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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

一點好點なる時空風景。

2024-05-29 19:31:00 | 浮世見聞記



昨日の荒天が一転して今日は好天、せっかくのお出かけ日和ゆゑ、東京都冩真美術館の「時間旅行」展を觀に行く。



百年前の1924年──大正十三年を旅の起點に、この美術館の蒐集品より様々な作家が捉へたその時代の瞬間を、それぞれが得意にする仕事(わざ)を通して訪ね歩く。


1936年(昭和十一年)に發表された、“森永ミルクチョコレート”の宣傳冩真。


(※一部作品を除き、展示室内撮影可。以下同)

堀野正雄による撮影で、この時代で若い女性の肩を出した扮装はなかなか刺激的だったと想像されるが、令和現代に見るやうな胸元を強調したこれ見よがしでないぶん、モデルの女性がより綺麗に映る。


1927年(昭和二年)に開業した地下鐵道──現 銀座線──の廣告と、まさに戰前の“モダントウキョウ”を象徴する地下鐵道驛入り口の光景。




アートとは、自由なる遊び心の具現化であることがよくわかる逸品。

この冩真を撮影していく觀覧者が何人かゐたのは、さういふ境地に憧れるゆゑか。


戰争と云ふものがいかに鬼畜行為であるかを一目瞭然に示した秀作が、堀野正雄がやはり1936(昭和十一年)に發表した、「ガスマスクをつけた女学生の行進」。



お年頃の女のコの、こんな異様なものを集團で被った容貌こそが、まさに“非常事態”ではないか!


このコレクション展でもっとも心惹かれたのが、明治初期のニッポンを彩色冩真で殘した高木庭次郎の「日本風景風俗100選」の數々。



數々の災難の果てに、關東大震災で頭が落ちて令和現在ではつひに顔だけを殘す上野大佛の、その往年が彩色で完成された姿で殘されてゐるこの一點を拝せたことを以て、今回の時空旅行がより意義深いものとなりにける。



ありがたや、

ありがたや。










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