Activated Sludge ブログ ~日々読学~

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●沖縄タイムス《自衛隊と米軍が、台湾有事を想定した新たな日米共同作戦計画の原案を策定…南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置く…》

2022年01月20日 00時00分14秒 | Weblog

[※ ↑ 【「空からの写真は一目瞭然」埋め立て進む辺野古の海 ドローンで監視する技術者の思い】(沖縄タイムス21.12.14、https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/879026)]


// (2021年12月30日[木])
マガジン9のコラム【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第106回:宮古島にミサイル搬入と沖縄各地で加速する要塞化の動き】(https://maga9.jp/211222-3/)。

 《「今年のオリンピックが終わったら国内は一気にキナ臭くなる」と、私は去年の今頃から言い続けてきたが、果たしてそれは現実になってしまった。少なくとも私の住む沖縄をはじめ南西諸島は、格段に空気が変わってきた。11月の沖縄県内紙は、連日自衛隊の動きがトップを飾った。今回、これから主にリポートする宮古島への自衛隊ミサイル本体の搬入のみならず、自衛隊の大規模演習や米軍の参加、県内に次々と新しい基地拠点を増やす動きが明るみになった。数日前のシンポジウムでは「沖縄を戦場にしない県民の会」結成が呼びかけられるなど、決して大げさではなく「戦争前夜の危機」が叫ばれるようになってしまっている。一番問題なのは、それが全く、的確に報道されていないこと断片的で全体像が伝わってないこと。マガジン9読者の皆さんのように平和を巡る情報に敏感な人たちでさえも、相当独自に情報を取りにいかない限り、南西諸島の要塞化が何をもたらすのかイメージできないと思う。私自身の発信も弱いことも反省しつつ、今回はこの間の動きをまとめておきたい》。

   『●4野党の共通政策は《米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の
     新基地建設中止》…自公お維に投票=《人柱》を許容することを意味する
   『●N値がゼロ、工期と費用は「∞」…今日もドブガネし、
       ジャブジャブと大量の土砂を美ら海にぶちまけている
   『●あとの祭り…自公お維政治屋は《民を飢えさせない、安全な食べ物の
      供給、そして絶対に戦争をしないことが政治家の役目》を担い得ない
   『●沖縄タイムス《大浦湾…2015年4月…「土木的問題が多い地層が
     厚く堆積している」…「長期の沈下が考えられる」と施工上の懸念も》
   『●《日本全土を米軍の鉄砲玉として…》…【解決策ない辺野古の軟弱地盤
         できもせぬ基地建設で翻弄する一方、日本全土の基地化が進行】
   『●《沖大東島での実弾射撃、宮古島のミサイル部隊による対艦攻撃、
     電子戦部隊配備計画がある与那国島での電子戦などの各訓練が展開》
   『●《SACO合意とは、事件に対する沖縄県民の怒りをはぐらかし、沖縄の
      中で基地をたらいまわしする欺瞞でしかなかった》(目取真俊さん)
   『●本土と沖縄を一緒にするなとでも? 《…燃料タンクと数十センチの
      水筒という落下物によって事故の重大性を比較するのは無意味だ》
   『●無謀な辺野古破壊開始から3年…たとえ万に一つも新基地が完成しても、
       普天間飛行場は返還されることは無く、辺野古は単なる破壊「損」

 《弾薬庫は置かない》…平気で嘘つくよなぁ。ことごとく約束は反故にされ、市民はバカにされていて、やはりコンナモノを受け入れてはいけなかった。
 《虚偽説明》《だまし討ち》。《軍服》を着た集団が島民を分断、市民の内心をかき乱す。《石嶺香織さん…「…憲法に戦力は持たないと掲げているのに、こんな矛盾を子どもに説明できない。矛盾の最前線に立たされてしまった」》。宮古島に「標的の島」を押し付け。《石嶺香織さん…「…沖縄戦の記憶から弾薬庫が真っ先に攻撃されるのは明らか再び島が標的にされる」と訴える》。《敵の弾薬庫を狙わない作戦などない》…標的。《火器がある場所は必ず標的になる》。

