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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

同期櫻(?)の段。

2025-02-14 15:34:00 | 浮世見聞記
かつて國立劇場の東と西でそれぞれに同じ時間を過ごした文樂太夫の語る「一谷嫩軍記 熊谷櫻の段」を、ラジオ放送で樂しむ。人災疫病禍の前年、橫濱の文化ホールで上演の「生冩朝顔日記 大井川の段」で、日々の精進と鍛練のあとが窺えるいい浄瑠璃を聴かせてもらって以来、機會があれば必ず聴くやうにしてゐる、そんな“樂しみ”を與へてくれる數少ない技藝者の一人、今回も“熊谷陣屋の段”につながる導入部を、さ . . . 本文を読む

「今朝怒風激しうして 小砂眼入し 歩行なり難し」。

2025-02-13 19:19:00 | 浮世見聞記
午前中から強風が吹き荒れ、棲家の窓を幾度も叩く。外を眺むれば青い空が土埃の色に染まり霞むほどにて、こりゃどうぢゃと呆れる。マスクをして上着の襟元をしっかり締めて、近所へ買ひ物に出る。古道の小高い丘からすっきりと見えるはずの富士山も、今日はボンヤリとしか映らぬ。なにか恨みでもあるのかとすら思ふ風に背中を丸めかけて、貧乏神がおぶさってくると氣が付き背筋を伸ばして、やうやく棲家へ逃げ込む。 . . . 本文を読む

その精神を偲ぶ日。

2025-02-11 15:33:00 | 浮世見聞記
今日はハ夕日。國民は休日。よって、むやみな外出はしないに限る日。なんでも、「建國記念日」云々。聞くところによれば、初代の神武天皇が即位した日云々、しかし明確な資料──みことのり──が殘されてゐるわけではなく、神話上において今日がその日に當る、とされてゐるにすぎない。よって今日は、ニッポンの建國を祝ふと云ふより、建國を“しのぶ”日云々。しかしこのᤈ . . . 本文を読む

言葉からの視點で笑ふ。

2025-02-09 20:17:00 | 浮世見聞記
橫濱市泉區のテアトルフォンテで、橫濱能樂堂の主催公演「横浜狂言堂」を觀る。ヒトが恐れるのはヒトそのものより、そのヒトが持つ“モノ”であることを太刀で象徴的に見せる「二人大名」は“パワハラ”への抵抗と諷刺であり、茶の湯に使ふ清水を汲むやう用事を言ひつけられた太郎冠者が、鬼に化けて主人を脅かしつつ“待遇改善”を要求する「清水」は雇用者と被雇用者の普遍的問題そのものであり、上演前に解説(おはなし)をつと . . . 本文を読む

生きるが勝ち。

2025-02-08 22:04:00 | 浮世見聞記
大藏流山本家の狂言「文山立(ふみやまだち)」を、ラジオ放送で聴く。喧嘩した二人の山賊が書き置きを遺して死なうとまでするが、結局はバカらしいと氣が付いて仲直りして帰って行く、笑ひと人間的情味の深さが心を暖める秀曲。「通圓」のやうな「頼政」の模倣作は別として、狂言の現行曲には方便として死を口にする人は出て来るが、本當に死を選ぶ人物は登場しない。この「文山立」がさうだが、一時は死まで思ひ詰めても、やがて . . . 本文を読む

一藝讃歌。

2025-02-03 20:34:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の寶生流「雨月」を聴く。西行法師と住吉明神の和歌を介した心の触れ合ひを、しっとりしっかり描いた秋の夜の一景。かういふテの曲は、不風流な人にはなかなか理解が難しい。だから私には、なぜかういふ曲が現在も好んで謠はれるのか、誰か平易な日本語で説いてほしいと思ふ。……いや、やめておかう。眠れぬ秋の夜長のお供に丁度良い曲だから。 . . . 本文を読む

農水省、備蓄米放出へ転換1年以内の買い戻し条件

2025-01-31 19:26:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kyodo_nor/business/kyodo_nor-2025013101000987?fm=d今日の昼にスーパーマーケットへお米を買ひに行って、明らかに先日より高値になってゐて腹が立ったばかり。このままでは、年内に10kg壱萬圓也も不思議はないと思へてくる。備蓄米放出と云っても、せいぜい昨秋に . . . 本文を読む

