浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

「カナの悲劇」の再現

2006年07月31日 | Weblog
 28日付で書いた「“誤爆”の責任者」で紹介した、「カナの悲劇」の再現が30日に起きてしまった。

 イスラエル軍は30日早朝、レバノン南部のカナを爆撃、多くの犠牲者を出した。これまでに分かっているだけでも、54人が死亡、その内37人が子供だということだ。

 確かにカナはイスラーム教シーア派教徒が多く住むところだ。それは当然だ。この村はシーア派の聖地なのだから。そして、ヒズボッラーの戦闘員が潜んでいるところだ。それもまた当然だ。彼らは「人民の海」を泳いでいるのだから。

 そんなことは昔から分かっていること。だからそんなことを今さら多くの子供たちを殺してしまった言い訳にすること自体間違っている。

 10年前、イスラエルは国連施設に逃げ込んだ住民や殉教者に向けて砲撃して100人もの命を奪った。そして、今回もいたいけな子供たちの将来を、夢を奪った。こんな残虐行為をしながら、この期に及んでもイスラエルはヒズボッラーから撃ち込まれた砲弾で犠牲になった自国の子供たちの悲劇を世界にアピールしている。

 世界は忘れてはならない。この問題を最初に作ったのは、1982年にレバノンを軍事占領したイスラエルなのだということを。その軍事占領に対しての謝罪も補償もせずして、自分達の被害ばかりをアピールするイスラエルに私は心を寄せることはできない。

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