   『●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、
          宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている》
   『●虚偽説明…《宮古島では、島民の基地負担は
      ますます重くなっている。政府がやってるのはいじめそのもの》
   『●沖縄イジメ…《この74年間、沖縄戦以来、陸兵が軍服を着て
            宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない》
    「マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 
     第90回:島の色が変わった日 ~宮古島に陸上自衛隊がやってきた~】」
    《この74年間、沖縄戦以来、陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など
     誰も見たことはない。だが軍事基地の島になることを望まない住民らの
     あらゆる抵抗も状況を止めることはできず、ついに陸上自衛隊始動の日が
     来てしまった》

   『●《弾薬庫は置かない》…平気で嘘つくよなぁ。ことごとく約束は
     反故にされ、市民はバカにされていて、やはり受け入れてはいけなかった

 《標的》…《基地を置くから戦争が起こる》(島袋文子さん)。
 沖縄タイムスの記事【南西諸島に攻撃拠点 米軍、台湾有事で展開 住民巻き添えの可能性 日米共同作戦計画原案】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/884619)によると、《自衛隊と米軍が、台湾有事を想定した新たな日米共同作戦計画の原案を策定したことが分かった。有事の初動段階で、米海兵隊が鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置くとしており、住民が戦闘に巻き込まれる可能性が高い》。

   『●《8月ジャーナリズム》と《沖縄にとって戦争は遠い昔話ではない。
     沖縄は、今も一年中、戦争の延長線上を生きている》(大矢英代さん)

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https://maga9.jp/211222-3/

三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌
第106回:宮古島にミサイル搬入と沖縄各地で加速する要塞化の動き三上智恵
By 三上智恵 2021年12月22日


https://youtu.be/zwrFounRiac

 「今年のオリンピックが終わったら国内は一気にキナ臭くなる」と、私は去年の今頃から言い続けてきたが、果たしてそれは現実になってしまった。

 少なくとも私の住む沖縄をはじめ南西諸島は、格段に空気が変わってきた。11月の沖縄県内紙は、連日自衛隊の動きがトップを飾った。今回、これから主にリポートする宮古島への自衛隊ミサイル本体の搬入のみならず、自衛隊の大規模演習や米軍の参加、県内に次々と新しい基地拠点を増やす動きが明るみになった。数日前のシンポジウムでは「沖縄を戦場にしない県民の会」結成が呼びかけられるなど、決して大げさではなく「戦争前夜の危機」が叫ばれるようになってしまっている。

 一番問題なのは、それが全く、的確に報道されていないこと断片的で全体像が伝わってないこと。マガジン9読者の皆さんのように平和を巡る情報に敏感な人たちでさえも、相当独自に情報を取りにいかない限り、南西諸島の要塞化が何をもたらすのかイメージできないと思う。私自身の発信も弱いことも反省しつつ、今回はこの間の動きをまとめておきたい。

 まずは11月14日、ついに宮古島に運び入れられてしまったミサイルを巡る状況を動画で見て欲しい。元ゴルフ場だった千代田地区で宮古島駐屯地が2018年に動き出し、島の南東端に作られた大規模な弾薬庫を擁する「保良訓練場」が今年ほぼ完成したと言っても、ミサイルはまだ島に入っていなかった。もう入れ物ができているのだから時間の問題では、とか、島のリーダーが自衛隊基地建設を容認してきたのだから仕方ないのでは、といった冷めた見方もあるかもしれないが、少なくとも住宅地から250mという距離に大量の弾薬が置かれる保良や七俣という集落は、一貫して弾薬庫の受け入れを拒否してきた。島の活性化や安全などの理由で賛成する人たちが人口の密集する地域に多くいるからと言って、島の人は賛成していると外から言われるのは暴論だ

 弾薬庫は有事の際、真っ先に敵の攻撃目標になる。しかも、それだけではない。人為的なミスで暴発した場合、大惨事になる。保良の弾薬庫でその安全基準が守られていないことに対する住民の質問にも一切答えていない。保良では実際、戦前に大事故があった。日本軍が弾薬を保管していた場所で暴発が起き、兵士のみならず幼い子どもたちが爆死しているのだ。そんな恐怖を体験した地域に、再び弾薬と共に生活しろと強いるのは誰なのだろう。誰を守るために、誰が進めていることなのだろう?

