母の夢を見た。何処かへ出かけるところだろうか、着物の帯を
締めていた。僕は縁側のカーテンを閉め、窓の鍵を確認しながら、
母の着替えを待っていた。
のんびりした日差しがカーテンの隙間に揺れた。
蝉時雨がひときわ庭にさんざめいた。
先日帰郷の折、高校の恩師と友人たちが僕を囲む会を開いてくれた。
僕の作品が高名な監督で映画化されることになり、
その監督と並んで記者会見したりして、地元のテレビや新聞が
騒いでくれたのだ。
その時、母の墓参りもしなかった後ろめたさが見せた夢かもしれない。
などと、しおらしく思ったりしてみた。白々とした追憶に、痛めた頚椎が
疼いた。母の死期は予測されていた。なのに、僕は公演を打っていて、
臨終にも立ち会わなかった。心の底に重く沈んだ後悔のおもいを、
これから幾つ増やすのだろう。十五の春に旅に出て、
立ち寄りはするが帰れぬ故郷。終の棲家も見つからない旅は、今日も続く。
西瓜とマンゴー、どっちがバナナ?高沢は元気だろうか・・・。
締めていた。僕は縁側のカーテンを閉め、窓の鍵を確認しながら、
母の着替えを待っていた。
のんびりした日差しがカーテンの隙間に揺れた。
蝉時雨がひときわ庭にさんざめいた。
先日帰郷の折、高校の恩師と友人たちが僕を囲む会を開いてくれた。
僕の作品が高名な監督で映画化されることになり、
その監督と並んで記者会見したりして、地元のテレビや新聞が
騒いでくれたのだ。
その時、母の墓参りもしなかった後ろめたさが見せた夢かもしれない。
などと、しおらしく思ったりしてみた。白々とした追憶に、痛めた頚椎が
疼いた。母の死期は予測されていた。なのに、僕は公演を打っていて、
臨終にも立ち会わなかった。心の底に重く沈んだ後悔のおもいを、
これから幾つ増やすのだろう。十五の春に旅に出て、
立ち寄りはするが帰れぬ故郷。終の棲家も見つからない旅は、今日も続く。
西瓜とマンゴー、どっちがバナナ?高沢は元気だろうか・・・。