医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

「ゴシック」という美景1

2006年11月30日 15時39分45秒 | Weblog
 ハワイのゴルフコースなどと、軽い話題が続きましたので、少しヘビーなテーマに取り組んでみたいと思います。

 以前に、ヨーロッパの建築物や絵画などについて、大きな流れで時代考証的解説を行ってみたりしちゃいましたが、今回は「ゴシック」単独について(なんちゃってですけど )ちょっぴり掘り下げてみましょう。


 「ゴシックとは何か」、ちくま学芸文庫、酒井 健著

 「西洋建築の歴史」、河出書房新社、佐藤達生著

 という少しマニアックな本をご紹介したいと思います。

 まず最初に、酒井 健氏ですが、彼は東大仏文科卒業で、この「ゴシックとは何か」で2000年の「サントリー学芸賞」を受賞しました。

 ヨーロッパを観光する上で、あるいは美しい建物を鑑賞する上で、さらにはキリスト教文化の絵画や小説、映画もそうですが、それらを楽しむために、このゴシック建築とその背景は切っても切れない関係にあり、その上にゴシックはとても深い・・・。

 ガウディをして、松葉杖をついた瀕死状態と酷評されたゴシック建築・・・。

 確かに、以前お書きしたとおり、ゴシック建築の教会は、内部の天井を高くするあまり、側廊とフライングバットレス、控え壁で外側から支えるという異様な建築法であり、外見上、尖塔がそびえ立ち、特に裏側から見たりするとまるで巨大で不気味なカニのようで、彫刻が多く、まるで「どろろんえん魔くん」のようにおどろおどろしいものです。

 そこが逆に強い魅力でもあるのですが、美しい西欧の教会建築はゴシックを理解しなければ、十分に観賞もできません・・・というか、理解すればもっと楽しめると思います。

 「ゴシックとは何か」での主張は大きく分けると

1. ゴシックの内装は森のイメージである

→ゴシック建築の内部から見上げる柱は木々を意味し、尖塔や柱頭彫刻は生い茂る葉、ステンドグラスから差し込む神秘的な日差しは森の木漏れ日を表現する

2. この建築は故郷を追われ都市に出た異教徒である(中世フランスの)農民を、キリスト教化するのに役立った

3. 教会そのものの昇高性と過剰な装飾は、国王や司教の権威を象徴した

とのことです。