バンド名はそのままに、ヴォーカルがHARUYAにチェンジして再出発したμだけれど、“祥斗”時代の印象が強く残っているかつてのファンたちにはやはり抵抗があって、そちらからの支持は殆ど得られなかった。
でもその代わりに、RUSHADE時代のHARUYAのファンと(まだそういう人々が存在していたことに、何よりもHARUYA本人が驚いたらしい)、それらの“過去”とは関わりの無い純粋な新しいファンを獲得し . . . 本文を読む
ビジュアル系ロックバンド“μ”は、新しいヴォーカルにHARUYAを得て活動を再開―見事に蘇ってみせた。
それが今から、四年前。
「ほとんど消えかかって」いた両者が手を結んでの復活は、インディーズ界ではかなり衝撃的な「事件」だったらしい。
ちなみに、活動休止発表から、その間わずか三ヶ月。
けっこう早かったことから、もともとHARUYAを加入させたくて、それで尤もらしい理由を付けて祥斗を . . . 本文を読む
午前二時ちょっと前。
はっと目が覚めて、ほーらやっちまった…と、溜め息。
TVもつけっぱなしだし…。
TVでは、深夜枠に放送されているアニメがちょうど終わって、エンディングのテーマ曲が始まったところだった。
イントロからいきなりドカーンとくるハードロックに、僕は顔をしかめた。
起きたばかりでこの音とノリは辛い…。
僕はテーブルにおいたリモコンに手を伸ばして、電源ボタンに指をかけた時、歌 . . . 本文を読む
先月に部分開通したばかりの、「新東名高速道路」を通ってみた。
車線幅が広くてゆったりしているので、けっこう走り心地がよかった。
しかし、その広々さゆえにスピードの感覚が掴みにくいあたり、かなり要注意だ。
100㌔以上のスピードが出ているのに、体感は80㌔くらいであったり。
そのようななか、脇を追い抜いて行った車が何台かあったが、一体何キロ出しているのだろうと、恐ろしくなった。
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宮嶋翔が出演するはずだったミュージカルは、主演女優が麻薬所持の現行犯で逮捕されたために公演中止、という何ともお粗末な結果で、幕を下ろした。
翔が初顔合わせの時に感じた「イヤ~な空気」は、もしかしたらクスリのせいか?
なんであれ、我が親友は間一髪のところで、キケンな連中との係わり合いを逃れたわけだ。
山内晴哉流に言えば、“運”が良かったからか?
宮嶋翔が初日前に降板したことについて、一部で . . . 本文を読む
帰宅したのは夕方。
まさか僕がこんなに早く帰って来ると思うわけもなく、CDデッキで音楽を聴いていた翔は、
「あれ、バイトは?」
と目を丸くした。
「ああ。今日は仕事少ないからって、早上がりにさせられた」
と言いながら、つい翔を感慨深く見てしまった。
“かげ”
“ひなた”…
「え、なに?」
翔は顔に何か付いているのかと、頬に手をあてた。
「いや、ごめん。違うんだ。今日バイト . . . 本文を読む
「去年だったかな、TVのトーク番組にあいつがゲストで出た時、『あなたが今一番やってみたいことは?』って云う質問にあいつ、『アルバイトとかやったことがないんで、そういうのをやってみたいですね』なんて、ノホホンとぬかしやがってさ…」
そう言えば、そんなことあったかも…。
「世界中の役者志望たちを敵に回す発言だぜ。あの連中がどんな思いして、あんなやりたくもない事をガマンしてやってるか、オマエにわかる . . . 本文を読む
その代わり、
「それであなたも、いまは音楽から手を引いてしまったんですか?」
と訊ねた。
「ああ…。
“破滅”してから最初の一年くらいは、それでもなんとかあの世界でやっていこうと、色々試してみたけど…。
たぶん“RUSHADE”で、ぜーんぶ運を使い果たらしい。
あの手この手、何もかもダメ。
音楽事務所から声が掛かったこともあったけど、ホントにギョーカイに食い込んでんのかアヤシイような . . . 本文を読む
「三年目くらいになると、音楽ギョーカイの関係者なんかも、ライヴをこっそり覗きに来るようになってさ。
そのウワサを聞いたほかのバンドの間では、『そのうちメジャーデビューすんじゃね?』なんて囁かれるようになってな。
プロへの道が何となく見えて来て、メンバーも気合いが入るかと思ったら、ところがアイツらその逆でさ…」
「逆?」
「その頃から、急に俺の言うことに悉く反発するようになったんだよ。
ラ . . . 本文を読む
「…ま、俺が宮嶋翔を知っているのは、そういうわけ」
「そうだったんですか…」
自分はその宮嶋翔と中学生以来の親友であることは、あくまでも黙っていようと決めた。
「でさ、昨日連れてたあの女、どうした?」
「ああ…。その前に名刺、ありがとうございました」
「余計なお世話だったろ?」
「いやいや。貴重なご指摘でしたよ。おかげで、あなたが何者か、わかったんですから…」
僕は思わせぶりな言い方 . . . 本文を読む
「宮嶋翔ってさ、同性のファンもけっこう多いんだよな…」
山内晴哉はそう言いながら、こちらへ歩いて来た。「それも、イケメン系の」
「そうなんですか?」
僕はゆっくり振り返った。
“あの日”の夜、萬世橋駅で見かけたままの山内晴哉が、そこにいた―ああいうスタイリッシュな恰好をすると、宮嶋翔と互角と言ってよいくらいに、眩しい。
「あいつ降板したんだろ?まあ、正解だったな」
「正解?」
「その . . . 本文を読む
翔が「おはよう…」と言いながら部屋から出て来たことで、僕はハッと現実世界へ返った。
「わるいね、寝坊しちゃった…」
パソコン画面を見詰めていたこの時の僕は、よっぽど深刻な表情をしていたらしい。
「章彦…、どうした?」
と翔が傍にやって来ようとしたので、僕はさりげなく(見えるように)パソコンを閉じて、
「うん、いいバイトが見つかんなくてさあ…」
と、咄嗟に出任せを言った。「今のバイト辞 . . . 本文を読む
翌朝。
七時に目が覚めて、普段は“作品”や衣類置き場にしている隣の部屋をちょっと覗いてみると、翔はまだ眠っている様子だった。
いつものようにTVをつけると、音量を消してニュース番組にチャンネルを合わせた。
すると画面には、どこか山間部の高速道路で、大破したワンボックスカーが横倒しになっている様子が映し出されていた。
無謀な運転でもしたのだろうか。
続けて、車線を遮る大岩のカット。
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ひとしきり泣いたら、何だか頭のなかがスッキリした。
ふーっ…。
実際、「泣く」と云う行為は医学的にも…、まぁそんな話しはどうでもいいや。
「腹へった…」
考えたら、この日は朝食以外に何も食べていなかった。
馬川朋美と会っている時はコーヒーだけだったし。
ちなみに近江章彦家の冷蔵庫は、万年カラっぽ。
「買い物行っちゃいますか…」
気分転換も兼ねてネ。
近所のスーパーに行くと、ち . . . 本文を読む
久しぶりに三遊亭小圓朝さんの独演会「武蔵野 小圓朝の会」を聴きに、武蔵野芸能劇場へ。
一席目は私も好きな、「あくび指南」。
現在では五代目古今亭志ん生の工夫と云われる、「これから廓(なか)へ繰り出して…」から台詞が本筋より外れて行くやり方が一般的だが、今回の小圓朝さんは先代がやっていた“原型”―師匠の通りになかなか出来ない様子を繰り返す―による口演。
小圓朝と云う名跡と芸脈とを考えれば正し . . . 本文を読む