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「九つの答」 その1

2022年03月03日 | JDカー
■「九つの答」(1952年)はカーにとって転身するための試金石だったのではないか。
★転身しようとしていたんですか。
■その話の前に、大まかに冒険小説作家たちのデビューはいつだったのか、
「世界ミステリ全集」を参考に調べてみたんだ。
ハードボイルド作家は別にしておいてね。

エリック・アンブラー「暗い国境」(1936年)
ハモンド・イネス「The Doppelganger」 (1937年)
イアン・フレミング「カジノ・ロワイヤル」(1953年)
アリステア・マクリーン「女王陛下のユリシーズ号」(1955年)
ジャック・ヒギンズ「Sad Wind from the Sea」(1959年)
ギャビン・ライアル「ちがった空」(1961年)
ジョン・ル・カレ「死者にかかってきた電話」(1961年)
デズモンド・バグリィ「ゴールデン・キール」(1963年)

さらに
エリック・アンブラー「ディミトリオスの棺」(1939年)
→映画「The Mask of Dimitrios」(1944年)
ハモンド・イネス「孤独なスキーヤー」(1947年)
→映画「Snowbound」(1948年)

アンブラー、イネスはすでにデビューしていたけれど、
「九つの答」は、有名な冒険小説家がデビューする前に出ていたんだ。
作家によっては雑誌などに書いていたかもしれないけれどね。
★「九つの答」の翌年に「カジノ・ロワイヤル」が出ていたとは。
どの作家もハヤカワからバンバン出ていましたよね。
■でね、それはそれとして、比較対象する作家としてエリック・アンブラーを選んでみたんだ。
「シルマー家の遺産」(1953年)
「恐怖へのはしけ」(1951年)
★地味ですね。というかヒマ……
■ヒマじゃないよ! アンブラーは今まで読んだこともないけれど、
「九つの答」が出たあたりにはどんな作品が発表されていたのか知りたくて。
アンブラーは戦前デビュー(1936年)で、カーと年齢もあまり変わらない(カーのほうが3歳年上)。
★ところでハヤカワの世界ミステリ全集ですが、なぜカーの作品が入っていなかったんでしょうね。
クイーン、クリスティは当然としても、ガードナーやウールリッチが一人で一冊ですよ。
カーも一人で一冊とは言わないけれど、誰かと合巻で入ってもよかったんじゃないですかね。
■誰と一緒にするんだ。
★うーん、C・ロースンの「帽子から飛び出した死」?
■カーの「三つの棺」と合わせたら妙な組み合わせになる。
そういう風に言われると、カーはマイルストーン的な作家ではないかもね。
あと1巻のクリスティから7巻のアンブラーまでの各巻には、
全集が出る直前に本国で出版された最新作が入っているんだ。
★ウールリッチとチャンドラー以外ですね。
■だからカーも1969年ごろにそれなりの佳作でも出していれば、
もしかしたら入っていたかも。
★ 『ヴードゥーの悪魔』『亡霊たちの真昼』じゃあダメかなあ。
■クリスティ「フランクフルトへの乗客」、クイーン「最後の女」も
出来以上に最新作ということだけが売りだったような気もする。
カーの場合は新作が歴史ミステリという点が弱かったのだろうし、
「これ一冊、という代表作が絞りにくい」のも入らなかった理由かも。
歴史的評価とは無縁な人なんだろうなあ。
★ところで映画「カジノ・ロワイヤル」好きなんですよ・
■クレイグの方じゃなくて、デヴィッド・ニーヴンがボンド卿をやっている古いほうのやつ。
★ピーター・セラーズがロートレックの物真似をしたりする場面とか。
■オーソン・ウェルズが演じるル・シッフルは
カメラが切り替わるたびにマジックを披露する意味不明のカット、笑えたなあ。
あれはキム・ニューマン「ドラキュラ崩御」の中で、
ウェルズ本人とカリオストロ伯爵のマジック対決でパロディにされてたよ。
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