浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

欧米に広がるイスラエルに対する批判

2006年07月30日 | Weblog
 イスラエルが国連側からの「人道支援活動のための72時間の停戦を」との呼びかけに対して、「現在も人道支援に対しては協力している」として拒絶する姿勢を見せている。

 これは、レバノン、イスラエル、パレスチナを6日間にわたって視察したエグランド事務次長(人道問題担当)が呼びかけたものだが、イスラエルは予想以上のヒズボッラー側からの抵抗に余裕を失っているのだろう。全く聞く耳を持っていない。

 イスラエルは29日も攻撃の手を緩めず、レバノン各地に爆弾を落とし続けている。29日には、レバノン南部の主要都市ティールの近くの幹線道路上で、一家5人の乗る車が爆撃されているのが発見され、夫婦と子供3人と思われる民間人の遺体が確認された。またその近くで、3人の市民が被弾して命を落としているのが発見された。レバノン側の死者は、確認されただけでも438人を数え、保健省の推測では、600人を超える犠牲があるのではないかとのことだ。

 もちろんヒズボッラー側からのイスラエルへの攻撃も続いており、29日には90発以上のロケット砲がイスラエルに着弾している。また、これまで見られなかった、100キロ爆弾を積んだ飛行距離の長いロケット砲が撃ち込まれたとの発表もあった。

 国際的な仲介の動きだが、米英首脳が国連平和維持軍の派遣を提案している。米国を訪問中の英国のブレア首相とブッシュ大統領は会談後、記者会見の席でそう提案している。

 これまで何度も言っていることだが、国連軍の派遣は、余程の機能を有するものでない限りは失敗に終わることだろう。ヒズボッラーは、この提案に対しては、米英が国連を使って、南レバノンにおけるヒズボッラーの影響力や軍事力をそごうとしているとして受け容れることはないはずだ。28日、レバノンの国会議長のナビ・ベリ氏は、アラブ連盟に緊急会議を開くように要求したが、これまた開いても何も生み出さないことは明らか。国会議長といっても、ナビ・ベリ氏はヒズボッラーに近いアマルの創始者である。真剣にアラブ連盟にアピールしているとは思わないほうがいいだろう。

 ヨーロッパやアメリカでは、イスラエルに対する抗議の輪が広がり、今週末には大規模な抗議集会が予定されている。ただ、日本では同じような動きが生まれる気配はない。

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