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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

なるべくしてなる。

2012-02-22 19:49:22 | 浮世見聞記
孤独死。 人間としての交流が希薄になり、それが常識化した現代―その、帰結。 過疎化は地方だけの問題ではない。 都会では、人間同士の過疎化が進んでいる。 雨が降り出すと主婦たちが、 「雨だよ―!」 と大きな声で隣り近所に知らせ合いながら、外に干した洗濯物を取り込んでいた幼い頃の“ごく当たり前”の光景は、もはや過去のものだ。 過去を美化したがる人間の悪いクセをそのまま . . . 本文を読む

ごますりあうもたしょうのえん。

2012-02-19 14:17:09 | 浮世見聞記
なりふり構わずのけ反り、 大笑いをしてみせる。 “救いの主”を前に、誰もが必死だ。 すべては、 この谷底の集落から抜け出すために。 その蠢くありさまに、 慄然とする。 わたしは自身の護符を強く握りしめ、 かねてより見つけておいた細道を、 振り返ることなく駆け登る。 “救いの主”はそのあとすぐに、 いなくなった。 忽然と。 驚くことはない。 すべ . . . 本文を読む

ささ。

2012-02-17 22:40:47 | 浮世見聞記
深夜に千鳥足を見ると、 たまらなく哀しい気分に襲われる。 なにが楽しくて生きているのだろう。 いい服装(なり)をして、 みっともない。 その千鳥足をひっかけようとしている若者の顔を見たら、 そう見えるように若づくりした、 年寄りだった。 こちらのほうが、 よっぽど みっともない。 . . . 本文を読む

かたりあかすもむかしなり。

2012-02-13 22:48:53 | 浮世見聞記
向かいの席に座ったその人は、わたしを見て、驚いたやうな瞳(め)をした。 わたしはてっきり、あの人がわたしの目に、再び見えてしまったのかと思った。 見たくないと願うわたしの心底を、嘲るかのやうに。 わたしはすぐに、その人はわたしを誰かと勘違いしていると思った。 そう、思うことにした。 ほら、瞳(め)が違うだらう。 宿に着いたわたしのもとに、二通の便りが届いていた。 一通は明 . . . 本文を読む

ほどうきょう。

2012-02-11 18:03:51 | 浮世見聞記
階段から頭が見えた時、 わたしはおや、とおもった。 あのひとは、 もういないはず。 立ち止まって戸惑うわたしのよこを、 知らぬ気に通りすぎる。 わたしは振り返る。 うしろ姿が見える。 消えてしまえ。 しかし。 またこの季節になれば、 必ず見えてしまうことだろう。 また見えてしまうことに。 わたしは手にしていたものを破り棄てる。 めでたいことじゃ。 . . . 本文を読む

わらわばわらえほととぎす。

2012-02-09 18:44:26 | 浮世見聞記
あなたは この空の下に いる わたしも この空の下に いる あなたが この空を見上げるならば わたしも そうしよう 空 青い空 透き通った空 こうすれば 離れていても 見つめ合っていることに なるかしら あなた と さながら見みえし 昔男の冠直衣は 女とも見えず 男なりけり 業平の面影 . . . 本文を読む

じりきほんがん。

2012-02-08 07:11:13 | 浮世見聞記
夢のなかで 決して 逢わない人がいる いつも おもしろい景色ばかりを 見せるからだろう わたしは その人の居場所を 知っている でも 逢いには行かない そこには 青く塗られた芝生が 広がっているだけだから 爪を噛むなど 愚かだ 逢わないのは 合わないから わたしは この道を 信じて拓く さあ けふも 次の宿をめざして . . . 本文を読む

ひょうりいったい。

2012-02-03 18:41:36 | 浮世見聞記
上野の東京国立博物館で、「北京故宮博物院200選」展を見る。 モノクロームな書画よりも、皇帝が実際に身に付けていたと云う色彩美豊かな“朝袍”や装身具、調度品などに、自分が生まれる遥か昔の隣国に存在していた文化を実感する。 しかし、華やかなものを見れば見るほど、かつてそれらを“表舞台”で手にしていた人間たちの、“裏舞台”に思いを馳せてしまうのは、自分の悪いクセか? さて、今日 . . . 本文を読む