金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】個人投資家の株離れ 原因と対策 その5

2019-03-04 07:30:56 | 金融マーケット
 さて、今日がこのテーマの最後になります。

 2012年以降、矢継ぎ早に打ち出したアベノミクスですが、総じて有効な施策だったと評価すべきだと考えていますが、個人投資家による資産形成の意識づけは、まだまだ道半ばであり、むしろまだ危うい状況と言わざるを得ません。
 え? でも、IDECO口座が100万を超えたとか、NISA口座が1000万口座を超えたとか、金融庁は資産形成の定着具合をアピールしていますよ、とおっしゃる方もいるでしょう。これは官民合わせて、シャカリキになってやっている結果なのですが、まだまだロイヤリティの高い資金とは言えません。

 昨年の10月から年末にかけて、株式市場は乱高下、しかも久々に水準も大きく下落しました。この時、従来型の「NISA口座」や「つみたてNISA」を使って、毎月毎月の定時定額投資を行っていた個人投資家のうち、かなり多くのの投資家が「いったん積立停止」の選択をしました。NISA口座内では、積立てる期間を定めて、自動延長をするのが一般形なのですが、平成30年1月スタートのつみたてNISAの最初の期間到来が12月末で、この時に「積立停止」を選択された方が多かったのです。そして2月中旬になっても再開指示が少ないままです。

 企業型DCで、きちんとした投資教育を受けた個人投資家の方は、どうせ60歳まで引き出せない制度だし、しかも20年30年単位でみれば、こうした乱高下は無視できるレベルだと理解されているので、全く動じることはありませんが、NISA口座だけで積立投資を始めた方々は、ちょっとしたマーケットの動きでも気持ちが揺らいでしまい、やっぱりやめた、となりがちです。過去に成功体験がないので仕方ないとは思いますが、やはり、きちんとした投資教育を施してからでないと、定時定額投資=資産形成意識の定着は難しい、とあらためて感じています。

 それからもう一つの懸念点は、資産形成事業の担い手の問題です。全てが国の法規制のせいだとは申しませんが、この分野の事業採算があまりに悪すぎる(10年後でも黒字化の目処が立たない)ため、このままだと担い手が手薄になるリスクが大です。すでに、新興のロボアド業界などは経営難に陥る可能性も見えてきています。せっかく官民挙げて定着させようと頑張ってきたマーケットですから、何としてでも成功させないといけません。

 資産形成のマーケットは、まさに今、正念場を迎えようとしていると思います。

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