「ざぶりざぶりと春の瀬をゆくのだ」
『春は、地上の空気中にも、またモグラのまわりの土のなかにも動きだしていました。
そして、いまでは、暗くてみすぼらしいモグラの家のなかまではいりこんで、
なんともいえないそわそわした、じっとしていられない気もちで、
そこらじゅうをいっぱいにしてしまったのです。
とすれば、モグラが、きゅうに、はけを床の上に投げすてて、
「え、めんどくさい!」とか、「なんだこんなもの!」とか、
「春の大そうじなんてやめっちまえ!」などといいながら、
上着をひっかけもしないで、家からとびだしてしまったとしても、ふしぎはありません』
たのしい川べ:ケネス・グレーアム
寒くて長い冬の日のために、おひさまのひかりを集めるのに良い春が、四万十にもやってきました。
3月25日 最高気温14、4度。
川を大地を目覚めさせた、春のまぶしい光とあたたかな風は、
部屋の中も春でみたし「外に行こう!旅にでよう!」と誘ってきます。
そんな春のユーワクに「若き旅人君」は、ひょいと都会を抜け出し、ふらり四万十へ。
花冷えて風が冷たい春の朝、僕らはカヤックに乗り込み、リバーピクニックへ出かけました。
朝の最低気温は-1、3度、車のフロントガラスは凍りついてました。
陸上での講習の後、カヤックに乗り込んでスィーと水の上に滑りだす。
川を渡る西北西の風はピリッと冷たいけど、
空はスッキリと晴れているし、水量もまずまず。川下りには、なかなか良いコンデションです。
じっくりとトロ場で練習したあと、ざぁざぁと白い波が立つ瀬に突入。
春の瀬の冷たい水が、カヤックのデッキをざぶりざぶりと洗う、水飛沫が顔にかかる。
ジャケットの首元のスキマから背中に水が!「うっひょー!!」僕は思わず声を上げたのでした。
*トロ場:流れがゆるいところ
若き旅人君は、今日がカヤック初乗りです。
「カヤック、面白いっす、景色もイイっす・・・」というその笑顔は、
漕ぎはじめはぎこちなかったけど、川を下るにつれやわらかに。
隣で僕は、「若き日に旅をせずば、老いての日に何をか語る 」そんな言葉を思い出しました。
ランチに上陸した川原は、陽ざしがポカポカ。
シチューとコーヒは、ホカホカ。うーん、温もるねぇ。
グングンとぬくさを増した午後の川は、水上での日なたぼっこも心地よい。
ふぁぁ・・・。黄、萌黄、薄紅、春色にそまりゆく風景の中、僕らは夢うつつで春の川をながれてゆきました。
漕行11キロ。最高気温14、4度。
四万十川の水位は、平水+60㎝。川面の水温は、11度。
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