浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

EU レバノン案を支持

2006年07月30日 | Weblog
 米英主導の国連平和維持軍派遣案が注目を集める一方、中東歴訪中のEU(欧州連合)代表団が、シニョーラ・レバノン首相が表明した停戦案を支持した。

 シニョーラ案は、即時停戦、捕虜交換、イスラエル軍撤退の三本柱からなっており、米英案とは大きな違いが見られる。捕虜交換は、ヒズボッラーが拉致したイスラエル兵2人と、イスラエルに拘束されているレバノン人の交換を指すが、ヒズボッラーが当初から要求していることであり、これが認められれば、ヒズボッラー側から停戦を引き出すことは可能であろう。だが、イスラエル政府が現況でこれを呑むとは思いにくい。

 イスラエルのアラブ側との捕虜交換はこれまでにも何度か行なわれており(日本赤軍の岡本公三もその一人)、全く可能性は無いわけではないが、兵士の奪還がレバノン侵略の口実でもあり、ヒズボッラーの戦闘能力をもう少し潰すまでは乗ってこないような気がする。

 即時停戦やレバノンからの撤退は、捕虜交換が上手くまとまれば話がとんとん拍子に進むものと思われる。

 ライス国務長官が中東に戻って再び調整に入るが、余程のサプライズがない限りは、戦闘は継続され、無辜の市民達の死体が累々と積み上げられていくであろう。

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