浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

ファタハ選挙

2005年11月29日 | Weblog
 パレスチナの与党であるアル・ファタハは先週末から今週にかけて、来年1月に予定されている自治評議会(国会に相当)選挙の候補者選びのための党内選挙を始めましたが、各所で混乱が起き、投票が中断されています。
 党執行部は、ガザ地区における一部過激派の投票所に対する襲撃や不正を理由に投票を終えた分の開票まで中断しています。ところが、私が得た情報ですと、状況がアッバース大統領にとって好ましくないためとするものが多くあります。
 その一例が、事実上の首都で、大統領府や立法・行政機関が集中するラマッラの開票結果です。この町の党員4万人の内、3万人がマルワン・バルグーティ氏に票を入れたため、その結果に驚いた執行部が選挙を中断させたと言われています。
 バルグーティ氏は、ファタハの幹部の中では断トツで若者に人気のある指導者です。3年前、数々の“テロ活動”を指揮したとしてイスラエルに拘束され、5つの終身刑を言い渡されて、今もイスラエルの刑務所に収監されたままです。故アラファト議長もその人気をねたみ、生前、バルグーティ氏には決して重要な役職を与えなかったと言われています。
 同氏は、昨年末、アラファト氏の後継者選びに一時は名乗りを上げましたが、その後二転三転、結局立候補を取り下げた経緯があります。今回も台風の目と言われ、開票結果と、それを受けてのアッバース大統領の動向が注目されていました。
 しかしながら、いつものことですが、民意不在を強く感じます。ガザ地区からイスラエル軍や入植者が撤退したとはいえ、西岸地区では相変わらず軍事占領は続いていますし、日常的に殺戮と破壊は行なわれています。また、5割近い失業率を抱え、市民生活は破綻しています。なのに、こんな醜い権力争いをしている指導者達に強い怒りを覚えます。




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