迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

雲霞災来……。

2024-05-30 19:45:00 | 浮世見聞記


朝の空に浮かぶ夏のやうな雲を見上げて、明日接近と予想される薹風一號云々以上に、今年も暑苦しい季節の接近を實感する。



思えば昨夏の暑さは“熱さ”であり、もはや季節と呼べる風流なものではなかった。

白昼の炎天下で、骨董市の見世番をしてゐた若い女性が、湯上がりのやうな表情で「あつい、あつい……」と喘いでゐた様は、いかにも氣の毒であった。



夏が“災害”であることは、すでに官も公認としてゐるところである。


いかに“過ごす”かではなく、

いかに“やり過ごす”か──


命懸けで我が身を護る季節の到来を、まだカラリとした風の向かふに、私は恐々と聞く。







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