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新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

疫学データと個人の運命は異なる:神様でないから個人のことはわかりません

2017-06-11 21:10:14 | 医療

こんばんは

 

いよいよ本格的に空いた時間で書き物をしております。学生さんが少しでもわかりやすいと言ってくれるのを期待しながら、どうやったら喜んでくれるかなと思いながら書いています。

教科書を書くというのは自分の勉強にもなるわけです。しかも、どうやったらわかりやすくなるかを考えるわけですから、理解も深まります。

 

少しずつ進めていますが、基礎分野を書いているため少し時間がかかっています。臨床分野になると伝えたいことは頭の中にいっぱいあるのですけど。

 

さて、本日はこんな記事が載っていましたので、ご紹介します。

 

<たばこ>ヘビースモーカーだけど長生きの人がいる理由

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170611-00000007-mai-soci

6/11(日) 10:10配信

 受動喫煙対策が話題ですが、肺がんとたばこの関係を解説する際、よく出るのが「私のおじいさんはヘビースモーカーだったけど、長生きした」などのエピソードです。医学的な言葉で言い換えれば、疫学データ(人を集団で観察した場合)と個人の運命(個人・個体で観察した場合)とが異なる結果になる、という実例です。なぜそのようなことが起こるのか。順天堂大学医学部公衆衛生学講座准教授で、呼吸器内科医の和田裕雄さんに解説してもらいました。

 ◇アンジェリーナ・ジョリーさんの予防切除

 まず最初に、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんの例を紹介しましょう。アンジェリーナさんは、遺伝子検査の結果、「BRCA1」あるいは「BRCA2」というがん抑制遺伝子のうち「BRCA1」に生まれつき変異を持っていることが分かり、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」が疑われました。

(中略)


 病気の原因を単純化すると、体質などの「遺伝要因」と生活環境などの「環境要因」に分けて考えることができます。がんの場合もいずれかの要因、あるいは、両方の要因によって遺伝子から作られるたんぱく質に変化が起き、がん細胞が表れて増殖するなど細胞レベルでの変化が生じます。

(中略)


 ◇喫煙者は肺がんリスクが5.5倍

 2000年以前の研究結果をまとめて解析した論文によると、喫煙したことがある人は、全く喫煙したことがない人の5.5倍、肺がんになる危険が増すと結論付けています。この世からたばこがなくなり、喫煙者と喫煙経験者が存在しなくなると、肺がん患者は現在の約6分の1になるということです。しかし、肺がん患者は0人にはなりません。この理由は、公害などの環境要因、あるいは、遺伝要因の影響のためだと考えられます。

 でも、たばこをやめるだけで肺がん発症の危険性を6分の1に減らすことが可能なのですから、私はたばこはやめた方が良いと考えています。

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最近は健康診断の胸部単純写真を見る機会が多いのですが、必ずチェックしていることがあります。

 

喫煙歴と家族歴です

 

喫煙歴はここでいう環境要因ですが、家族歴は遺伝要因の可能性があるからです。

 

上の記事でBRCAの話が出てきましたが、がん抑制遺伝子というのは異常をきたしていても遺伝します。がん遺伝子というのは増殖を促進させる遺伝子ですが、これが異常になっていた場合は受精卵が無秩序に増殖するために正常に生まれてくることはありません。遺伝性腫瘍の遺伝子はがん抑制遺伝子です。

がん抑制遺伝子については何種類もあるわけですが、2つあるブレーキが片方壊れているようなものです。両方壊れてしまうとアクセル踏みっぱなしのため発がんします。どのがん抑制遺伝子が異常に成るかで起こりやすい「がん」は変わります。完全に片方が欠損しているような方は、先ほどから言っている遺伝性腫瘍の患者さんになると思います。ただし、完全に欠損しているわけではないが少し異常がある人というのはいるわけです。

というよりは少し異常・・・というのはおそらく異常のうちには入っていなくて、ちょっと普通ではない人・・・という感じです。

遺伝子の一塩基多型(SNP:スニップ)というものがあります。正常ではないが国民の1%以上の人が持つものを言います。

肺がんだとNRF2遺伝子のSNPが有名です。おそらくこのような感じで、色々な人が色々なSNPを持っているのではないかなと思っています。

僕はちなみにある遺伝子のSNPが自分にあることを知っているのですが(笑)、個人的には悪影響ではなくて良い方向の期待をしています(そういうのも調べてみたいのですよね。実は・・・担がん患者さんと健常人で比率に違いがあるのではないかと思っているのですが)。

 

ただ、そんなことはよくわかっていないわけです。ですので、ご家族で早くにがんを発症されたりした方がいる場合、何かしら「がんになりやすい因子」があるのではないかと思って注意して読影をしています。

 

もしかしたら、「うちの父はヘビースモーカーだけど、がんにはならなかった」という方は確かにがんに関する影響は少ない方なのかもしれません。しかし、タバコには心血管系のイベントを起こすリスクもありますので、いいことはあまりないです。

 

で、全ての方に言いたいのは医療というものが全て確率の学問であるため、「病気を発症するかどうか」「病気が治療して治るかどうか」「最も良い治療は何か」というものは神様でないのでわかりません

タバコを吸ってもがんにもならないし、脳梗塞にも心筋梗塞にもならないとわかっていたら、

「他の人には影響のないところで吸ってください」

と言います。個人の嗜好ですから。

 

ただ、個人の運命はわからないわけです。ですから、医師としてわかっていること

少なくとも、タバコを吸うことによって発がんリスクや脳梗塞、心筋梗塞になるリスクは上昇します。できることならやめた方が良いと思います

ということをお伝えすることになります。

 

個人の運命はわかりませんが、疫学データを参考に「良いことを勧め」「悪いことを避ける」のが医師が患者さんに提供するべきものですので、やめられる人はタバコをやめましょう

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

コメント (2)
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