※前回の琉球の記事はこちら(18節・北九州戦、3-0)
※前回の相模原の記事はこちら(18節・水戸戦、0-2)
順位的には、上位争いを繰り広げている琉球と、依然として最下層からの浮上の兆しが見えない相模原。
前半に当たった際は1-5で琉球の大勝(11節)であり、またJ3時代の2018年も、2戦いずれも5得点で勝利を挙げており。
実力的にも相性的にも琉球有利という立場で、琉球にとっては取りこぼしが許されない試合という戦前の評価だと思われましたが、いざ試合開始となるとそこには違った絵図が描かれる事となりました。
雨中の試合、相模原が琉球のクリアミスもあり好機を演出する入りとなり。
前半5分には藤本の自陣右サイドでのボールキープから中央へ渡ると、白井縦パス→中山受けてドリブルと素早く相手陣内に。
そしてエリア手前まで進みシュートを放った中山(ブロックに当たりGK猪瀬セーブ)、相模原が先にファーストシュートに辿り着きました。
その後8分に琉球が、右サイドで李栄直(リヨンジ)の裏へのミドルパスから、走り込んだ上原牧人がマイナスのクロス。
これを阿部が合わせシュート(ブロック)と琉球もファーストシュートを放ち。
以降手数が豊富な琉球のペースになるかと思われましたが、その後も相模原が好機を作っていく展開に。
10分にはゴールキックから、ロングフィードを夛田がフリックで落とし、拾った安藤がミドルシュート。(枠外)
13分は自陣中央での川上のパスカットから、藤本の左への浮き球パスを受けた中山が先程と同様にドリブルからシュート。(DFに当たりサイドネット)
意外にも押し気味に展開する相模原の立ち上がり。
高木琢也監督就任(17節)以降、ビルドアップにも拘る姿勢をある程度取っているらしく、その通りに最終ラインはミシャ式のような形で組み立て。
ドイスボランチ(稲本・川上)の片方がディフェンスラインに降りて、ショートパスを繋ぎながら前進するスタイルを取り入れ。
ただし上がるのは左センターバックの川崎が主と、片側のみを上げるというリスク管理も行いつつ。
堅守速攻が基本ながら、自陣に釘づけにされがちだった以前の戦いとは一変した相模原のサッカーがそこにはありました。
それでも15分過ぎから、そんな相模原のギャップにも慣れ始めた琉球が攻勢。
18分には風間宏矢から縦パスが入り、阿部フリック→清水ポストプレイという流れから、阿部がペナルティアークからシュートするもGK竹重がキャッチ。
24分には最終ラインから右へ展開し、上原牧のスルーパスに清水が走り込み、エリア内右からシュートするも相模原・白井が足を伸ばしてブロック。
徐々に惜しいシーンを作り始めた琉球。
26分に飲水タイムが挟まれ、最初に好機を得たのは相模原で右CK。(30分)
ここでキッカー川上は変化を付けてグラウンダーで中に入れ、稲本ポストプレイ→中山→藤本とダイレクトで繋ぎ、藤本がクロス気味のシュート。(枠外)
一本変化を付け、琉球ディフェンスに脅しを掛けます。
それでも以降は琉球がボールを握り攻撃を仕掛け。
相模原は5-4-1の守備ブロックで応戦し、押し込まれがちながらも一歩も退かない姿勢を見せた事で、試合は膠着状態に入ります。
琉球はメンバー的には、両サイドバックが苦しい状態だったこの日。
田中の故障で前節から上原牧が入った右サイドだけでなく、左はこの日が初スタメンとなった山下が沼田に代わって入り。
SBを高い位置に上げての組み立ては変わらずも、果敢にチャンスエリアに進入し、隙あらば得点するというSBの動きは影を潜めていました。
琉球は押し込み続けるも、シュートは45分の、クリアボールを清武が放ったミドルシュート(枠外)ぐらいとなり。
数少ないチャンスを活かしたい相模原は44分、中盤で稲本のドリブルから右サイドへスルーパスが供給され、走り込んだ夛田からクロス。
そしてファーサイドで中山が足から跳び込むも、競り合いの中で琉球・李を倒してしまい反則。(シュートは撃てず)
その姿勢を見せたものの、こちらもフィニッシュシーンは作れず。
スコアレスで前半を折り返す事となりました。
3日前に天皇杯3回戦(浦和戦・0-1)を戦った相模原、ここからのベンチワークも注目の要素。
白井・川崎・川上が3日前から続けてスタメンを張っていましたが、ハーフタイムではその3人では無く、出番の無かった稲本を交代させる手を取ります。(梅鉢に交代)
大ベテラン故90分持たない稲本を、天皇杯でスタメンだった梅鉢を温存するために起用していた、という采配だったでしょうか。
その後半立ち上がり、相模原はサイドチェンジを絡めたパスワークで、前半は今一つだった左サイドから攻撃を展開。
殆どボールタッチが無かった兒玉も、前線で攻撃に絡むシーンが目立ち始め。
意外にも押され気味となる琉球は後半3分、ボールと無関係な所で李が兒玉を倒してしまい(というより投げ飛ばすような恰好)反則。
