Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

はまっているブログ

2006-07-12 16:28:25 | よしなしごと
目の前に、1つの箱がある。
箱の中には、1枚の紙切れが入っている。
紙切れには、あなたが天国に召される日付が書いてある。
あなたは、その箱を開けますか?

最近はまっているブログがあります。自殺や孤独死などで、誰にも見つからぬ
うちに腐敗してしまった遺体を撤去し、その部屋を清掃するという、いわゆる
「特殊清掃」の業者の人が書いているブログです。内容はそのものずばりで、
グロい話が苦手な人は読まないほうがいいでしょう。しかし、少しでもそういう
のが大丈夫な人であれば、きっとはまると思います。

このブログは、遺体の状況やその清掃についての内容だけを詳らかにする
ものではなく、実際の清掃作業以外での苦労(見積もりのやり取りや遺族
とのいざこざ)、この仕事を始めるきっかけになった出来事やその後の経緯、
さらにはこのブロガーさんがこの仕事を通して得た死生観までもが、等身大の
言葉で書かれています。

最初の日記から読み進んでいくと、内容の強烈さにめまいがしそうになります。
私はこの手の話があまり得意ではないので、最初は吐き気と頭痛がとまりません
でした。なにせホラー映画やスプラッタ映画などとは違う、現実の遺体が
事細かに記述されているので、想像したくなくてもその状況が目に浮かんで
しまいます。

個人的な話ですが、私は中学生のときに水泳部だったので、腐敗臭のすごさは
わかります。毎年プール開きの前に、水泳部がプールの清掃をするのですが、
清掃の前にプールの水を抜くと、必ず毎年、カラスやネズミなどの屍骸が
見つかります。それを除去するんですが、その臭さたるや、臭いとかそういう
レベルではなく、もう毒ガスのレベルです。吐き気がするというよりは、内臓
ごと口からすべて搾り出される、という感じの苦しさを味わいますから。

しかし、このブログに記されている内容は、そんな私の数少ない経験をはるかに
上回るものです。あまり詳しくは書きませんけど、すごいです、ほんとに。
しかし、どんどんと読み進んでいくと、次第にこの気持ち悪さに慣れてきて、
最初は吐き気を覚えたような清掃作業でも、「あぁ、今日は大したことなかったん
だね」と思えてしまうほどです。慣れとは怖い。

さて、このブログを読んでいると、人生について少し考えさせられます。
このブログの中に登場(?)する遺体は自殺、病死、事故死、自然死などさまざまで、
またお金のある人、ない人、変わり者の人、普通の人とバラエティーに富んで
います。そんな人たちの生前の様子や遺族の人たちについての記述を読んでいると、

人間は誰であっても間違いなく死ぬ

という当たり前のことが、非常にリアルに感じられます。人間は誰でも
「自分は死なない」と思い込んでいる傾向があります。そんなことない、
という人ですら、「少なくともそんなにすぐには死なない」くらいには
思い込んでいるのではないでしょうか。私がまさにそうですが。

誰もが穏やかに自宅や病院で死ぬわけではなく、ある日突然、それこそ食事を
摂って昼寝している間に急死してしまうことだってあるわけで、自分の人生は
果たしてこのままでいいのか、もっと他にやるべきことがあるのではないか、
感謝の言葉を送っておくべき人はいないか、謝っておくべき人はいないか、
とかいうことを、つい考えてしまいました。

普通に生活しているぶんには一生に数回あるかないかの、人の死体を見るという
シチュエーションを、このブログを読んでいると何度も疑似体験でき、また
人間というのは、たとえ政治家になろうとヒルズ族になろうと、結局はただの
有機体に過ぎず、放っておけば腐ってどろどろになってしまう非常に脆い存在に
過ぎない、ということに気が付かされます。

さて冒頭の文章。何かの心理テストだったような記憶があるのですが、
この箱を開ける勇気、私にはまだありません。きっと、まったく思い残すことの
ない人生を送ってきた人だけが開けられるのだと思います。私にはまだ、
したいことも、したほうがよいことも、しなければならないこともある。
このブログを通して数々の死体が考え直させてくれた人生、もっと大切に
誠実に送らなければ。