浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

ガザ炎上

2008年03月03日 | Weblog
 ガザ地区で27日からイスラエル軍とハマースの間で戦闘が続いている。

 1日にはイスラエルの空爆と地上軍の攻撃で、パレスチナ側に61人の死者が出たが、翌2日になっても戦闘は続き、パレスチナ人10名が死亡した。これで、27日からの戦闘による死者は、双方合わせて107人となった。ただ、「双方」と言っても、イスラエル側の死者は2人の兵士に止まる。

 今回の戦闘のきっかけは、ハマース側のイスラエルへのロケット攻撃だと言われている。イスラエルは通常、報復攻撃は自軍に被害を最小限にとどめるために空爆を主体とするが、今回は空陸両面作戦を展開している。

 イスラエル軍の地上部隊は、ハマース武装勢力と戦火を交えながら、ロケットの発射基地の捜索に当たっているが、発射装置の多くはトラックの荷台に設(しつら)えられており、難航を極めているのが実情だ。

 死者の多くは空爆によるものだ。イスラエル政府は、爆撃の精度を強調するが、死者の半数以上が民間人である事実から実態は容易に窺い知れる。国連やEUだけでなく、イスラエルの最大の支援者であるブッシュ政権までもがイスラエルに自重するように求めていることからも想像がつく。

 ガザに侵略したイスラエル地上軍とハマース武装勢力の間での戦闘は今のところ、全面戦争にまで至っていないが、今後の状況次第では戦線の拡大が懸念される。

 ハマースのロケット攻撃を責める向きもあるが、「窮鼠猫を噛む」の例えにも見られるように、ガザ地区全体を「世界最大の牢獄」にして兵糧攻めにしてきた結果がこの事態を招いたことに疑いはない。このような人権を無視した政策を続ける限り、平和への糸口はつかめないだろう。

 ライス国務長官が今週、現地入りする予定であったが、この状態で乗り込むかは微妙な状態になってきた。

最新の画像もっと見る