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血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

心停止移植:倫理的な背景もそうだけど、患者のもともとの健康状態は誰が保証するのか?

2012-06-24 11:43:12 | 医療

ちょっと思うことがあるので、もう一つ追加します

 

 「脳死でなければ無理」とされていた肝臓や肺の摘出が、延命治療を中止し心臓が停止した後に広く行われている--。日本の常識を根底から覆す欧米の移植事情。背景には深刻な臓器不足が横たわる。生命維持装置停止とセットの心停止移植は、市民に理解されやすい半面、倫理的課題も抱える。日本でも岡山大が指針策定に取り組むなど模索が始まっている。【斎藤広子、ブリュッセル斎藤義彦】

 昨年12月16日、ベルギー東部リエージュの中央大学病院に、首つり自殺をはかった男性(28)が運び込まれた。心停止後に蘇生したが脳に大きなダメージを受けた。主治医は脳死までは至らないが、健康な状態には回復しないと診断。家族に治療中止を提案した。家族は承諾。その後、医師から臓器提供の提案を受け、受け入れた。20日午後3時50分、人工呼吸器など治療がすべて中止され、午後4時に心臓が停止。3人の医師が死亡を確認した。5分間の待機後、別の移植チームが作業を開始、肺、肝臓、腎臓などが摘出された。

 「移植に関係なく、これ以上の治療は無駄で、健康な状態に回復しない、と医師が判断すれば治療中止を家族に勧めるのが通例。そのうえで移植の可能性を伝える」と、同大の救急医、レドゥ医師は話す。イスラエルの医師らのグループが欧州17カ国の集中治療室を03年に調査した結果では、患者の3割で治療が中止されていた。「無駄な延命は嫌」という市民感情と移植を結びつけたのが新しい心停止移植の手法だ。

 背景には深刻な臓器不足がある。腎臓で移植数が待機数の半分に及ばないような状況は各国に共通する。だが、交通事故の減少などで脳死移植は伸び悩む。ベルギー中部ルーベン大学病院の救急医、フェルディナンド教授は「臓器不足のため、80歳を超える高齢者から臓器提供を受けるほか、心停止後の移植が増えている」と話す。

 心停止移植は脳死とは別ルートで実施される。脳死になれば通常の脳死移植が行われる。難しい「脳死」概念が前提でなく理解されやすい面がある。ベルギーでの11年の統計では家族が提供を拒否する割合は、脳死が12%だったのに対して心停止は8.9%とやや低かった。トルコを含めた欧州地域の調査では、心停止移植は仏伊スペインを含め10カ国に広がる。

 一方、課題も多い。「健康な状態に回復不可能」と言っても、意識の戻らない状態で何年も生きる可能性がある。死のはるか前に治療を中止する是非には議論が分かれる。移植の際は「脳死が人の死」と法律で定めるドイツなど欧州7カ国は心停止後移植を認めない。さらに、治療中止は基本的に「医師の判断」(オランダ臓器移植財団)で家族は一定の同意を与えるに過ぎない。患者本人の意思は不明な場合が多く、患者の自己決定権はあいまいだ

 新手法では心臓が摘出できない。心臓移植には脳死からの提供が不可欠だが、心停止移植が普及した国では、脳死提供が減る傾向にある。

 ◇日本でも模索する動き

 日本では心停止移植は腎臓や角膜などに限られ、肺や心臓、肝臓は「脳死体からの提供が必要」とされてきた。欧米の心停止移植の急増は、この前提を変える意味を持つ。

 日本臓器移植ネットワークによると心停止移植は11年に68件あり、脳死移植の44件を上回っている。だが、これは延命治療中止とセットになった移植ではなく、病気や事故で自然に死亡した人から提供されたものだ。

 10年7月に改正臓器移植法が全面施行され、15歳未満の子どもや本人の書面による意思表示がない患者からの脳死臓器提供が可能になった。だが、5月末現在、移植希望者1万3230人に対し、今年に入ってからの提供者は脳死と心停止を合わせても44人だけだ

 国内でも延命治療の中止を伴う心停止移植を模索する動きが始まっている。岡山大病院の肺移植チームは今年に入り、心停止肺移植の先進地・スペインやオーストラリアを視察。同病院の大藤剛宏准教授(呼吸器外科)によると、岡山大を含む脳死肺移植の認定7施設で作業グループを作り、国内での実施に向け指針を作成する準備を進めているという。