 14日の早朝、まだ暗いうちにミサイルを積んだ戦車揚陸艦「しもきた」が、平良港の沖合に姿を現した。港のゲートではミサイル積載車を市街地に入れまいと抗議する市民がすでに集まっている。警察車両も待機している。突堤の先では、いつも石垣島で自衛隊基地を監視している男性が、黒く巨大な自衛艦が迫ってくる様子を撮影していた。近寄っていくと、目に涙を滲ませていたので、しばし言葉を失う。

 「覚悟して来たけど、悔しい。私たちのくらしは、なぜこんなにないがしろにされるのか?

 絞り出すような声で言った。宮古島でも石垣島でも、この6年、必死に反対してきた人々の存在がある。地道に集会を持ち、議会に要請したり、署名を集めたり、裁判に訴えたり、ありとあらゆる民主主義的な手段で、一日でもこんな日が来ることを遅らせようと努力を重ねてきたことを見てきただけに、私も胸がかきむしられるような思いだった。踏ん張っている石垣島が最も工事を遅らせているが、石垣島での駐屯地の造成工事もかなり進んできた。基地が完成し、弾薬が運び込まれる今日の宮古島の姿は、明日の石垣島なのだ。

 9時前、接岸した「しもきた」から危険物を搭載したことを示す「火」のマークを付けたトレーラーが姿を現した。間もなくミサイル積載車15台と、前後の自衛隊車両合わせておよそ40台の車列が整い、港のゲートが開く。宮古島市の職員がゲートを守るように立ちふさがる。自衛隊の車列の先頭は、桜のマークを付けたジープで、中にいる二人の若い隊員がマイクを握り、警告した。

 「通行の妨げになっています。危ないので道をあけてくださーい」。のっぺりとした声で繰り返す。

 これには既視感がある辺野古で、高江で、抵抗する県民に向かって防衛省の役人がメガホンで「道路に座り込む行為は、大変危険でーす」と壊れたレコーダーのように繰り返す光景。実際に人々を排除するのは機動隊だ。しかし、あれとは違う。一瞬、見慣れた構図のようだが、これは全然違う局面を迎えたのだと気づいた。迷彩服を着てミサイルを携えた軍人が、直接島の人たちに「そこをどけ」と言っているのだかつて国防の名のもとに島々に有無を言わせず乗り込んできた日本の軍隊が、どうやって島民の生活を破壊し、命の危機に陥れたかそれと同じ構図が今、再現されているのだ

 

 今回、直接座り込む人々に手をかけて排除したのは沖縄県警であるが、今後自衛隊員はミサイルを発射するキャニスターを備えた車両で島内を走り回り、撃っては移動するという訓練を繰り返すことになる。そんな島の道路を進む先々に、もし抵抗する住民がいたら、毎回毎回警察に来て排除してもらえないだろう。その次は直接、自衛隊員が抵抗する住民を引きずって道をあけさせるだろう。有事には、作戦を優先する自衛隊員と足手まといになる住民という、沖縄戦と何ら変わらない構図に陥ってしまう

 「説明もないままですか? せめてどれだけの火薬を持ち込むのか説明してください。お願いしているんです!」

 「警察のみなさーん。私たちは島の平和を守りたいだけ。暮らしを守りたいだけ。わかってくれますよね?」

 港に体を投げ出した人たちは口々に訴えるが、機動隊が一人ずつ排除していく。そこには、お母さんと小学生の娘の姿もあった。それは自衛隊ミサイル基地に反対してきたお母さんたちのグループの楚南有香子さん親子だった。

 車で待っていてもいいよ、という有香子さんと娘のやり取りがあり、最初は車の周りで遊んでいた娘さんだったが、座り込みが緊迫してくると自分からお母さんの隣に座った。ゲートが空き、排除が始まると、あまりの怖さに泣き出す場面もあった。それを見ていた、ミサイル車両の運び込みを見物している男性がヤジを飛ばした。

 「こんなところに子どもを連れて来て、泣かして。子どもを泣かせるな!」

 すると、泣いていた娘さんが彼に向かって堂々と言った。

 「お母さんが私を泣かしたんじゃない。あれが泣かしたんだ!

