ありゃりゃサンポ

近現代の建築と一日八千歩の散歩の忘備録。美味しいご飯と音楽と。
東京都全域を徒歩で塗り潰す計画進行中。

多摩美術大学図書館 =伊東豊雄=

2024年03月21日 | 建築&土木見物



多摩美術大学図書館。2007年竣工。伊東豊雄。

変型の四角形の2面が緩やかな凹カーブを描いています。本当は4方とも曲線で仕上げたかったが予算の関係で2面に留まりました。
各面のアーチ型の窓が特徴的ですが、単なる窓の形としてのではなくこの建物の構造そのものが連続したアーチで成り立っています。
外壁の曲面と窓ガラスの曲面が完全に同一面であることも大きな特徴。窓ガラスは連続した直線ではなく壁と一体化するよう曲面ガラスで作られています。

中に入ると交差するアーチの連続が奥まで続いています。始めに芯となる鉄板を組み上げてその外側に型枠を張ってコンクリートを流し込んで成型しました。
丘陵地にある多摩美は敷地全体が1/20勾配のスロープになっています。傾斜地に建つ図書館は1階の床が地形と同じ傾斜で奥に向かって上り坂になっています。

床が傾斜した建築というのはかなり特殊です。このブログで登場した建物でも西沢立衛の軽井沢千住博美術館くらいしか思い出せません。
この写真で見ると床面に連続した表情が見えますが、傾斜した床をモルタルで仕上げる時に施した何らかの流れ止めを結果かも知れません。

1階はオープンスペースであるアーケードキャラリーと図書館エリアがガラスで仕切られています。一般人はギャラリー部のみ見学が許されています。
ガラスの向こうに見える事務エリアはさすがに床が水平なようでギャラリーより低い所に床が見えました。

黒い改札の向こうが図書館エリア。1階はラウンジや雑誌・映像閲覧ルーム。図書館本体は2階。図書館に来て本棚を見られないのは実に無念です。

空調システム。暖気や冷機はスラブと床の間の25cmの隙間を通って足元の小穴から静かに吹き出るようになっています。

お団子型の椅子はつい先日太田市美術館・図書館で見たものと同じです。流行ってるのかな。

設計の始まりは「あるボリュームから空間をえぐったドームの連続体のような空間」と設計家本人の解説に書かれていました。私には教会のヴォールトに見えます。

敷地の一番低いところにある正門を入ってすぐの「彫刻の森」の前に立つ図書館。向かいに見えるのは本部棟。敷地の1/20勾配がかなりのきつさであることが分かります。

コンクリートとガラスがこれほど一体化した面に見えるというのはすごいです。

窓ガラスに映り込む彫刻の森の木々と空。曲面ガラスといっても両端と中央部分の差は僅か4mmしかありません。それでも折れ曲がった平面ガラスとはまったく違います。

古い話ですが、東京オリンピックの時の国立競技場の設計案が隈研吾と伊東豊雄の2案に絞られた時、伊東豊雄案の方を押していました。
今、この図書館の前に立ってやっぱり伊東豊雄の国立競技場も見たかったとしみじみ思います。

Googleマップで見る図書館の形。

図書館断面図。1階アーケードギャラリーの床が傾斜しているのは前述の通りですがこれを見ると建物の天井が敷地の傾斜と逆方向に傾いています。(赤い水平線参照)
なぜわざわざ敷地の高い方の天井を下げているのか、これに関しては今のところどこにも記述が見つからず謎です。
この図をずっと見ていると建物の左右の外壁の線が右に傾斜しているように見えてきました。

でも垂直の補助線(青い線)を引いて見ると全然傾斜しておらず単なる目の錯覚のようです。
参考までに図の右端の壁面をコピーして一番左端に床の高さを揃えて置いて見ました。高さが25%くらい違うことが分かります。面白いですね。意味はわかんないけど。

余談ですが、かっこいい大学図書館というと、日本女子大武蔵野美術大学成蹊大学、そしてこの多摩美術大学が東京での四天王かと思います。
日本女子大、武蔵美の図書館は事前申し込みで見学は可能ですが内部撮影は不可、成蹊は非公開。1階だけでも写真を撮らせてくれた多摩美は実はけっこう優しい。
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