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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

寒鏡歡我。

2025-01-18 19:57:00 | 浮世見聞記
通りかかった公園で、若者たちがパフォーマンス動画を撮ってゐた。寒くないのかネ……、と感心しつつ、自分も必要に迫られて自作を動画撮影する不器用なマネをやることがあるので、なにやら自分を端から見てゐるやうな、面白い氣分にふうっと陥る。そして、確實に年齢(トシ)は喰ってゐる自分も見て、ふっと我に返る。 . . . 本文を読む

搖れても生き延びるために。

2025-01-17 15:18:00 | 浮世見聞記
平成七年(1995年)の阪神淡路大震災から、今日でちゃうど三十年云々。それ以降、國内のあちこちで發生した大地震を考へると、三十年がむしろ遠くはない時間に感じられてくる。そして、現代に頻發するやうになった大地震は、三十年前の今日が端緒だったのではないかとも思へてくる。かういふ大災害が發生すると、報道屋は決まって家族を失なった方を取材したがる。被災者に、現代流行りの氣持ち惡い表現で云ふと . . . 本文を読む

華許匂来。

2025-01-16 18:58:00 | 浮世見聞記
時折のぞく陽と、キンと冷えた空氣のせめぎ合ふ日中、近所の軒先で蠟梅がだいぶ笑ふやうになった。その許に立つと豊潤な薫りに包まれて、いまが真冬であることをしばし忘れさせてくれる。住めば都、ここにあり。 . . . 本文を読む

應援不讃歌。

2025-01-13 19:47:00 | 浮世見聞記
今日は街なかで、やけに振袖だのスーツだのでめかし込んだ若モンを見かけると思ったら、“成人の日”云々。しかし、その風情が七五三の延長のやうで、あれで千歳飴を提げてゐても違和感がないナと思ったのは、それだけ私の眼と心が浮世の粉塵に晒されて濁ったからか。「ありゃ新成人ぢゃァねぇ、新生児だな」──嬉し樂しは今日(いま)だけ、頑張ることだ若モン!忘月忘日、道を複数で歩く高齢女性の一人が、「演歌 . . . 本文を読む

蔓延萬年。

2025-01-12 16:36:00 | 浮世見聞記
松の内の長期予報では、今日の東京圏は雪となってゐたが、幸ひ日中には日が差す時間もあり、まずは難を逃れたかと安堵する。しかし、それで氣を抜くと必ず四方のどこかより、次の難はやって来る。それは、さういふものなのだ。五年前、支那から渡来した人工疫病も、さうした“まさか”の隙に蔓延し、我々は日常を壊されたではないか。 . . . 本文を読む

ここに始まる面白や。

2025-01-11 19:47:00 | 浮世見聞記
今年最初の謠ひのラジオ放送で、觀世流梅若家の「繪馬」を聴く。伊勢神宮を舞薹に、前場(前半)では一年の晴雨を占ふ繪馬掛神事の様子が能樂得意の古歌に絡めて演じられ、後場(後半)は伊勢神宮の祭神である天照大神の神話──“天の岩戸傳説”がそのまま再現される。一つの場所で二つの噺が演じられる、視覺的な變化にも富 . . . 本文を読む

玄冬素雪のキラメキ。

2025-01-10 20:20:00 | 浮世見聞記
夏の炎暑には恨めしい太陽(ひ)の光りが、かう風の冷たい日中には戀い慕って明るい道ばかりを歩きたくなる。しかし私が本當に寒さを覺えるのは、いかにも寒々とした人の姿を目にしたとき。この季節に背中を丸めてゐると、それだけで素寒貧に見えてしまふ。ヒトのフリ見て我がフリなんとか。……だめ、だめ、寒い。暖かいあそこへ、逃げやう。 . . . 本文を読む

新年親愛。

2025-01-09 19:43:00 | 浮世見聞記
池上本門寺へ、新年の挨拶に伺ふ。これで新年を迎へたらやるべきことを、すべて済ませる。境内の一画で猿回しの大道藝をやってゐたので、自分も近いやうなことをやってゐることもあり、寒空の下で頑張ってゐることへの應援の氣持ちで、觀ていく。おかげで、小猿の愛らしく柔らかな姿に、狂言「靱猿」で繊密に描かれてゐる猿曳きの情愛はこれかと、藝そのもの以上の“心”を得る。 . . . 本文を読む

