特定非営利活動法人 被災者応援 愛知ボランティアセンター 公式ブログ

2011年3月17日設立。孤児遺児応援活動、被災地ボランティア活動等、現在進行形で被災者応援活動を行っています。

キナタルカン島訪問~12月28日~

2013年12月31日 22時29分38秒 | [平成25年(2013年)台風第30号]フィリピン・キナカルタン島ボランティア

12月28日(土)

名古屋では師走の寒い中、東別院裏の「昭和の家」でフィリピン台風被災者応援物資の仕分け・分類が多くの皆さんによって行われていたことと思います。みなさん、ありがとうございます。

私と久世は20人も乗れば満員になる船に乗り、バンタヤン島サンタフェから1時間半ほどかけてキナタルカン島に行きました。サンタフェには小型船用の港がありません。砂浜から10mほど沖に小型船が停泊していて、膝くらいまで海水に浸かって船に乗り込みます。同行したスペインの医療チームは慣れたもので、看護師の女性たちは水着を着ていて、さっさと短パンを脱いで、海の中に入っていきます。幸い私は短パン(久世は長ズボンのため海水でびしょ濡れ^^;)でしたから靴を脱ぎ、イカオ・アコがフィリピンで購入した文具の入った段ボールを担いで船に乗り込みました。

[エールTシャツで荷物を担ぐ私。となりの大きな人は救急テントチームのカナダ人。無理して彼に荷物を渡しませんでした^^]

サンタフェからキナタルカン島には定期船はありません。私たちが乗ったのはサンタフェ町がチャーターしてくれた船でした。私たちの視察にはサンタフェ町に住んでいるキナタルカン高校の校長先生も同行してくださいました。28日のホセ町長との懇談といい、船のチャーターといい、校長先生の同行といい、アルバートさんがすべて手配してくださっています。ですが、彼はそれをことさらのように言うことはまったくありません。ですから、自然の流れのように勘違いしかねません。アルバートさんはかなりすばらしいコーディネイターなのだと感心します。

ただし、完璧というわけではありません。ホテルは予約されておらず、サンタフェでは転々としました。そんなことはご愛嬌で、視察の目的からすれば本筋ではありません^^ 必要なこと、大切なことは確実に抑えられていて、アルバートさんが声をかけると人や事が自然な感じで動いていくということがすばらしいことだと実感します。

もう一点、アルバートさんに感心したことがあります。彼は世界中からやってくる緊急応援チームのコーディネイトをされています。1日に8団体の対応をしたこともあるそうです。同行したスペインの医療チームとも懇意でした。「小さな人間」なら、俺はどこそこの国のなんとか団体とツーカーだ、というようなことをいいそうなものですが、そんなことは一言もありません。かなりの人物です。

〔キナタルカン島で治療にあたるスペインの医療チーム。アルバートさんのコーディネイト〕

また、サンタフェ町役場でのホセ町長との懇談では、キナタルカン島の環境保護をベースにした将来構想についてアルバートさんは熱く語りましたが、説得力のある見事なプレゼンテーションを行い、感心して聞いていました。言葉はまるでわかっていませんが…^^;。

キナタルカン島までの小舟での約1時間半。私と久世は牡鹿半島の山道に慣れているせいかどうかは分かりませんが、船酔いすることもありませんでした。しかし、イカオ・アコメンバー4人のうち3人が船酔いに。帰りの方が波は荒かったのですが、誰も船酔いはしませんでした。帰りの船長さんのほうが波に対する操舵が上手でした。

さて、私たちがキナタルカン島に着くと、私たちを20数人の子どもたちが整然と並んで出迎えてくれました。来ている服はとっても粗末です。シミなどがついて仕分けした服の方がよほどマシです。でも、子どもたちはみんな笑顔なのです。「マアーヨン ハポン(こんにちは)」「アコ シ ヒサダ」(私はヒサダです)、「アコ シ ハポン」(私は日本です←あやしいセブ語)」と声をかけると、みんな人懐っこい笑顔で返事をします。また男の子の中には逃げていく子もいますが、笑顔ですぐに戻ってきます。