 そう言って自衛隊の車列を指さした。

 子どもを政治的な場に連れてくるなという、一見正当に聞こえる批判が沖縄の抵抗の場に何度も投げかけられてきたが、批判の主は、立ち上がらなければならない状況に置かれたことも、また人のために居ても立っても居られない気持ちで、衝突が起きるようなしんどい現場と知っていて出かけたこともない、何もしない人に違いない。そもそも政治的な場に行かないということ自体が政治的である。子どもに政治の実態を見せないということも悪質に政治的である。

 判断能力もない子どもを洗脳する云々と言うが、親はいつも判断能力のない子どもを連れて社会で生活をするものだし、子どもは親の背中を見て真似をして育つ。親のすることを理解しようとして社会を学ぶ。この娘さんは、私の知る限りかなりの時間、島の平和や子どもたちの未来を守るために、と街で訴え、ビラを配り、寝る時間を削って資料を作るお母さんを見てきている。その結果が、このミサイルが入る日なのだと十分わかっている。お母さんがどんな気持ちでその日を迎えたのか、十二分にわかっていたと思う。だから、怖くて携帯電話を見る格好をしながらでも、お母さんの側にいてあげようとしたのだと思う。それが虐待だろうか?

 デモが傍らを通っても知らないふりをし、困っている人たちのSOSにも関心を持たない親であれば、子どももどう関わっていいのかを学ぶ機会を奪われるし、政治的なことは黙殺するに限る、という親の生き方を身に着けるだろう。それは社会に関わらない、という政治的な姿勢を植え付けていることになる。いつか守りたいものができた時に、状況にひるまず闘う大人たちの姿を見たことがあるかないかが、その若者の行動を左右するだろう。そういう意味では、沖縄の子どもたちは周りに頑張る大人たちをたくさん見てきているという点において、どの地域よりもたくさんの財産をすでに貰っている。少なくとも私はそういう親子や、世代が交替し、若い人が力をつけていく場面をたくさん見てきた。誰にも奪われない財産が受け継がれていく瞬間を、見てきた。

 車列は昼過ぎには保良訓練場に到着し、ゲート前で抗議の声をあげる人々を越えて弾薬庫の側に収まって行った。保良の男性は言った。

 「いつも数人で、ゲート前で抗議したり監視したりしてきた。でも今日はこんなにたくさんに人が来てくれて心強い。これからまた反対、頑張ろうと。そういう気持ちになった」

 運び込まれて終わりではない。これ以上火薬を入れない。今あるものを撤去させる。防衛省の戦略を変更させてでも、宮古島の基地を使わない方向に持っていく。次々に目標を定めて抵抗する。諦めれば、さらにすごいものを押し付けられかねないのだ強い抵抗がなかった奄美大島では、自衛隊がライフル銃を携行して民間地で移動訓練をするまでになった。短期間で島の空気は一変した。落胆して終わりにすることも許されない厳しい状況だからこそ「勇気をもらったから続けられる」という言葉が出てくるのだ。

 オリンピックが終わり、岸田政権になってみると、この国はいきなり台湾有事ありき」「敵基地攻撃能力保持は急務」の路線を爆走し始めた。安倍元総理の台湾有事は日本有事」発言にメディアが大騒ぎしていないことにも驚く。「台湾有事」とは、一義的に中国と台湾の問題である。即座に日本が米軍と共に武力で呼応するのが相当であると国民にすり込むのはやめてもらいたい。それは、日本列島にミサイル防衛網を作ることで中国をけん制するという現在の日米の作戦上、必ず日本国土を戦場にすることになる。言い換えれば、「台湾有事には、日本を戦場にしてでも参戦すると宣言しているに等しいとんでもない

 そんな危うい空気の中で、9月~11月は陸自10万人を動員した大規模訓練が実施された。「南西諸島有事」つまり沖縄あたりが戦場になったことを想定して、それに対応する移動・輸送・後方支援の訓練が、全国各地で民間輸送機関や港湾施設も巻き込んで実施されたのだ。いよいよ尖閣あたりで何かあるのか? という空気が滲み渡っていくのは怖いことだ

 11月19日からは、陸海空の自衛隊員3万人が参加する自衛隊統合演習も実施された。この訓練には米軍5800人も参加。米軍主体の日米軍事演習に自衛隊が参加することはあったが、自衛隊の訓練に米軍が参加する形は初めてだ。それは、日本有事には自衛隊主体で対応すると内外に意思表示したに等しい。もちろん米軍がバックにいることが前提ではあるが、今沖縄にいる海兵隊は、来年度までにEABO(遠征前方基地作戦)に対応するMLR(海兵沿岸連隊)に再編され、「島々に分散型の拠点を配置して中国のミサイル影響下で機動性に富んだ作戦を展開するという方向」にシフトした。つまり、今南西諸島にある、固定された大型の基地は中国のミサイルによってハチの巣にされかねないので、そこは自衛隊に任せて、米軍は臨機応変に太平洋の島々を拠点に戦うということだ。

