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江戸川乱歩と横溝正史 その1

2017年11月21日 | ミステリ
乱歩は戦前戦後を通じて探偵小説界の第一人者であり作家、評論家として活躍し、
正史も戦後は作家として戦前は編集者として一線で活躍していた。
とはいえ日本の探偵小説界はこの二人の間だけでなく、
もっと多くの人物のパワーバランスの上に成り立っていたはず。
しかし、あえて乱歩・正史の二人に絞ったのは、
乱歩なかりせば日本の探偵小説は生まれえず、
正史なかりせば戦後の本格探偵小説は生まれなかったから、に違いない。
あっと驚くようなエピソードはないにしろ、今まであるようで無かった
「二人の関係」を描いたことに快哉を送りたい。

後書きにあるように、出版社の来歴なども織り込んだ、ということですが、
博文館、春陽堂、講談社、平凡社、新潮社、角川等の二人と縁の深い出版社の簡単な歴史も描かれており、

個人的には東京文藝社に少し触れられていることが嬉しかった。
正史の代表作が角川で出はじめたころ、いわゆるB級作品はこの東京文藝社ソフトカバーでしか読めませんでした。
地道に集めた記憶がよみがえってきました。
著者の調査でも貸本屋向けの出版から新刊本の版元になったようだ、程度の情報しか取れなかったようです。
正史との関係はどうだったのか。「探偵小説五〇年」にも出てきませんし。

と書いておきながら、一番おどろいたのは正史逝去後に一番の親友だったはずの水谷準が評した言葉、
「酒でも女でも暴れまくって、阿修羅のような男だった」という言葉。
ええ!そんな人だったのか。
酒は「探偵小説五〇年」でもまあ語られていますが、女のことは?

いや女どころか、療養していた正史を乱歩が訪ねてきたとき、
追いかけていた少年のことで乱歩を寝かせなかったというエピソードもあります。
世の腐女子たちよ、このエピソードを書かずしてBL好きとは言えますまい。
日本一の探偵小説作家を担当した編集者が追う少年ですよ!(正史が病床にあるというポイントもあり!)

■江戸川乱歩と横溝正史 中川右介 集英社

訂正いたしました。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (中川右介)
2017-11-22 00:10:55
お読みいただきありがとうございます。
春陽堂については65ページに書いたつもりです。
お詫びします (spin_out)
2017-11-22 00:16:07
もうしわけありませんでした。
ご指摘ありがとうございました。

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