析は盤石であるような様相が伺えましたが、その通りに立ち上がりは山口の前線の守備がハマり。
磐田に攻撃の形を作らせずに、自身は様々な手で好機を演出していきます。
前半8分には渡部の縦パスからという、最後方からのパスワークによる攻撃を経て、池上が磐田・山本義道に倒され反則。
得た直接フリーキック、中央やや手前からの位置でキッカー池上が直接狙い、壁に当たって外れて左コーナーキックに。
池上ニアにクロス→島屋フリックでゴールへ向かったボールに、渡部が頭から跳び込むもGK三浦に抑えられ合わず。
直後の11分には、プレスが嵌って右サイドで田中がボールを奪い、島屋のエリア内進入を経て高井がシュートするも、ブロックされ右CKに。
今度はショートコーナーを選んだのち、石川がミドルシュートを狙うも枠外に。
そして直後の12分、中盤で池上のボールカットから、左サイドで高井がドリブルでエリア内左へ進入。
高井は浮き球でマイナスのクロスという選択を採ると、ニアサイドで島屋がヘディングシュート。
ゴール右へとねじ入れ、先制点は山口のものとなりました。
一方の磐田、この日が海外移籍を果たした伊藤が離脱しての最初の試合という事もあり、ピースが抜けた状態を強いられていたでしょうか。
伊藤は左センターバックの位置から、サイドバックのように前線へと顔を出す攻撃参加が特徴的だった選手。
この日は山本義がその穴に入っていたものの、選手の特性によるズレは隠せないというような状態でした。
それでも以降は、持ち味の流動的なパスワークを展開して反撃体制を取る磐田。
20分には遠藤の裏へのミドルパスで左サイドを突き、松本が奥に進入して左CKをゲット。
そこからクロスが跳ね返されたのち、鈴木雄斗が右サイドからカットインしてミドルシュートを放ち、山口・神垣のブロックで再度CKに。
今度は右CKで、キッカー遠藤のニアサイドのクロスに山本義が合わせ、ヘディングシュートをネットに突き刺し。
直後に飲水タイムに突入と、第1クォーターのうちに同点に追い付いた磐田。
ブレイク明けは一転し、磐田が攻撃権を支配するという順位通りのゲーム展開となり。
両サイドをくまなく使い攻撃していきますが、その中で左サイドは、やはり伊藤不在でこれまでと違った形を余儀なくされており。
ボランチの片割れが左サイドに流れたり、シャドーの大津が降りて来るなどして、松本に高い位置を取らせるべくの形をとっての攻撃。
対策はとったものの不安は拭えずにいたのか、この時間帯の磐田はボール支配こそすれど、シュートには結び付けられませんでした。
その後は山口が攻撃を試みるも、高井が2度オフサイドを取られるなど不発。
しかし40分を過ぎた辺りから、一変して山本義が高い位置を取り始める磐田。
このタイミングでいくという指示を受けていたのか、あるいは得点を取った事で齎された前向き思考が、この段階で発揮されたのか。
43分には左サイドで松本がエリア内にスルーパス、走り込んだ山本義がクロスを上げるというシーンも作られ。(クロスは精度を欠く)
そしてアディショナルタイムに突入し、磐田は左サイドでのパスワークから、戻されたのち中央CBの大井が前進しての攻撃。
彼のパスはカットされるも、拾った遠藤の縦パスが山田大記に入り、ペナルティアークからシュートを放った山田大。(GK関キャッチ)
最後にフィニッシュに持ち込んだ磐田、好循環を得て前半を終了します。
後半開始、の前に磐田は中川→小川大貴へと交代。
そして鈴木雄が右ウイングバック→右CBへとシフトと、左だけでなく右サイドも、CBに高い位置を取らせる体制を採って来たでしょうか。
一進一退の入りを経て、後半もペースを握る磐田。
後半9分には最終ラインの大井がスルーパスを送ると、山田大が抜け出してエリア内左でのGKと一対一を作り出し。
しかしGK関のコースを切っての構えに対し、手前でのシュートを選択したのが仇となり(ドリブルが正解だったかな……)、シュートはゴール左へと外れてしまいました。
危うく失点というシーンを作られた山口。
しかし前回観た大宮戦と違い、攻撃では後半も流動性を維持して攻め上がります。
右CBの楠本が前に出て攻撃に絡むという、磐田に劣らない可変を基本形とし。
中央の田中・神垣・池上も絶えずパスコースを作るように動き回り、従来とは違い非常に摑まり辛い攻撃を敢行出来ていたこの日の山口。
