Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

花よりもなほ

2006-06-05 15:05:59 | 映画
土曜日に、是枝監督の最新作『花よりもなほ』を見てきました。同じ日に
例の『ダビンチコード』も上映されていたので、私が見に行ったときには
お客さんの入りはいまいちでしたけど、でも映画自体はとてもよかったと
思います。是枝監督の作品らしく、淡々としていて、でもしっかりと観る
人の心に残る内容でした。

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので、そこそこにしておきますが、
今回の映画を見て改めて思ったのは、是枝監督は人間が好きなのだな、と
いうことです。ドキュメンタリー時代にいろいろと思うところがあったのか、
あるいは本来そういうかたなのかはわかりませんが、誰でも彼でも、何かしら
欠点や汚点があって当たり前で、そんな状態でこそ、まさに人間。そして、
その不完全な人間こそが素晴らしいし美しい、そう言っているように、この
映画は感じられます。

考えてみれば、『誰も知らない』での母親役の You さんも、どうしようも
ない母親でありながら、どこか可愛らしく描かれていたのは、偶然ではなかった
のかもしれません。また、『ワンダフルライフ』でインタビューに答える
人たちが、とても心和む雰囲気で話しているようにカメラに収められていたのも、
そういう意図があったからなのでしょう(由利徹さんが最高でした)。

そうそう、主人公の宗左が、父上に教えてもらったことが他にもあった、
というあのシーン、思わず日産の「ものより、思い出」というあのキャッチ
コピーが思い浮かびました。きっとこれは是枝監督の基本的な価値観なの
かもしれません。『誰も知らない』での子供たちだけでの生活、危なっかし
くて、しかも究極の貧しさであるにもかかわらず、子供たちはそれなりに
楽しそうだった。

人間って、とても微妙なバランスの上で生きているんだ、ということを
あの映画の中の数々のシーンで感じました。そして、ほんとちょっとした
ボタンの掛け違いでもそれが崩れてしまう。『花よりもなほ』では、
そんな脆い人間というものを支えられるのは、ちょっとした思いやりや
寛大な心なんだ、ということが語られているように思えました。

そういうテーマの映画は、大上段に振りかぶって作ると、単に暑苦しい
お説教映画になりかねませんけど、このあたりは是枝監督のうまさなのか、
そう感じさせずに話が進んでいきます。そうそう、是枝監督の映画って、
けっこう長いんですよね。この映画もけっこう長かったと思います。
始まる前にはトイレを済ませておいたほうがいいかもしれません。