もしかしたらこの島に日本人が来るのは以前に視察に来られた倉田さんに次いで私たちが2番目かもしれません。そういう好奇心も働いているのでしょう。

驚いたことは、子どもたちは物資の入っている段ボールを前にしても、それに群がることも、ねだることもしないないことでした。

〔青い空と青い海のキナタルカン島〕

〔私たちを出迎えてくれた子どもたち〕

〔砂浜を自発的に掃除する子どもたち〕

〔砂にまみれて!〕

〔かわいい笑顔のアンジェリ〕

キナタルカン島にはハグダン村(846世帯)、ラングブ村(598世帯)、キナタルカン村(518世帯)の3つの村あわせて1,962家族が暮らしています。17歳以下の子どもは合計3,398人。1家族1.7人ですが、人口(私が頂いた資料には各村の人口が記載されていません。人口の正確なデータがないからだと思います。子どもの数は学校で把握できます)の半分近くが17歳以下の子どもです。また、シニア世代は494人。因みに限界集落の宮城県十八成浜では85世帯に子どもが5人です。村は共同体になっていますから、子どもたちも村全体で育つという感じです。とにかく多くの子どもたちが浜で砂だらけになったり、海に潜ったり、バレーボールをしたりと、元気よく走り回り、笑顔が絶えません。犬には首輪はついていません。野良犬というより島の人たちみんなで飼っているという感じかしれません。吠えることなく、砂浜にねそべって、子どもたちといっしょに遊んでいます。

台風30号(フィリピン名ヨランダ)で、キナタルカン島の家屋の全半壊は91%。島にある3つの小学校(7年制)と1つの高校(4年制)のうち、2校の校舎はほぼ全壊です。全壊の学校ではブルーシートで覆っただけの青空教室で授業が行われているそうです。

〔ここで授業が行われています〕

4校のうち1校だけ礫がかなり残った荒れた状態になっています。他の学校はかなり片付いています。この違いについて聞きそびれてしまいました。

フィリピンは教育には熱を入れていて、キナタルカン島でも8箇所のディケアセンターという名前の保育園と3校の小学校、高校1校があります。小学校の就学率はほぼ100%。高校には85%が進学します。大学へは毎年20人程度進学します。

しかし、バンタヤン高校は生徒数650人に対して教員は15人。教員1人あたりの生徒数は約43人。日本の高校では教員1人あたりの生徒数は20人以下です。また運動場も狭く、650人の生徒数の校地ではありません。1クラスの生徒数は50人~70人。日本の高校では40人以下が標準ですから、就学率は高いものの教育条件は50年ほど前の日本に近いかなり劣悪なものです。

〔台風で破壊された学校〕

サンタフェ町では学校校舎再建に必要な金額を学校毎に出しています。キナタルカン島では、ラングブ小学校721万ペソ(約1,600万円)、キナタルカン小学校252万ペソ(約550万円)、ハグダン小学校1,134万ペソ(約3,500万円)と計上し、サンタフェ町全体では小学校、高校再建に約9,000万ペソ(約2億円)必要としています。しかし、この金額は途中のピンハネも計上され、技術者が算出しただけのオーバーなものだ、とアルバートさんは言っていました。

サンタフェ町の年間予算は国から5,000万ペソ、地方税収入で800万ペソの合計5,800万ペソ(約1.2億円)。村にも予算はありますが、各村とも年間約100万ペソ(約220万円)程度にしかすぎません。キナタルカン島の小学校の校舎再建だけでもサンタフェ町の年間予算を超えています。台風30号(ヨランダ)の被害は、サンタフェ町全体で復興費用は何百億円もかかるはずでしょう。定期船も通っていない離島の校舎再建は、費用の計算はされてはいても、いつ実現することになるのだろうかと思います。

キナタルカン島は周囲約20km。キナタルカン島には車はありませんので、バイクに乗せてもらって島を3分の2ほど周りました。私たちを見ると、子どもだけではなく大人も笑顔で手を振ってくれます。豚がいて、鶏がいて、牛がいて、山羊がいて、米はとれませんが、畑もあります。水は島の中央に泉が沸き、水源になっています。電気は夜の6時~11時まで。自然の中で、自然とともに、みんなで助けあい支えあって暮らしています。

キナタルカン島の人たちは貧しいし、台風の大きなダメージを受けているのですが、不幸せとはいえないように私は思えました。それに対して「豊かな」日本は…。

とはいえ、あの衣服でいいはずはありません。あの校舎のままでいいはずはありません。人口8,000人の島に医師が1人だけでいいはずはありません。定期船がなく、重篤な病人を運ぶ救急船がないことがいいはずはありません。

キナタルカン島の環境を保護しつつ、生活の質の向上をめざす応援活動。アルバートさんたちもそれをめざしています。アルバートさんたちとともに、台風30号で家屋の90%が全半壊になったキナタルカン島の皆さんを応援する活動を進めていきます。

[キナタルカン島の浜から]

皆さんのご協力をよろしくお願いします。

このブログが2013年最後になります。今年も一年間ありがとうございました。

 

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