緊寒謹感。

2025-01-08 19:14:00 | 浮世見聞記
東京都中央區日本橋室町の、ガラス壁の谷間に敷かれた参道。私の背後の奥には、 なにかのお社がある。が、惹かれない。こゑが聞こえない。ニンゲンが“癒し”を計算して造った空間、そこにすでに、ウソがあるからだらう。私は自分の感覺を、信じる。これから厳しい寒波が到来云々、日本海側は大雪に警戒云々。たしかに夕方から都内でも、雪の前兆を思はすやうなキンキンに冷えた風が流れこんできた。一月も正月氣分 . . . 本文を読む

鬼嗤ふ旧年依然。

2025-01-06 15:37:00 | 浮世見聞記
今日から氣持ちを“正月”から“一月”に切り替へて令和七年を生きていかうと張り切ってゐるところへ、JR線忘驛で見かけた令和八年のとんでもない予告状。やうするに、首都圏の運賃を特別に安く設定してゐた「電車特定區間」を廢止し、本来の運賃設定である「幹線」へ統ーすることで、さり気なく初乗りの十圓値上げ、また前回の値上げの巧い方便だった運賃上乗せの“バリアフリー料金”の廢止云々──首都圏の手輕な電車移動を助 . . . 本文を読む

前進回転!

2025-01-05 20:45:00 | 浮世見聞記
五日にわたった正月氣分の〆に、回転壽司屋へ行く。好きなネタを好きなやうに食べて、また明日からの糧にする。あまりノンビリしすぎると、令和七年にやりたいことの日程を組むのが、億劫になっていけない。やはり五日間くらゐが、私にはちゃうどよいやうだ。 . . . 本文を読む

常景殘景。

2025-01-03 21:26:00 | 浮世見聞記
いまがどんな季節であるかを知らせるキンと冷えた曇天の昼前、久しぶりに少し離れた場所の公園を散歩する。芝生の廣場では凧揚げに興じる親子連れの姿あり、自分が遠い昔に忘れて来た傳統遊戯に、なにか落とし物を拾ったやうな思ひに嵌まる。いろいろな光景がもはや他人事(ひとごと)な氣持ちでぐるりとまわり、かつて小休止にちゃうど良かったカフェのあった跡で、小休止。若い男性店主がひとりで見事に切り盛りしてゐたカフェで . . . 本文を読む

年瀬觀顧。

2024-12-31 20:13:00 | 浮世見聞記
今年にやるべきことは昨日までにほぼ“納め”て、殘りについては時節(いま)ではないと讀み、今日はのんびりと一年の締めを送る。高速道路はトウキョウ圏の人芥をそのまま下り線に移した帰省渋滞、商業施設では新年を迎へる準備萬端、正月朔日から働く人々にだけは、頭が下がる。能州の大地震に始まり、翌日には羽田空港で着陸直後の航空機が接触事故で全焼する大惨事が起こり、次は何だ! と不安で始まった令和六 . . . 本文を読む

盗賊稚相。

2024-12-29 13:28:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で寶生流「熊坂」を聴く。美濃赤坂で金賣吉次の一行を襲った盗賊熊坂長範とその一党が牛若丸にみるみる撃退される曲で、曲趣もさることながら曲調も痛快爽快で私の好きな曲。舞薹で使用される面は「長靈癋見」、いかにも強面をつくって見せてゐる表情にこの曲の狙ひと性格がよく表れてゐて、それが長刀では叶はぬと素手で牛若丸を捕らえんとする焦りが、哀れにして滑稽で、そしてどこか同情を誘ふ。だから、この曲が好き . . . 本文を読む

騒觀歡相。

2024-12-28 20:23:00 | 浮世見聞記
今日から年末年始の帰省が始まったとかで、東京驛を覗いて見ると、なるほど大賑はひ。三代の東京者である私には全く關係のない流れだが、かうして眺めてゐるぶんには面白い。なんでも今回は最大で九連休云々、しかし誰もが結局は後半にネタ切れして余暇(ヒマ)を持て余す、と聞く。棲家と職場の往復しかない生活文化が普段な面々、しょせんヒトは働いてナンボ、と云ふことだ。閑散とした大手町を通り、「将門塚」を訪ねる。今年一 . . . 本文を読む