 だから、この統合訓練でも離島奪還を想定した水陸両用作戦に力点が置かれ、同時に自衛隊は、中城湾港や石垣港といった民間地を訓練に使った。動画にもある通り、普段は釣り人が行き交うようなのどかな中城湾港に、装甲車を含む80台もの自衛隊車両が次々と民間の輸送船から繰り出される光景は、まるで映画の撮影でも見ているように現実離れしていた。

 そして本部町の八重岳というお花見の名所で知られる山にも、自衛隊の車列が登ってきて大騒動になった。八重岳はかつて日本軍が陣地を置いていたため北部で最大の激戦地になり、2週間で700人近い兵隊が戦死。また、自衛隊が登ってきた道沿いには、300人の傷病兵が置き去りにされた野戦病院跡もある。戦後、本部町の渡久地政仁町長が、荒廃した八重岳の慰霊と復興の祈りを込めてカンヒザクラを植える運動を呼びかけた。その桜の枝を折るようにして自衛隊車両が通行することに猛抗議をした市民の勢いに負けて、八重岳での電子線訓練を自衛隊は断念した。自衛隊への抵抗が実を結んだ貴重な事例となった。

 しかし自衛隊が沖縄を拠点化する動きは加速している。沖縄本島東側の与勝半島にある米軍のホワイトビーチには、このところ自衛艦が頻繁に姿を現しているが、その近くにある陸自勝連分屯地には南西諸島の四つ目のミサイル部隊が来ることが明らかになり、しかも石垣・宮古・奄美のミサイル部隊を統括する役目を追う。合わせて先島有事の際に物資を送り込む兵站拠点として整備される。隣のキャンプ・ハンセンや、中途半端でも完成したあとの辺野古基地と共に、沖縄本島東海岸が自衛隊の一大拠点になることも見えてきた。

 さらに「屋良覚書」によって国と県の間で民間使用に限定する約束が交わされている下地島空港や、今回訓練で使われた石垣港も自衛隊の拠点にする意向も明らかになった。ここまでの動きに対して、報道も追いついていないし、沖縄の平和運動の方も、辺野古やPFOSなどの汚染案件はじめ米軍の問題を多数抱えながらとても手が回らない。しかし、この数年で、沖縄を二度と戦場にしないという当たり前の誓いが、崩されようとしている。少なくとも米軍基地問題と自衛隊問題を分けて考えているようでは、私たちは負ける。

 自衛隊が合憲か違憲かとか、今さらイデオロギー論争に回収される時間はなく、急患輸送や災害救助で助かっているという当然の声も、別次元で感謝し支えて継続していただくとしても、いま問題なのは「自衛隊の是非」ではなく「自衛隊が私たちの住む島々をどう使おうとしているかの問題であって「島々を二度と戦場にしない」ために「今のように自衛隊に私たちの生活の場である山も、空港も、港も訓練に提供し、やがて拠点に変えていかれたらどうなるのかという差し迫った問題にどう向き合うか、ということなのだ。

 今やこの国の国防を巡る方針は激変しており、戦争を避けたいのなら、自衛隊問題に踏み込むと選挙に不利、などと避けて通れない地平まで来ている。だとしたら来年の大事な選挙を抱える沖縄で今、何をしたらいいのか過去の縛りにこだわったり、お互いのやり方を批判し合ったりしている暇などない。皆が不得意な「国防」に真正面から向き合っていく英知がなければ、大げさではなく、私たちの生活の場は、戦場の島に逆戻りしかねないのだ
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●中村敦夫さん、《経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ》

2019年08月15日 00時00分07秒 | Weblog


東京新聞の記事【厚労相、東電に「慎重に」 福島第一 廃炉作業に外国人】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019052102000259.html)。
沖縄タイムスの記事【原発と基地「同じ構図」 俳優の中村敦夫さん、国の姿勢批判 朗読劇で危険性を告知】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/423195)。
琉球新報のコラム【<金口木舌>切り捨てられる「端っこ」】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-923709.html)。