 大藤准教授は「日本の肺移植のレベルは高く、技術的には心停止移植も可能だ。しかし、延命治療の中止を伴う移植は、法的な後ろ盾がなければできない」と指摘する。

 延命治療中止をめぐっては厚生労働省が07年にガイドラインを公表し、患者の意思の尊重を基本とすることなど、国として初めて終末期医療の手続きを提示。日本救急医学会も同年、救急医療現場での終末期の患者の延命治療を中止する際の手順を指針にまとめている。また日本でも脳死移植が認められる前、人工呼吸器を停止し、腎臓を摘出した例もあったとの報告もある。

 しかし、ルール作りには慎重な意見も根強く、法的な定めはない。大藤准教授は「日本でも延命治療の中止が一般に広がり、その後の臓器提供を選ぶ人が増えたときのために、ガイドラインの整備など医療側の体制を早く整えたい」と話す。

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倫理的な問題はいろいろあると思います。それは多くの方が思っていると思いますし、僕も「将来のある人に、未来のために残された命を使う」のか「まだ死んでいない人の可能性はどうなるのか・・・」とか、いろいろ思います。

ただ、それは僕よりも一般社会が思われることだと思いますので・・・。

 

僕からは一つだけ。

病気で心停止になった患者さんのことはいろいろ背景もわかると思いますが、突然の事故死でその方の健康状態が把握できるものだろうか・・・と。例えば1000万人近くいるとされる糖尿病とその予備群(境界域)。糖尿病は血管の病気ですので、いろいろな臓器にダメージを与えます。

 

あとは例えばCOPDだったり(自覚していないけど、かなり肺が実は悪かったとか)、家族性高コレステロール血症(ヘテロは500人に1人だから、結構見ます)とか自覚していなかったら?

検査(血液検査)の異常などは心停止後だとか、事故後はいろいろ狂いますから参考にしかなりません。

 

もちろん、移植を待っている方はそんなことを気にしている状況ではない・・・と思われるのでしょう。しかし、できるならば事前にそういったことも把握してから行われる方が良いだろうと。

 

そういたことが把握できるのであれば、家族が大きな負担を抱えることは減りますし、移植を受けた方も…後々そんなことになったときに「いやな考え」をしなくて済むのではないかと思ったりしています・

 

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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2 コメント

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お久しぶりです。 (りー)
2012-06-24 18:10:03
体調崩したりバタバタしてしまいようやく昨日、大学病院に行ってきました。
先生は前の病院からの紹介状を見ながら前の病院で新しい主治医になった女の先生に電話で「脾腫大と書いてあるけどどの程度?CTでの所見?」と聞いていました。(前の病院で新しい主治医になった先生も日大にいるもので…)
詳しく調べたいなら骨髄検査をします。
と言われました。
原因を知りたいですが前の主治医(前の病院の最初の主治医)からは悪さをしている白血球とは思えないし骨髄検査はしなくて良いと言われていたもので驚いてしまいました…


以前ご相談させていただきましたが女の先生には骨髄増殖性疾患と言われたのですが今回日大で診ていただいた先生には骨髄増多症の患者とかって電話で話していたので3人の先生の話が合わずどれが本当なのだろうと思いました。

一番今、不安なのは骨髄検査です…
痛いの怖いのが大嫌いなものでとても不安で怖いのです。
個人差はあると思いますがどんな感じの痛みでどれくらい痛いのでしょうか…?
またご相談してしまい申し訳ありません…
返信する
Unknown (アンフェタミン)
2012-06-25 20:50:09
>りーさん
こんばんは、コメントありがとうございます

大学病院を受診して、一歩前に進んだのであればよいことではないかと思います。
詳しく調べたいなら骨髄検査をします。そのままの意味でよいと思いますよ。

医師は「したほうが良い」と思っているなら、そのようなあいまいな表現は使用しないと思います。

僕は絶対にしたほうが良いと思っている場合は「しましょう」とやはり言いますし、しなくてもよいかなと思う場合は「今は骨髄検査はせずに数か月様子を見てもよいと思う。しかし、それほど侵襲(痛みなど)がない外来でできる検査なので、調べたいならささっと骨髄穿刺をしてもよいと思います」と伝えると思います。

骨髄増多症というのは正式な表現ではないと思いますが、血球が増えているということでよいのではないかと思います。

骨髄穿刺に関して、いたくないというとウソになりますが、痛そうな感じでいうと患者さんからは「思ったより痛くなかった」と言われます。

骨に針を刺すところはしっかり麻酔をすれば大丈夫だと思います。

また、コメントいただければと存じます
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