アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

旅立ちの春に

2024-03-12 | ・最新のお知らせ・イベントなど

 *2008年春に書いた旅雑文です。ちよっと長めです。おヒマな人はどぞ。期間限定公開中。

 もうすぐ卯月、野山は春のいぶきでいっぱいです。

咲きはじめた花を、芽吹きはじめた葉を、今日はやさしい雨が濡らしています。

湿った空気にほのかに混じるのは、春の甘い香り。

さえずり始めたばかりで、まだへたくそなウグイスの歌も、雨天中止に。

そして、春がくれば、僕の出稼ぎの冬も、もうすぐオワリ。あと数日後には、四万十に発てそうです。

 

 この冬の間の休日は、よく図書館に足をはこびました。借りた本の中に(好きな作家だ)

普段、ぼくがモヤモヤ思っていることを、スパっと書いてある箇所があった。

「うんうん、そういうコトかもなぁー」と何度も大きくうなずきながら読んだのは、こんな文章。

 

開高 健がいた。(平凡社)より抜粋 

~ほら吹き男爵よ悠々として急げ~ 夢枕 獏

 

旅の警告

 警句とは違うが僕はひとつ理論を持っている。旅の力学についての理論である。

この理論は主観的であるかもしれないが、原理であり、鉄の公理であるから、

ビッグバン以来、この宇宙消滅の時まで変わる事はない。

どのような理論か。

 

 その前に、筆者の個人的なことに触れたい。

筆者は20代初めの頃から、国内や世界のあちらこちらをうろつきまわってきた。

それは、信州の山だったり、高原であったり、あるいは北海道の雪原であったり、東北の森であったりした。

山小屋で働き、居候をし、釣りをし、放浪をした。

ヒマラヤの氷河の上を歩いたり、極北の荒野を流れる川をカヌーで下ったり、

玄奘三蔵という人物の足跡を追って砂漠の中を歩いたり、天山の氷河古道をうろついたり、

チベット奥地の聖山カイラスを訪ねたりした。そして、何度か死にそこなった。

それで、多少なりとも、わかった事がある。

-中略-

 そのわかったこととはなにか。

それは、「満たされている人間は旅には出ない」というものである。

これが、万物創成以来の、宇宙の不変原理なのである。

「幸福な人間は旅には出ない」 このように置き換えてもよい。

ちょっと待った。「獏ちゃん、そんなことはないよ。幸福な人間だって旅にはいくよ」

そう言われる方もおられるであろう。

ごもっとも。わかる。あなたの言われてること、よくわかります。

わかりますが、筆者はそういわれるあなたとお酒を飲みたくない。

「いや、なるほど。ワタクシもかねがねそう思ってました」

「なんと、これこそ宇宙の統一原理。ホーキングの人間原理もかくなるものでしょうか」

こういう方がたとこそ・・・・・

期間限定公開終了。続きは、カテゴリー「レター&旅雑文」でご覧になれます。


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