金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】AIと資産運用 その1

2019-03-18 08:08:58 | 金融マーケット
 本日からは「AIと資産運用」というテーマを取り上げたいと思います。

 今、全世界で、そして全ての産業で「AI」をどう活用していくかが最大のテーマになっており、すでに実用段階に入っている分野も数多く存在しています。自分が所属している資産運用業も、その典型的な業界の一つです。
 それにしても「AI」という言葉は人工知能と訳されることが多いため、鉄腕アトムのように、知性をもって自律的に思考することができる能力を思い浮かべてしまいますが、その実態は単に「人間の知的ふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもの」に過ぎません。

 数学者の新井紀子先生の言葉を借りれば、「行列式同士を関連づける最適な数式を導き出すだけのもの」に過ぎず、因子同士の因果関係を思考するプロセスは一切ありませんので、AIが導き出した数式には因果関係の説明を求めることはできません。この部分は永遠にブラックボックスとなります。
 しかも、行列式(すなわち世の中の動き)は日々変化していきますし、因数同士の関係が劇的に変化するパラダイムシフトも時々発生するため、AIが導き出した数式は、将来の劇的変化には対応ができない場合も多々発生することを覚悟しないといけません。

 AIは、私たちのこれからの生活を激変させる素晴らしい技術ではありますが、資産運用という「将来を予想する業」においては、活用の方法を間違えると、全く有効でないばかりか、詐欺行為と呼ばれかねない厄介な技術でもあります。その有効さと限界をよく知ったうえで活用しなければなりません。

 明日からは、資産運用業界でのAI活用の最前線、さらには将棋界での動きも参考に、AIの得意分野、不得意分野について、お話をしていきたいと思います。



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