 《厚生労働省は二十一日、福島第一原発の廃炉作業に、新たな在留資格「特定技能」の外国人を受け入れる方針を表明した東京電力に対し、慎重な検討と検討結果の報告をするよう要請する通達を出した。根本匠厚労相は、廃炉作業の従事者には長期の健康管理が必要であるのに対し特定技能の外国人の大半が五年で帰国することに懸念を示した》。
 《朗読劇「線量計が鳴る-元原発技師のモノローグ」が23日から県内3カ所で開催…。中村さんは「経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ」と訴えた》。
 《「宮古島は何かがあれば切り捨てられる『端っこ』なんだ」。宮古島市で自衛隊配備に反対する「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の楚南有香子共同代表の言葉だ…▼楚南さんはその経緯から沖縄戦、現在の自衛隊配備までの流れを挙げて「ミサイルが配備され、標的になれば住民に逃げ場はない沖縄本島も同じだ」と訴えた》。

 東電核発電人災の尻拭い…《まさしく“奴隷労働”》。「親」会社の意向としては、廃炉作業には携わらせないらいしい…でも、「子」や「孫」、「ひ孫」…はネェ?

   『●東京電力の下請け、孫請け、ひ孫請け…
      核発電人災の後始末や廃炉作業に《特定技能の外国人の雇用》か?

 《権力にへたへた》しない中村敦夫さん、「経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ」と訴えたそうだ。《経済的に弱い地域》、そして、外国人労働者のような弱い立場の人々への押し付け。

   『●浅野健一ゼミ企画シンポジウム: 報道と福島原発人災
   『●3.11東京電力原発人災から4年: 
     虚しき「地球にやさしいエネルギー原子力 人にやさしい大熊町」
   『●自公議員や原子力「推進」「寄生」委員会委員らは
                     「闘うみんな」ではないようだ
   『●「植民地気分」な日米共犯・両政府から
      「犠牲だけを強いられる沖縄」…両国に「真の文明」はあるのか?
   『●成田三樹夫さん、《権力にへたへたする役者じゃ意味がない。
                  …バカがどんどん図にのるんだよ、ハハハ》

   『●安仁屋眞昭さん《沖縄では民意よりも米軍が優先。
         沖縄の戦後は終わっていない》…何度事故・事件が起きようとも

 核発電所を《経済的に弱い地域》に押し付け、《標的の島》を沖縄本島与那国島石垣島宮古島などに押し付けて…。《誰かの犠牲の上でしか成り立たない社会》でいいのでしょうか?

 沖縄タイムスの記事【沖縄の中高生ら不戦の誓い 平和引き継ぐメッセージ朗読 「命どぅ宝」語り継ぐ】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/426114)から:
   《…語り継いでいこう
    「命どぅ宝」
    あの日と同じ過ちを
    もう二度と
    くり返さない為に-》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019052102000259.html

厚労相、東電に「慎重に」 福島第一 廃炉作業に外国人
2019年5月21日 夕刊

 厚生労働省は二十一日、福島第一原発の廃炉作業に、新たな在留資格特定技能」の外国人を受け入れる方針を表明した東京電力に対し、慎重な検討と検討結果の報告をするよう要請する通達を出した。根本匠厚労相は、廃炉作業の従事者には長期の健康管理が必要であるのに対し特定技能の外国人の大半が五年で帰国することに懸念を示した。

 根本氏は同日の閣議後の記者会見で「廃炉作業に特定技能外国人が従事するか否か、極めて慎重な検討を行う必要がある。日本人と同等以上の安全衛生管理体制の確立が必要」と述べた。

 通達は(1)除染作業の際、被ばく線量を管理できるようにすること(2)日本語や日本の習慣に不慣れな外国人に、安全教育や現場での注意喚起時は母国語を使って理解させることなどの検討を求めた。

 東電は四月、外国人の受け入れを表明。廃炉作業に関連する「建設」や「電気・電子情報関連産業」などを対象業種とするとしている。
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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/423195

原発と基地「同じ構図」 俳優の中村敦夫さん、国の姿勢批判 朗読劇で危険性を告知
2019年5月23日 08:09

 元参院議員で俳優の中村敦夫さん(79)の朗読劇「線量計が鳴る-元原発技師のモノローグ」が23日から県内3カ所で開催されるのを前に、中村さんのトーク&サイン会が22日、ジュンク堂書店那覇店で開かれた。中村さんは「経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ」と訴えた。

