新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

24時間テレビのドラマより

2013-08-24 23:25:42 | Weblog

こんばんは

 

今日はヤンセンファーマ・武田の2社が主催している「myeloma workshop」に参加してきました。まぁ、医局で病棟の患者さんの様子を見てから参加したのですが…出発予定時刻を過ぎてしまい開始時間に少し遅れてしまいました。

 

帰ってきて、先程24時間テレビのドラマを見ていました。

医学生のころは「頑張って医師になって、こういう病気の患者さんの役に立ちたい」と思ってみておりましたが、情熱は冷めないもののドラマ自体は冷めた目で見てしまう自分がいます。

 

今回、アップフロントでの同種移植(血縁者間)を行っておりますので、悪性リンパ腫といっていますがリンパ芽球性リンパ腫、すなわち急性リンパ性白血病の細胞がリンパ節を主体に増殖しているタイプと思われます。それでも最初から行うということは結構前の話なのかもしれないと思いました。もしくは、移植ありきではなくて念のために近い形でHLA検査を行って、抗癌剤耐性のために移植せざるを得ない状況だった…という話なのかもしれません。

 

非ホジキンリンパ腫には低悪性度(年単位で進行)、中等度悪性度(月単位で進行)、高悪性度(週単位で進行)がありますが、リンパ芽球性リンパ腫は高悪性度の非ホジキンリンパ腫に当たります。

 

治療法は他の悪性リンパ腫と異なり、急性リンパ性白血病の治療に準じた治療を行います。それにより劇中にもありましたが寛解率、生存率ともにかなり改善しました。

 

ただ、個々の患者さんに対して・・・ではありません。

 

ドラマの中で父親(役柄)が医師に「抗癌剤しか方法はないのか。苦しんでいるだけで治らないじゃないか」というようなことを言うシーンがありましたが、おそらく多くの患者さんには効果があるといってはじめられた治療が効果がなかった場合、患者さんや家族はそのように思われるのだろうとは思います。

 

もしくは治ると信じて開始した治療の合併症により、大きなことが発生した場合など。

 

標準治療というのは「多くの方に有効性が証明されている」から標準治療になっています。その標準治療が効かなかった患者さんは、一般的な統計から外れていきます。

 

劇中の最初の医師の説明が「80%の確率で治るものです(ちょっと高い気もするが・・・)」だったのが、標準的な治療が奏功しなかった時点で確率が低下したというのは、標準から外れた(+予後因子として寛解に入らなかったというのもあります)という話です。

 

逆に寛解に入ったグループは恐らく入らなかった患者さんたちを含む統計学的な解析よりも上を行くのでしょう。

 

少し話から外れますが、今日のmyeloma workshopで日赤の鈴木先生が

75歳まで生きられた患者さんの平均余命は10~15年あります。その半分は生きることができるように頑張りましょう

というような話をされました。平均寿命は若くして亡くなられた方も含めての話です。75歳まで生きている方は平均寿命よりもっと生きられる可能性が高いという話(まぁ、それはその通りです)からです。

 

医療でもこの状況になった人とならない人…というので、道が異なるポイントというのがあります。血液領域であれば「抗癌剤が効くか効かないか」です。標準的な治療が効いた人と効かなかった人では最初の分岐点が違います。

 

本来、ABVd療法がよく効き、90%の人が5年生きるホジキンリンパ腫ですが、薬が効かない人って本当にいらっしゃいます。その場合はほかの治療薬を使用するわけですが(プラチナベースの抗癌剤になるでしょうけど)、それでも効かない場合の選択肢は骨髄移植しかないという話になります(範囲が狭ければ放射線治療もありますが)。

 

毎年、24時間テレビのドラマを(見れるときは)見ていますが、血液疾患もよく出てきます。今回も血液疾患ということもあり、医師ではない目線で・・・どのように患者さんや家族が病気に対して対応されているのかの一つの例を見ることができたような気がしました。