チームの力関係や相性を超越した、長所同士の波長が合ったような様相が出来上がったのでしょうか。
14分、最終ラインでの繋ぎから渡部の縦パスが高井に入り、島屋とのパス交換で前進。
島屋のエリア内へのスルーパスはカットされるも、こぼれ球を楠本が拾ってミドルシュート(枠外)と、分厚い攻撃を見せ付けます。
一方の磐田、パスを繋ぐもののどん詰まりとなり戻して作り直すか、ルキアンを狙ってロングパスを入れるも対応されるかというこの時間帯。
山口も攻撃機会自体は少なく、一種の膠着状態となりつつ22分に飲水タイムに。
ブレイク明けの25分、右サイドのスローインからパスワークを展開する山口。
そして池上のスルーパスが奥に供給され、そこに川井が走り込むも磐田・山本義のチャージを受けて倒れ繋がらず、反則の笛も吹かれず。
これで判定を巡っての暗雲が漂ってしまったか、その後に山口エリア内でこぼれ球を山口・池上がトラップした際、腕に当たったと見て一斉にハンドのアピールを行う磐田サイド。
しかし笛は吹かれずとなり、モヤモヤ感を残したまま双方選手交代。(その間にも抗議していた磐田・大井に警告)
山口は石川・神垣→橋本・佐藤健太郎、磐田は大津→小川航基へと交代しました。
前年も特別指定で在籍していた橋本、今季も同様に特別指定の立場でありこれが3試合目。
31分には中央でパスを受けると、そのままドリブルでエリア内を急襲(ディフェンスに入られ、その後クロスに切り替える)と、活きの良い所を見せます。
そんな橋本の存在が、パスワークよりも速攻・素早い切り替えへと両サイドにシフトさせたでしょうか。
34分には磐田が、山口のCKからのカウンターでルキアンがドリブルで持ち込むも、山口ディフェンスの素早い戻りでフィニッシュまでは行けず。
その直後の35分、右サイドで楠本→田中→池上と繋いで前進、そして池上のスルーパスで川井が抜け出す好機。
エリア内右へと持ち込み、豪快に放たれた川井のシュートがゴール右上へと突き刺さり。
展開が激しく移り変わる中で、その流れに乗っかっての勝ち越し点を挙げた山口。
直後に2枚替えを敢行。(高井・島屋→草野・河野)
窮地に追い込まれた磐田、39分にこちらも2枚替え。
ルキアンと山田大に代え、ファビアン・ゴンザレスと大森を投入。
途中加入のゴンザレスと、守備の安定化が図られた中サブに転落していた大森に状況打開を託します。
するとその最初の攻撃でした。
大井のロングパスをゴンザレスが中盤で収め、左サイドで大森が絡みつつ前進し、松本が奥へ進入する磐田の攻撃。
そしてエリア内左からマイナスのクロスが入ると、山口・田中が足を伸ばすもクリアしきれず、こぼれた所をゴンザレスがシュート。
ゴールネットを揺らし、まさに救世主といった働きで同点弾を齎したゴンザレス。
逆転を狙いにいく磐田、直後の41分にも大森がボールを持ち左サイドへ流れ、そこでパスワークののち中央の山本康裕へ。
そして山本康はアウトサイドでのスルーパスをエリア内へと送り、大森が走り込むも山口・楠本に対応されて受けられず。
ゴンザレスが結果を出した事で、自身もジョーカーとしての期待に応えんと張り切る大森。
追い付かれた側が辛くなりそうな展開ですが、42分の山口の攻撃。
ゴールキックを短く繋ぎ、左サイドでヘナンのロングパスに草野が走り込むと、飛び出してクリアしにいったGK三浦をワントラップでかわす絶好機に。
そして奥でエリア内へと切り込むも、磐田・大井の捨て身の対応でシュートまでいけず。
惜しくも得点出来なかったものの、再び山口に機運を齎すには十分の攻撃。
その後も磐田の攻勢の前に、川井が大森のドリブルを後ろから止めて反則・警告を受けるなど凌ぎを強いられる山口。(45分に田中→浮田に交代、3-3-2-2にシフトか)
それでもATに突入して最後に流れを掴み、佐藤健の縦パスから河野→浮田と渡り、中央から浮田がシュートするもブロックされゴール左へと外れ。
その後も橋本が左からカットインし、エリア内へのスルーパスが草野に渡るもオフサイドと、惜しいシーンを量産するも時間が足りず。
結局2-2で引き分けとなり、磐田にとっては山口相手に負け越す(1敗1分)という屈辱的な結果に。
1戦目の勝利が決してフロックで無い事を証明するに至った山口、未勝利は8戦連続となったものの、浮上の切欠と出来るか。
この日のような流動性溢れる攻撃が、以降も貫けられれば……といった所でしょうか。