今日は建国記念の日(紀元節)。
神話の世界の話ですが、我が国が建国された日を祝う日です。
建国記念日ではなく、「建国記念の日」というように、間に「の」を入れるのが正式なようです。
さて、そんな建国をお祝いする日なのに、いきなり表題がアレですが…
これ、「週刊実話」という雑誌に掲載された記事のタイトルです。
8人の女優さん(綾瀬はるかさん、石原さとみさん、深田恭子さんなど)の顔写真を使い、オッパイのイラストを合成したものを載せてました。
これは酷いということで、週刊実話の出版社を訴えたわけです。
その判決が先日出ました(東京地裁平成27年1月29日判決)。
ニュースにもなってちょっと話題になってましたね。
そういう意味では、ブログで取り上げるのが遅い…
この訴訟、主な争点は、
・パブリシティ権侵害と、
・人格権(氏名権、肖像権、名誉権)・人格的利益(名誉感情)の侵害
の2つ。
判決は、
・パブリシティ権侵害は否定
・他方で、人格権・人格的利益の侵害は肯定
ということで、後者の権利侵害により、原告各人に75万円(+弁護士費用5万円)の損害賠償請求を認めました。
いかにもヌード写真であるかのように表現され、コメントにも露骨な性的表現が使用されていたので、これは許されないという判断。
で、なぜこのブログでこの判決を取り上げたかと言うと、パブリシティ権が問題となっていたから。
パブリシティ権というのは、顧客吸引力を排他的に利用する権利のこと。
要は、有名人の氏名や肖像には宣伝効果や商業的価値があるので、その氏名や肖像を勝手に使うなという権利です。
どの法律にも規定されていませんが、判例上認められ、知的財産権の一つとされています。
以前からいろいろ議論されていましたが、最近、最高裁がその権利性を認めてます。
ピンクレディー事件という平成24年2月2日の判決です。
ちなみに、最高裁が認めたのはあくまで人に関するパブリシティ権。
人格権に由来する権利として。
なので、人ではなく、物やキャラクターに関するパブリシティ権は認めていません。
以前、ギャロップレーサー事件(平成16年2月13日判決)というのがありました。
競走馬(オグリキャップとか)の名前等のパブリシティ権が問題になったのですが、否定されてます。
さて、このように、人の氏名や肖像にパブリシティ権を認めるのはいいとして、
有名人というのは、社会から注目を浴びる人です。
報道や論評等の表現行為の対象となります。
なので、表現の自由というものとバランスを取る必要がある。
そうでないと、自分に都合の悪い報道等の表現行為にだけパブリシティ権を主張する、
なんてことになりかねませんので。
そんなわけで、最高裁は、パブリシティ権が認められる基準をきちんと立てています。
上記の件は、この基準に事案を当てはめ、パブリシティ権の侵害には当たらないと判断したというわけです。
理由は、
・記事は、女優さんたちの肖像(顔写真)そのものを鑑賞させるのではなく、ヌードを妄想させることを目的としていること
・記事は、雑誌の巻末に近いところに、ほんの一部として掲載され、表紙にも取り上げられず、一人一人の扱いも小さいこと
といった点から、この記事を見るために雑誌(週刊実話)を購入するとは考えづらい、というもの。
このように、パブリシティ権侵害では、名前や肖像がどのように使われているかが判断要素となります。
理由については、裁判官の評価の問題なので、いや実際は違うでしょという意見もあるかと。
とはいえ、氏名や肖像(顔写真)の顧客吸引力の保護というパブリシティ権に限ってみれば、事案を見る限り、こういう判断になるんだろうなあと思います。
人格権・人格的利益の侵害は認められているので、結論としても妥当じゃないですかね。
おっと、今日はちょっと長くなってしまいました。
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