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生者と死者と / 靴に棲む老婆 その2

2019年06月06日 | Eクイーン
「災厄の町」の次に出たということが信じられず、「推理の芸術」で調べてみると
『構想は「災厄の町」の前からあったはず』(P179)という文がありました。
1939年に構想をたてたものの、
クリスティの「そして誰もいなくなった」に先を越されたのでお蔵入り、
その構想をもとに「災厄の町」の出版後に作品化した、ということらしいです。
とすると「災厄の町」の次が「フォックス家の殺人」となるので、
作品の順番としてはすんなりと納得できます。

こんなブラックドンチャン騒ぎみたいな話は「厄災の町」以降の長編作品には無いので、
前期クイーンのお蔵出し兼中締め的、あるいは若さへの決別的作品なのでしょうか。

出来事の半分は犯人の目論見で、あとの半分は偶然という神の仕業なので、
プロットは穴だらけ。
でも、そんなことは作者(とくにダネイ)は承知のうえ。
とある登場人物の言動は納得できませんし、
エラリーが作者にとって都合の良いことばかり言う点が突っ込みどころですね。
(たぶん)ダネイの「ねじれ感覚」を楽しむ作品かもしれません。

訳者の後書きに、
「宇野利泰氏のほぼ9分どおりの翻訳が出ている。参考にさせてもらった」とあり、
ハヤカワ版「靴に棲む老婆」は完訳でないことをチラッと書いてありました(未確認ですが)。

あと、ポッツばあさんのベッドがハイヒール型という描写に、ちょっとホレました。
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