バーキットリンパ腫はバーキットリンパ腫/白血病という位置付けからもわかるように高悪性度リンパ腫にあたります。
IgH-c-Mycという転座(たまにIgH:重鎖ではなく軽鎖と転座していることもある)によりがん遺伝子であるMycが活性化します。それにより全ての腫瘍細胞が増殖状態に入ります。
増殖している細胞を認識するKi-67 (MIB-1)は100%陽性を示します。
腫瘍ができる場所として回盲部(小腸から大腸に行くところ、虫垂のあるところ)、中枢神経浸潤、後腹膜、某脊椎などが有名で、回盲部腫瘤では腹痛などの症状、脳の腫瘤ではそれに応じた症状、某脊椎では対麻痺などが知られます。
しかし、この腫瘍は強い治療を行うと長期生存率が80~90%あります。全ての腫瘍細胞が増殖しているので、抗癌剤の感受性が高いわけです。高齢者では強い治療が難しいのですが、DA-R-EPOCHの成績が良さそうということで、この治療が行われたりしています。
R-CHOPでは再発の可能性がかなり高くなります。
それでは、書いてみたいと思います。
Uさん(45歳、女性)は右下腹部痛のため、ご自宅の近くの外科に搬送され、造影CTで腹部腫瘤を認めました。それによる腸閉塞と診断され、緊急手術で病変部の腫瘍を摘出しました。
腫瘍の病理検査で悪性リンパ腫の1つ、バーキットリンパ腫と診断されて、当院に紹介となりました。
バーキットリンパ腫は高悪性度リンパ腫の1つで、怖い話ですが週単位で増殖してくる「白血病なみ」の増殖力を持ったリンパ腫です。
今回は腹部に腫瘍ができ、全身に広がる前に腫瘍による症状が出現し、周辺のリンパ節も含め大きな病変を摘出することができました。
Uさん:はい。早く診断できてよかったと思います。
ただ、他に病変がないと言い切れないのが悪性リンパ腫の怖いところで、広がる速度が他の腫瘍よりも早く、見えない病変が存在している可能性があります。それも含め、いずれにせよ抗がん剤治療が必要になります(腫瘍が取りきれたとは言えない。仮にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫でStage Iでも放射線治療だけでなく、R-CHOPを3コース行います)。
Uさん:はい。わかりました。
治療を行う前に、摘出した場所以外に病変部があるのか評価をする必要があります。治療開始前に病変部が他にあるのであれば、治療後はそこが消失していなくてはいけないからです。今回は時間が少しありますので(手術で大きな病変が除去されているという意味です。わかっている残存病変部があれば、速やかに治療を開始します)、PET-CTと骨髄の検査を行い、評価をしてから入院、治療と行きたいです。PET-CTは塊を形成している腫瘍を、骨髄の検査は骨の中の骨髄に腫瘍がいるかいないかを確認するために行います。
Uさん:わかりました。
治療法ですが、この病気は強い治療を一定の回数行えば、完治する可能性が高い病気です。当院ではR-HyperCVAD/MA療法という治療を行います。
Uさん:副作用は一般的にどのようなものがありますか?
この治療は急性リンパ性白血病の再発時にも行うことがある治療で、抗がん剤の量としてはかなり多くなります。そのため血液が作れなくなる程度がかなり高いです。特に白血球という抵抗力の数値が100/µl未満(感度未満)まで下がることが予想されます。その期間は発熱する(感染症)可能性が高いです。貧血や血小板減少が進むことも予想されますが、白血病のように作る能力が低下していなければ、輸血をしなくて済むかもしれません。しかし、必要に応じて輸血などで対応することになります。
他にも嘔気・嘔吐などの副作用もあるかもしれませんが、これは制吐剤で抑えます。脱毛は永久脱毛ではありませんが、抗がん剤開始2週間後くらいから抜け始めます。他にも神経障害(痺れ)や口内炎、下痢、便秘なども起きる可能性があります。
様々な副作用が予想されますが、それを乗り越えて完治していただきたいです。
Uさん:わかりました。宜しく御願い致します。
こんな感じでしょうか。バーキットリンパ腫は増殖も早く、初期の症状によっては本当に急いで治療を行う必要があります。しかし、完治する可能性も十分にある腫瘍ですので、説明としては「治しに行きましょう!」という感じになります。
僕の場合は・・・ですが。
(もちろん、絶対に治せるわけではないですし、時折抗がん剤が効きにくい要素が加わっている患者さんもいます。それでも最初は「治しに行きましょう」と言いたいです)
なお、悪性リンパ腫一般という感じでは、こちらの記事を参考になさってください
(悪性リンパ腫の説明(僕の説明の仕方) 、僕の非ホジキンリンパ腫の説明の仕方(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫:DLBCLを例に))
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。
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