     (原発や沖縄について語る中村敦夫さん=22日、ジュンク堂書店那覇店)

 1998年に議員になって以降、チェルノブイリ原発事故が起きたウクライナを視察するなど環境や原発問題を提起し続けてきたという。「人類は生物の一種にもかかわらず、環境汚染や原発など生命を破滅するようなことをしている」と強調した。

 福島の原発事故が起きても、責任の所在や莫大(ばくだい)な事故処理費用の負担先などが明確になっていないとし、「肝心なところまでごまかす異常体質の国となっている」と指摘。問題の本質が埋没されないよう「表現者の一人として、告知する責任を感じた」と芝居を手掛けた理由を述べた。

 沖縄では、米軍が沖縄戦で上陸したまま今も続いて駐留しているのは「沖縄への差別。日本の他の地域との扱いの差があまりにも大きい」と指摘し「沖縄が独立してもおかしくない」と話した。

 福島の原発事故を語ることによって「沖縄に置かれている構図も同時に分かってもらえる」とし、沖縄県民に芝居を見てどう思うかを考えてもらいたいと来場を呼び掛けた。

 上演の日程は、23日が那覇市の桜坂劇場、24日が北谷町のちゃたんニライセンターカナイホール、25日が名護市民会館中ホール。開演時間はいずれも午後6時半。

 ……。
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https://ryukyushimpo.jp/column/entry-923709.html

<金口木舌>切り捨てられる「端っこ」
2019年5月24日 06:00
自衛隊 沖縄戦 金口木舌

 「宮古島は何かがあれば切り捨てられる『端っこ』なんだ」。宮古島市で自衛隊配備に反対する「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の楚南有香子共同代表の言葉だ

▼琉球民族独立総合研究学会のシンポジウムで、楚南さんは1880年に政府が宮古、八重山を清(中国)に割譲する提案をしたことに触れた。先島が実際に分割されることはなかったが、日本が欧米諸国並みの中国内地通商権などを得るための代償にされるところだった

▼楚南さんはその経緯から沖縄戦、現在の自衛隊配備までの流れを挙げて「ミサイルが配備され、標的になれば住民に逃げ場はない沖縄本島も同じだ」と訴えた

▼沖縄戦を前に配備された日本軍(第32軍)は県民を守るためではなく、米軍を引き留めておく目的で配備された。住民保護の視点は欠落し、地上戦での犠牲者は日米合わせて20万人を超えた

▼防衛省が2012年、石垣島での戦闘を想定して島しょ奪回のため必要となる自衛隊の戦力などを検討していたことが分かっている。沖縄本島への地対艦ミサイル部隊の配備も検討されている

▼楚南さんは「『日本は戦争しないんだよねと子どもたちに聞かれても、すぐにそうだよと答えられないのがつらい」と語った。子どもたちの未来は切り捨て可能な「端っこ」ではない。県民全体で議論すべき課題だ。
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●三上智恵さん「結局は止められなかった」という現実…でも、《人々は分断されている》ことを止めなければ

2017年08月27日 00時00分20秒 | Weblog

三上智恵監督『標的の島 風かたか』公式ページ(http://hyotekinoshima.com)より↑]



マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第71回:高江から宮古島へ~雪音さんと育子さんからのエール~】(http://maga9.jp/mikami170802/)。

 《『標的の村』の主人公、高江の安次嶺雪音さんと伊佐育子さんだ。…そう思って特集を連打し、放送用ドキュメンタリーの限界を超えようと映画にまでして突っ走ってきた私は、「結局は止められなかった」という現実に、正直に言ってまだ向き合えていない。…でも、ひしゃげている私にもわかることがある。これから自衛隊のミサイル基地建設着手、という局面を迎える宮古島石垣島で、何とかそれを止めようともがく人々にとって、高江の人たちは大事な存在になるということだ》。


 沖縄の先島諸島や鹿児島の奄美など、自衛隊基地配備やミサイル基地建設などで、《いずれの島でも人々は分断されている》(半田滋さん)ようです。番犬様や自衛隊基地により人々は分断され、「統合エアシーバトル構想」により「防波堤」にされる島々。