 

このブログでも様々な方がコメントをしてくださっています。コメント総数も5000を超え、相談も含めて患者さんやご家族の方のご意見をいろいろお聞きすることができ、勉強になっております。本当にありがとうございます。

 

今後も応援いただけますとうれしく存じます。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

 

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7 コメント

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また (りえ)
2013-08-25 16:56:17
この前は回答ありがとうございました!
母親の結果がでて、原発生骨髄繊維症との事がわかりました。二次性ではないらしいです。今の病院では出来ることがないらしく、北大に移動してもらうかもしれませんって言われました。でも北大の先生には考えさせて下さいと言われて返事待ちの状態らしいのですが、治療法がないから考えさせてほしいとの事なんでしょうかU+2754骨髄繊維症に詳しい先生を今探しています。私は北海道に住んでいます。
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Unknown (hiro)
2013-08-25 23:49:15
はじめまして。
この記事の平均寿命の話、参考になりました。

私も現在、ホジキン(Ⅱ期b)の治療を行っています。(25歳男)

前から同じ血液がんの話ということでドラマ気になっていたのですが、BadEndの内容なのでさすがに見ようとは思いませんでした(笑)

個人的な思いとしては、このドラマを期に、悪性リンパ腫の事を知ってもらって、少しでも早期発見につながればいいのではと思っています。
(自分自身、首のしこりに気づいていたのに健康診断まで放置してしまったので(笑))

また、家族の絆とか命の尊さを思うことはいいですが、「ガン=怖い」だとか「抗がん剤=辛い」といった「過度な解釈」にならないでほしいです。

お医者様ということで何かとお忙しいと思いますが、お体に気をつけて頑張ってください!!
返信する
はじめまして (にし)
2013-08-27 01:53:22
突然で夜分遅くにすいません。

あのドラマを見て不安を煽られました。

私の夫がT細胞性リンパ芽球性リンパ腫で、月曜日(昨日)から4日間の放射線治療をして、そのあと抗がん剤を2日間点滴、来週移植手術をうけます。

たかがドラマに感化されていてはいけないのですが、今どうしようもなく不安でたまりません。

主治医の先生もきちんと説明してくれて、信頼もしているのですが、もう頭がパンクしそうです。

移植は同種なのですが、8分の7です。

移植してみなければ分からないのも解ってるのですが…

こんなこと書かれても答えようがないですよね。
支離滅裂ですいません。

ただ、聞いてもらいたかっただけなので、お返事頂くのは勿体ないので、どうか読みすごしてください。

読んで頂いてありがとうございました。
返信する
Unknown (あきぴよ)
2013-08-28 00:00:48
こんばんは。

私も24時間テレビのドラマは、種類が違うとはいえ同じ病気になった身として、見ずにはいられませんでした。
ですが、大出血のシーンや激しい吐き気のシーンなど、少し誇張されてる部分も多いのかなぁ・・・と自分の体験からは思ってしまいました・・・

いろんな方を見られている先生からすると、あんな出血や副作用の激しい嘔吐も一般的なのでしょうか?
出血は、やっぱり病状がかなり進んで血小板が少なくなってることから来る出血という認識であっているのでしょうか・・・?

リンパ腫になっても前向きにいたいと思いつつ、あのような描写を見てしまうと、やっぱり少し悶々としてしまいます><
返信する
Unknown (アンフェタミン)
2013-08-28 22:20:17
>りえさん
こんばんは、コメントありがとうございます

原発性骨髄線維症に関して、完治を目指すとすれば「骨髄移植」になりますが、それも適応というものがあります。

実際に骨髄線維症の移植適応があるかは主治医の先生や北大の先生が判断されるのではないかと思います。

骨髄線維症が強いのは日本では「宮崎医大(研究では)」だと思いますが、北海道ではどこが強いかはよくわかりません。

骨髄線維症に関して将来的にはJAK2阻害薬なども出てくると思います。ただ、国内では今すぐどうこうという状況ではないと思います。国内で治験が走っていたか確認していませんが、多分今はまだやっていないのではないかと。