義務曙光。

2025-01-27 20:07:00 | 浮世見聞記
確定申告の書類を用意しなくてはと思ひ付いて、お役所まで朝のお散歩。かういふことは、ふと思ひ付いた時に行動しておかないと、後で必ず機を逸して慌てる羽目になる。これまでさんざん書いてゐるくせに、前回から三百日以上が經つと書き方をすっかり忘れて、結局いつも手引きを見ながら、遅々と數字を書き込む。納税は國民の義務云々。そのギムに追ひ立てられる一年が、今年もここから始まるのだ。 . . . 本文を読む

まだもう妄浪。

2025-01-26 18:54:00 | 浮世見聞記
冷たく強い風がイヤな感じで吹き付ける尾根づたいの古道にて、この風なんとかならんのか、と空を見上げると、まだまだ蕾の梅。まだ一月、まだ年が明けた月なのだから、まだ冬だよなと尚早な自分を笑ひながら街(した)へ下りると、ここでは梅が開き始めてゐた。次の週末には二月、もう蕾が開(さ)き始めてもいい頃だよなと、冷たい風に足も心も定まらぬ私、さあ今日はどこへ行く。 . . . 本文を読む

極樂焔土。

2025-01-25 19:20:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の觀世流「求塚」を聴く。自分を愛した二人の男の命と、なんの關はりもない鴛鴦の命とを奪ふことになった女が、死後に壮絶な地獄の責め苦に曝される曲で、能樂はかういふ世界を扱ふのも好きである。極樂浄土については、「めでたく成佛できました」と詞章で結んでその世界を匂はせはするが、實際にどれだけ“極樂”なのかまでは描かれない。 しかし地獄の話しになると、この曲でも鴛鴦の靈が鐵鳥と化して剱(つるぎ)の . . . 本文を読む

錦櫻招笑。

2025-01-24 18:36:00 | 浮世見聞記
神田錦橋の橋詰で、寒櫻が息をのむほどの笑顔で、私に手招きする。今日は通れるかわからない一日の始まりであったが、かうして逢へたのはやはり、あなたのおかげだ。惡い日など、結局は無いのサ。ぐるりとお堀端の道へ回って、河津櫻はどうかと見上げると、こちらはまだ支度中。ここ數日の暖かさに、あなたにもそろそろ逢へるでせう。 . . . 本文を読む

貧窮薄透歌。

2025-01-23 20:50:00 | 浮世見聞記
スーパーマーケットの作荷(さっか)臺に備えてある無料の透明ビニール袋が、どこもどんどん薄くなってゐると感じる。二枚重ねの状態でもかつての一枚にも満たない薄さで、よほど氣を付けて品物を入れないと、簡單にピッと裂けてしまふ。ここまで裂けやすくなると、もうビニール袋ではない、ただの「膜」である。買った物を恐る恐る入れてゐるうち、しまひにはなんでこっちがこんなに氣を遣はなくてはならんのだ! . . . 本文を読む

トランプ大統領就任政策大転換、「米国第一」再び

2025-01-21 10:18:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kyodo_nor/world/kyodo_nor-2025012001001689?fm=d時代の「混迷」を象徴する人物が米國大統領と云ふ權力の座に再び就いたところに、『世界一の大國』だったクニの現状をまざまざと見る思ひがする。もう戻ることのない過去の榮光を追ひ求め、そのために世界中が彼の言動に振 . . . 本文を読む

自力開眼。

2025-01-20 23:38:00 | 浮世見聞記
大寒とは暦上の名ばかりに暖かな日中、窓から差す陽の心地よさに、ふと長らく手付かずになってゐた、手猿樂の面の手直しをしやうと思ひ立つ。昨年にこの一期一會を逃すまじと手に入れた面だが、少し使ひ勝手が惡いので手直しが必要だと思ってはゐたものの、しくじればオシャカになるのが怖くて彫刻刀を持つ氣になれずにゐたが、今日になってにはかにその氣になる。布物の縫ひ足しや縫ひ直しはちょくちょくやるが、木工物に刃をあて . . . 本文を読む

威風轟々。

2025-01-19 21:40:00 | 浮世見聞記
いつであったか、現在(いま)はどこでどうしてゐるか知らない他人(ヒト)に、「ずいぶんエラさうに歩くネ」と笑はれたことがある。私は生来の猫背だが、いちおう人前で舞薹に立つ活動をしてゐるので、普段からの心がけで胸を張って背筋を伸ばして歩くやうにしてゐる。……つもりが、意識のしすぎで過剰となってゐたものか。しかし現在(いま)も、私はそのままを續けてゐる。あの時その他人(ヒト)は半ば嘲けて云ったからでもあ . . . 本文を読む