李は前半終了間際の倒されたシーンも影響したのか、後半はフラストレーションが溜まっていたかのようなプレーが目立つ事となりました。
このフリーキックから、相模原は安藤がエリア内でボレーシュートを放ちましたが枠を捉えられず。
以降もボールを握るシーンを多く作る相模原、途中出場の梅鉢が左SBの位置に降りてビルドアップを行うなど、新たな引き出しも散見されました。
嫌な雰囲気が流れつつあり、それを一変したい琉球。
7分に中盤で反則を受けると、清武は素早いリスタートで右サイド奥へロングパス。
上原牧が受けてからパスワークを展開し、風間宏矢の清武とのワンツーで中央に移ったのち清水がシュート。
ブロックされてCKとなり、ここから3本CKが続く攻勢も、上里のミドルシュートがミートせずとなるなどモノに出来ず。
その後も相模原は、敵陣でのボール奪取から好機を作りかけるなど良い流れをキープ。
そんな中で18~19分に双方選手交代が行われ。
相模原は中山・安藤→清原・ユーリ、琉球は山下・阿部→上原慎也・中川。
相模原はボールの収め所として絶対的な存在であるユーリが入り、琉球は前節に移籍後初ゴールを挙げた中川を投入と、勝負手が交錯するかのような交代となりました。
しかし以降も相模原が好機を展開し、迎えた21分。
左サイドのスローインを収めたユーリが、キープする最中に琉球・李に腕で倒されて反則。
李の度重なる反則についに警告が出されたうえ、エリアから直ぐ近くでのFKという相模原の好機となります。
左サイド奥・エリアから脇という位置から、キッカー川上はバックパスを選択すると、受けた藤本はダイレクトでシュートを狙い。
これが地を這うボールで、狙いすましたかのようにゴール左隅へと突き刺さりゴール。
前半からの伏線(変化を付けたセットプレー・反則を巡る李の心境)を全て回収する、相模原の先制点となりました。
上位らしいゲームを描くどころか、とうとうリードを奪われる事となった琉球。
24分CKからの二次攻撃で、ロングパスを上原慎が落とし、繋いだ所を李がミドルシュート。
相模原・川崎のブロックで方向が変わり、ゴールバーを掠める惜しいシュートとなり。
血の気溢れる李の気持ちを、今度は得点に繋げようという琉球の姿勢が表れたでしょうか。
それでも25分に挟まれた飲水タイムが、文字通り水を差してしまったか。
以降は相模原の守備ブロックを崩せぬまま、時間を浪費していく展開を強いられてしまいます。
32分に清武・富所→ハモン・風間宏希へと2枚替え(風間宏矢が右サイドハーフ→左SHへシフト)を敢行するも、流れを変える事は出来ず。
相模原は以前のような、自陣に押し込まれての守勢を強いられるものの、リードを奪ってのそれは勝利へ向けての進軍でもあり。
整然とした守備ブロックで琉球にシュートシーンを作らせず、時計の針を進めていき。
そしてボールを収めてくれるユーリの存在で、ロングボール一本でキープして落ち着けるのも大きかった。
38分にはユーリが右サイドでボールを収めると、奪い返さんとした琉球・上里が掴んで引っ張ってしまい、反則・警告を受ける事に。
上里はその後も相模原・夛田をラフプレーで倒してしまう(40分)など、李が憑依したかのようなプレーを見せてしまいました。
成す術が無くなりつつあった琉球、43分に最後の選手交代。
上里→福井へと交代し、上原慎を1トップに据えた4-1-4-1のようなフォーメーションにシフト。(福井が左SBに入る)
半ばパワープレイのような恰好で、相模原陣内へと襲い掛かり。
しかしフィニッシュシーンはアディショナルタイム、風間宏希のロングボールを上原慎がエリア内へと落とし、そこに李が走り込んでシュートした場面のみ。
ここも相模原は川崎の身体を張ったブロックで凌ぐと、終了間際には敵陣深めでボールキープするという至福の時間へ。
左コーナーでユーリのフィジカルを存分に活かしてキープに勤しむ相模原。
その最中に李が再度、腕で(ユーリを)倒してしまい反則と、2枚目を受けてしまいかねないシーンも生まれてしまい。
最後まで脱出させないまま試合終了の笛が鳴り響き、相模原がウノゼロで逃げ切りに成功しました。
これで12試合ぶりの勝利となる3勝目を挙げた相模原。
監督交代後も順位が上がらぬ日々を過ごしつつも、高木監督によるチーム整備は着実に成果を上げていたようで。
特に先制点を奪って以降、安心して観ていられたのは大きかった。
いかにリードを守り切る体勢といえど、相手にシュートを浴び続けるような展開を強いられると「逃げ切れるのか……」という疑心暗鬼が生まれてしまいがちですが、この日はそれをさせず。
かくして上位相手にもそんな戦いを繰り広げられたという、1勝以上の価値が得られたと思われるこの日、奇跡の逆転残留に向けてスタートを切れたでしょうか。