浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

イスラエル軍の攻撃激化

2006年04月09日 | Weblog
 ハマース政権が誕生して10日。本来なら新しい政権の下、国家が新しい道に向けて歩み始めるものですが、欧米から「兵糧攻め」に遭い、パレスチナ全土から悲鳴が上がっています。私の情報提供者たちも、これまでの給与の遅配どころか、支給の目途さえ立たない状況だと訴えてきています。
 
 そんな中、イスラエル・パレスチナ双方による攻撃が激化しています。パレスチナの武装組織は自爆攻撃はかけないものの、ロケット攻撃をイスラエル国内に行なっています。ロケット攻撃と言っても、それは町工場で作られた男性の肘から指先くらいの長さのもので、射程距離も短く精度も悪くてほとんどが標的を大きく外しています。それに対して、イスラエルは戦闘機からミサイル攻撃で報復します。

 今回も、一発のロケット砲攻撃が口火を切りました。イスラエル軍は7日、政治組織ファタハの軍事部門がガザからイスラエルにカチューシャロケットを放ったと発表、ただちに“報復”に移りました。参考のために言っておきますが、カチューシャロケット砲というのは写真のもので、このようなものを武装組織が使っているわけではありません。

 イスラエル軍は、昨日お伝えしたように7日、戦闘機からのミサイル攻撃で5歳の子供を含む6人を殺害、その後8日に2人を同様の攻撃で仕留め、さらに昨夜になって6人を殺しました。それら3件の攻撃は全てガザで行われましたが、西岸地区でも占領軍と住民の間で小競り合いや銃撃戦が行われ、ナブロスで1人死亡したと伝えられています。

 また、ナブロスの難民キャンプでは、「人間の盾」として活動する欧米のヴォランティアたちが、イスラエル軍が11人の子供たちを7日早朝から幽閉していると訴えています。今のところ、これについてイスラエル軍からの発表は何もありません。ヴォランテァたちが送ってくる情報を読む限りでは、子供たちの命に危険はないようですが、もしこれが本当だとすれば許されるものではありません。この種の行為は、兵士達の“暇つぶし”で行われることが多く、これまでにも何度かありました。だからでしょうか、今のところパレスチナのメディアはこの情報に関心を示していません。

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2 コメント

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イスラエル軍の攻撃激化 (一般庶民)
2006-04-13 06:10:16
ロケット弾がいくら町工場で作った精度が悪いものだとしても、武器に違いはありません。打ち込む側は目的意識をもってやっているんですから、その行為を軽視すべきではないと思います。(テポドンが日本海を越えてまた飛んできたら、性能が悪いロケットだからと無視できます?その性能の悪いロケットの弾頭に核物質や生物兵器が入ってたら?)

しかもイスラエル側から必ず報復されることを百も承知でやっているんですから、それこそ自業自得。「自己責任」の範疇じゃないですか。



http://www.honestreporting.com/articles/45884734/critiques/-Homemade-_Rockets$.asp



パレスチナでは確かに子供が犠牲になるケースが多いです。私も子供を巻き添えにすることには(子供だけではなく民間人一般もですが)反対です。でもよくよく調べてみると、パレスチナ人は「女性・子供をダシに使う」ケースが多いのも事実じゃないですか。国際的に同情を買うために。
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Unknown (同じく一般庶民より)
2006-04-19 06:40:40
自業自得とはどういう言い草でしょうか。



そもそもイスラエルとパレスチナでは全てが非対称であり、蟻と象ほどの差が有ります。占領を行っているのはイスラエルであり、占領に対峙しているのはパレスチナ人である事実はイスラエルがガザから撤退しようとガザ以外の占領区が返還されないのでは西岸自治区とガザはまさに陸の孤島になってしまい、そもそも国連のイスラエルの占領地からの撤退決議は当時、アメリカでさえ賛成し、採択されたにもかかわらずイスラエルは全く無視し、次々にパレスチナ人の土地や家を接収しユダヤ人入植地を強大な武力で広げ、抵抗するパレスチナ人を容赦なく殺したり、収容したことが積もり積もってこのような呵責の無いテロに転化したことを省みず、武器の優劣や北朝鮮の事例を持ち出すことが何の意味があるのでしょうか?



テロを非難するな、といっているわけではありませんし、パレスチナ側の対イスラエル戦略に犠牲をダシにイスラエルの非道をアッピールさせるという度し難い戦術があることも聞いてはいます。それは非難、批判されなければなりませんが、多くはあまりに非対称な物量、力の差ゆえの無力感が噴出した自爆攻撃やロケット弾攻撃であることも事実ではあるのです。



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