大寒とは暦上の名ばかりに暖かな日中、窓から差す陽の心地よさに、ふと長らく手付かずになってゐた、手猿樂の面の手直しをしやうと思ひ立つ。
昨年にこの一期一會を逃すまじと手に入れた面だが、少し使ひ勝手が惡いので手直しが必要だと思ってはゐたものの、しくじればオシャカになるのが怖くて彫刻刀を持つ氣になれずにゐたが、今日になってにはかにその氣になる。

布物の縫ひ足しや縫ひ直しはちょくちょくやるが、木工物に刃をあてるのなど小學生の図画工作で木版画を習って以来、誰か玄人の面打職人に依頼する方法もあったが、自分の“手”で作品を作り自分の“手”で演じるから“手猿樂”なのである、何事も自力本願たれ!
仕上げの彩色は化粧でも施してゐるやうな氣分、おかげでいい具合に仕上り、これでまた、活動の幅が廣がったと氣分が上がる。