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新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

漢方の癌治療:有用でしょうけど、適応に気をつけたいですよね

2010-01-11 08:03:14 | Blogを書く理由

おはようございます

 

今日はこれから当直です。当直に行く前に洗濯などをしているのですが、その待ち時間に一個記事を更新します。

紹介したい記事は古いですけど、こちら。

がん治療に漢方 東西両医学で環境整備へ

配信元: 2009/12/23 09:23更新

今や、がん治療の側面支援にも使われる漢方薬。しかし、漢方への理解は医師の中でも浸透しておらず、政府の行政刷新会議の事業仕分けでは財務省資料にも上がるほどだ。危ぶまれた保険適用は無事に継続の見通しとなる中、東洋医学、西洋医学の専門家らの間では協力して漢方治療の環境を整えようとの機運が高まっている。(佐藤好美)  

東京都内に住む男性会社員(46)は5年前、悪性リンパ腫(しゅ)と診断された。抗がん剤などによる治療法はあるが、再発率は高いタイプ。会社員は抗がん剤治療を受けながら、要所要所で漢方薬も使用した。「今、自分の命があるのは病原を攻撃する西洋医学と、患者の免疫力を上げる東洋医学の双方の力による。特に、抗がん剤投与後の免疫力や体力の回復では、漢方の助けに負うところが大きい」という。  しかし、治療の過程では悩んだ。東洋医学と西洋医学の両方を提供してくれる医師はほとんどいない。この会社員も、がん治療を行う医師からは「漢方の使用を止めはしないが、勧めもしない」と言われた。漢方医からは抗がん剤治療に理解が得られず、真逆のアドバイスを受けたことも。  

「患者はただでさえ不安なのに、不完全な情報の中で難しい決断を迫られる。漢方の専門医らは科学的根拠をより充実させて多くの人に効用を理解してもらい、東西両医学の良いところを生かせる医師を多く育ててほしい」という。

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漢方薬の有効性というのは…患者さんによってはやはりあると思います。

 

僕が漢方の勉強を始めたのは皮膚科の研修中にやってきた「1年以上皮膚病が治らない」と他の病院を訴えかねない勢いで受診してきた患者さんが、漢方薬を飲み始めて1週間で「治りました!」と再診されたことによります。

 

その時に「漢方薬は学ぶべき価値がある」と判断し、その先生にいろいろご指導いただきながら学びました。で、ツムラがやっている漢方講座とかにも参加してみたりして・・いままで学んできましたが・・・。

 

すべての患者さんに有効というわけではないですし、やはり副作用も出ます。

 

癌治療というと有名どころは「十全大補湯」をベースにして行うものなんでしょうけど(大腸癌とかですね)・・・この免疫を活性化させたりする作用が時々悪影響を与えないかと思うことがあります。

 

それは…僕が特に血液疾患を扱っているからなんですけど。

 

悪性リンパ腫に対して「免疫能」が改善…もしくは刺激されるのであれば…悪性リンパ腫のタイプによっては増殖が促進されたりしないだろうか・・という懸念です。

参照:http://www.tsumura.co.jp/password/m_square/products/tqt/14.htm

 

逆にたとえそうだったとしても、CAG療法(急性骨髄性白血病(AML)に対してAML細胞も増えるようにG-CSFで刺激しながら抗癌剤を投与する)のように抗腫瘍効果が高まるかもしれませんが、治験でもないのにそんな実験的なことはできませんから・・・・。

 

さらに急性白血病では骨髄抑制がかなり強く出る(WBC<500、状況によっては<100)ので、漢方薬自体が使いにくい

 

癌治療に・・・ではなくて「漢方」を有害事象や合併症に対して使用したことは多々あります。

 

先日、食欲不振で来た骨髄腫の患者さん(サレド内服中)は補中益気湯を投与したところ、食欲が改善しただけでなく骨髄不全が改善。IgAも2000→150となっていました。サレドの効果がそのタイミングで出ただけかもしれませんが。

 

逆に骨髄異形成症候群で食欲の落ちている患者さんに補中益気湯を投与した時に、一過性の免疫能の活性化なのか「発熱」「呼吸困難(間質性肺炎様)」の反応を起こした人もいました。

この人はその後は免疫抑制剤が奏功したので、そこらへんにも何か理由があるのかもしれません。

 

 

いずれにせよ…僕も東西両方の治療は適切に使用するべきだと思いますが、何でもかんでも両方使用するべきだとは思いません。

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

漢方薬の基本的な考え方は「内から治す。もしくは体を適切な状態、最良の状態に近づける」というものであり、西洋医学は「原因を根絶する」ことを目的とするわけですから…合わせればそれは良い効果をもたらすでしょう。

 

しかし、患者さんの状態によっては「悪影響」も与えうると考えながらやるしかないのではないかと、そう考えています。

 

まぁ、漢方薬を保険適応から外すか否か…そんな話が出ている中でいう話ではないかもしれませんけど・・・。いや、だからこそ言うべきか。保険適応のままのほうがよい、一部の患者さんに有益な治療ができると・・・

 

洗濯が終わりましたので、取り込んで、干して…当直に出発します。

では、また。

コメント (5)
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