情報不足で申し訳ありません。

また、コメントいただければと存じます

>hiroさん
こんばんは、コメントありがとうございます

ホジキンリンパ腫の闘病中ということで、いろいろあのようなドラマに思うことも多いのではないかと存じます。

おっしゃられている通りで「家族の絆」や「命の尊さ」を思うのであればともかく、ガンに対する恐怖心が強くなるだけでは本末転倒のような気がします。

あのドラマを見て多くの人が「がん」や「医療」に少しでも関心を持って下されればうれしく思います。

治療中ということで、お辛いことも多いかと存じますが頑張ってください(頑張られていると存じますが)。

また、コメントいただければと存じます

>にしさん
こんばんは、コメントありがとうございます

恐らくご主人はCY+TBI(エンドキサン大量+全身放射線照射)を前処置として同種骨髄移植をされるのだと存じます。

少しだけ不安を解消できるかもしれないことを書きますと、医療の進歩に伴いバンクドナーのHLA1座不一致の成績は完全一致とほとんど差はありません。主治医の先生もそれをちゃんとご存じで、より良い条件のドナーさんを選択されていると思います。

おっしゃられる通りで移植でもなんでも「やってみなくてはわからない」ところがあります。あのドラマでは「on disease(病気がある状態。寛解でない状態)」で移植に突入していますので、かなり条件は悪いです。
僕も2年前に完全には消し切れなかった(PET-CTで集積あり)悪性リンパ腫の患者さんに対して同種骨髄移植を行いましたが、今も元気に外来に通われています。

不安を感じられるのは正常なことだと思います。あまりに不安が大きくて、日常生活にも支障が出そうであれば看護師さんや主治医の先生にもよく相談してくださいね。

また、コメントいただければと存じます。

>あきぴよさん
こんばんは、コメントありがとうございます

個人的には10年間で吐血して入院してきた人は見たことはありません。
LBLではなくて急性白血病で「DIC(播種性血管内凝固)」のある方、しかもある条件をそろえた患者さんに関しては「肺胞出血」で亡くなられたケースを3例ほど経験しました。あとは東京都内の某病院の歯科の先生が3週間ほど見続けていたAPLの患者さんがうちに転院した翌朝に脳出血で亡くなられましたが、出血に関してはそういうもの以外ではしりません。

本当に吐血(もしくは喀血)する状況であれば、おそらく病院居つく前に亡くなられるのではないかと思います。そういうケースは少ないのではないかと。

嘔吐は昔に比べてコントロールしやすくなりました。いろいろ薬が増えていますので。

ドラマの影響って、本当に大きいですよね。

また、コメントいただければと存じます
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お返事ありがとうございます。 (にし)
2013-08-29 01:21:19
お忙しい中のお返事、大変嬉しいです。

先生のおっしゃるとおり、放射線の後エンドキサンを2日間投与します。
夫も寛解ではない状態の移植で、先生の患者さんの元気な様子を聞いて少し安心しました。

放射線治療で今は吐き気(ムカムカするそうです)と闘っていますが、まだ笑顔が見られるので少しホッとしていたところです。

これから先、まだまだ長いですが、私がしっかりしなくては…と頑張っていこうと思います。

また先生のブログ覗かせて頂きますね。

本当にありがとうございました。
返信する
頑張ってください (アンフェタミン)
2013-08-31 17:50:15
>にしさん
こんにちは、コメントありがとうございます

移植によって残っていた悪性リンパ腫が駆逐され、ご主人が完治されることを祈念いたします。

頑張っていらっしゃるのはわかっておりますが、他に言葉が見当たりませんので一言だけ。お体に気を付けて頑張ってください。

また、コメントいただければと存じます
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