浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

死者の数

2006年07月31日 | Weblog
 30日にイスラエルがレバノンで行なった愚挙が原因で全世界からブーイングを喰らっている。既報の、54人の命を奪ったカナへの空爆に対する怒りだ。それを受けてイスラエルは31日、48時間の空爆中止を発表した。

 今回、世界中が怒りの声を上げたわけは、犠牲者の内37人もが子供であったからだろう。さもなくば、世界中のマスコミが大々的に報道しなかっただろうし、読者や視聴者の心に届かなかったはずだ。

 だが、私はそこに疑問を感じる。確かに、子供は「社会の宝」だし、我々大人が守ってやらねばならない存在だ。しかし、命の重さに年齢の高低は関係ないはずだ。かく言う私も、この種の記事を書く時、子供の数をしばしば書き入れる。それは、加害者側が、攻撃理由に“テロリスト”の存在を挙げるからだ。つまり、子供の犠牲を書くことによって、攻撃の正当性を「根拠に乏しい理屈付け」としたい意図を働かせているのだ。それを、一部の人たちは、偏向報道と呼ぶかも知れぬが、私は客観性を欠く伝え方だとは思わない。

 死者の数だけで言えば、イラクではほぼ毎日、50人を超える市民が、戦闘の巻き添えになっている(3年前の開戦以来、イラク側の死者は約4万人)。パレスチナでも同様の惨劇が日常化している。「世界の目」、つまりは監視する目が鋭さを失くせば、侵略者はやりたい放題暴れまわるということだ。

最新の画像もっと見る