いくたびも 参る心は はつせでら
山も誓いも 深き谷川
(長谷寺の歌)
故郷の 初黄葉を手折り 持ち今日ぞ
我が来し 見ぬ人のため
(万葉集)
日本を代表する古典、「万葉集」「源氏物語」それにカルタでおなじみの「百人一首」などにも紅葉狩り
のことが登場するほど、日本人は古くからもみじ狩りを楽しんでいました。
万葉集には、紅葉を詠んだ和歌が80首以上あります。
ところが、そのほとんどが、実は紅葉ではなくて、黄葉、つまり、葉が
黄色く色づくさまを詠んだものだ
そうです。
そもそも『もみじ』という言葉自体、揉んで色を出す、という意味の『もみず』から来ているそうですが、
これも漢字では『黄葉ず』と書きます。今の世の中、どう考えても葉が赤くなる紅葉の方が主役に思えます。
万葉人の色彩感覚は現代人とは違っていたのでしょうか。
ずっとたどってみると、どうも、事の起こりは中国の陰陽五行説にあるようです。
陰陽五行説というのは、中国で作られた占いというか、哲学というようなものなのですが、その中で、黄色は
特別な色となっています。
たとえば、陰陽五行説では、青は東、黒は北、白は西で赤は南、そして黄色は中央となっています。
つまり、黄色はまさに中国の真ん中、皇帝がいる所、ということになります。
奈良時代以前の日本は、中国文化の影響を色濃く受けていたから、木々が黄色く色づくことに、特別な意味を
見い出していたのでしょう。
しかし、平安時代になって、日本独自の文化が芽生えてくると、黄色より赤の方がきれい、ということになって、
紅葉の方がメインになってきました。
平安時代に編纂された古今和歌集なんかでは、黄葉よりも紅葉の方が、圧倒的に数多く詠まれています。
**源氏物語**
源氏、藤壷の御前で青海波を舞う
「木高き紅葉の蔭に、四十人の垣代、言ひ知らず吹き立てたる物の音どもにあひたる松風、まことの深山おろしと
聞こえて吹きまよひ、色々に散り交ふ木の葉のなかより、青海波のかかやき出でたるさま、いと恐ろしきまで見ゆ.
かざしの紅葉いたう散り過ぎて、顔のにほひけにおされたる心地すれば、御前なる菊を折りて、左大将さし替へたまふ.」
**枕草子**
秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、からすの寝どころへ行くとて三つ四つ、二つ三つなど
飛び急ぐさへあはれなり
*山の端いと近うなりたるにとは紅葉を意味している。
平安時代紅葉は夕方に見るのが美しいとされていた
今年はゆっくりだったようですが、紅葉が綺麗な時期というと10月あたりからになるのでしょうか、紅葉は北から
順に約50日程かけて日本を通り抜けて行きます。
現在紅葉の色を形容するには”赤””黄色”といったような形容詞しか思いつきませんが、平安時代などはもっと
多くの形容詞が存在しました。
その一部をご紹介・・
★ 青紅葉(あおもみじ);源氏物語より。まだ緑色の紅葉の色を指す。
★ 紅葉(もみじ);赤く紅葉したも地味の色
★ 桔梗(ききょう);秋の草花で、青紫の花を咲かせる朝顔の色目
★ 小栗色(こぐりいろ);熟していないまだまだ薄い栗の色を表す
★ 落栗色(おちぐりいろ);こちらも源氏物語より。熟した栗の色を表す。
木々、山々が色づいていく様子を表していて、優雅ですね。
長谷寺の五重塔と紅葉
日本人はどうして紅葉が好きなのでしょうか。
その理由を探してみてもなかなか見つかりません。
”理由は分からないけれど紅葉が好き”
桜の花びらも然り、普段の憂さを忘れ目の前にチラチラと絶え間なく落ちる紅葉を見ているだけで心が落ち着きます。
季節を感じるというのは、コンクリートジャングルに囲まれた現在では非常に難しい事なのかも知れません。
都会の風景から離れ、一時の紅葉を楽しむ幸せ。
赤い色や黄色い色というのは一般的に人間は”温かい”と感じます。
寒い季節が間近に迫る中、気持ちだけでも温かくなっておきたいという心理的欲求からなのか、紅葉が
きらいという人に出会ったことがないのはたしかです。
心理学的に言うと紅葉は”温和、嫉妬、険悪、温暖、歓喜 ”の象徴とされています。
そう考えてみると日本人の国旗の色は”赤”ですよね。
もしかしたら私たち日本人は紅葉が好きになるよう運命づけられた民族なのかもしれません・・。
**紅葉を眺めながらどうぞ・・**
花より・・・
ならまちで文化と歴史に出会えるカフェ
NARACAFE 由庵
http://www.naracafe-youan.com
長谷寺の紅葉を間近で見たくなりました。
私も来年は長谷寺の紅葉を見に行こうと思います。
その前に牡丹も有名だっけ??
絶対いくぞ~
(お見苦しいところもありますが、あしからず^^
写真家の写真は、また由庵にて展示も・・?!)
奈良から長谷寺は徒歩も入れて1時間くらいみていないといけない、関東や京都からしたら(奈良の人にもかな?)奥地ですが、それでも多くの人が訪れてにぎわってました。
春の牡丹は4月下旬から5月上旬、あとしゃくなげも、本堂に登る階段に彩りをそえますょ。
また、今回はちょっと時期がずれてたみたいですが、寒牡丹もあるようなので、必見!?