   『●『DAYS JAPAN』(2015,APR,Vol.12,No.04)の
                         最新号についてのつぶやき
    「丸井春さん【自衛隊基地配備の与那国島 宙に浮く住民の不安】、
     「日本最西端の「国境の島」は、島の活性化を自衛隊誘致にかける形に
     なった」」

   『●中学生を「青田買い」する自衛隊: 
     「体験入隊や防衛・防災講話」という「総合的な学習の時間」も
   『●自衛隊配備で「住民分断」: 
     「自衛隊の配備計画…いずれの島でも人々は分断されている」
    「東京新聞の半田滋さんによるコラム【【私説・論説室から】
     島を分断する自衛隊配備】…。《「賛成派が新たな職を得て
     優遇される一方、反対した人は干され、島を出ている」という。
     …自衛隊の配備計画は与那国に続き、奄美大島、宮古島、
     石垣島でも急速に進む。いずれの島でも人々は分断されている》」

   『●「しかし、沖縄にはいまだ“戦後”は 
     一度たりとも訪れていない」…安倍昭恵氏には理解できたのだろうか?
   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
    《しかし、三上監督は最新作『標的の島 風かたか』で、さらに切迫した
     問題を沖縄から日本全国へ提起する。それは現在、安倍政権が
     進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への
     大規模な自衛隊とミサイル基地の配備についてだ。政府は南西諸島の
     防衛強化を謳うが、その実態はアメリカが中国の軍事的脅威に
     対抗すべく打ち出した「統合エアシーバトル構想」にある》

   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)
    《現在、安倍政権が進めている石垣島、宮古島、奄美大島、
     与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の配備。政府は
     南西諸島の防衛強化を謳うが、実際は、米中の“新たな戦争”の
     「防波堤」にするのが目的だ──。この衝撃的な事実と、石垣島や
     宮古島、そして辺野古、高江で子どもの未来を守ろうと必死に
     抵抗する市民たちの姿を描いた三上智恵監督の最新作
     『標的の島 風かたか』》

   『●米中戦争の「防波堤」:
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?

    「《安倍政権が進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への
     大規模な自衛隊とミサイル基地の配備》は「統合エアシーバトル構想
     へとつながる。《政府は南西諸島の防衛強化を謳うが、実際は、
     米中の“新たな戦争”の「防波堤」にするのが目的》。米中戦争の
     「防波堤」であり、そのための「捨て石」…。
     「島おこし」「活性化」とはほど遠い」

   『●島袋文子さん「基地を置くから戦争が起こる。
      戦争をしたいなら、血の泥水を飲んでからにしてほしい」


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http://maga9.jp/mikami170802/

三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌
第71回:高江から宮古島へ~雪音さんと育子さんからのエール~
By 三上智恵 2017年8月2日

 変な言い方かもしれないが、私は自分の映画のファンだと思う。自分で散々編集した映像なのに、ただの観客のように心を躍らせて見入る場面がある。正確には作品のファンと言うより、登場人物のファンなのだ。相手に惚れ込んで惚れ込んで撮影し、大事に大事に編集したのだから、観客より監督がまず一番のファンであるのは、ある意味当たり前でもある。だから一つの作品が完成し、過去のものになっても、登場人物たちのその後がもっと見たいという気持ちは、実は観客以上にあるのかもしれない。

 しかし政治家や芸能人ならいざ知らず、被写体になり日常をカメラで追い回されるのはほとんどの人にとって心地よいはずがない。たとえば高江や辺野古の闘争現場でも、世の中に伝えてほしいと思うからこそ多くの人は私たちがカメラを向けても我慢して下さる。でも主人公格だと私に魅入られくっつかれた人は、たぶんいい迷惑でしかない。また来た、と戸惑う表情を向けられる。

 「三上さんが伝えてくれるのは嬉しいし、協力したい。でも、ここまで映すのは…」。敬遠の眼差しはひしひしと伝わってくる。だからこそ、一つの作品が終わったら解放してあげないといけないと自覚している。魅力的な人々だからとずっと追いかけていったら、それこそストーカーだ。もう負荷をかけてはいけない、と自分にブレーキをかけるのも必要だ。わかっている。でもそう言いつつ、今回また二人の女性のその後を映像でお届けする矛盾を許して欲しい。『標的の村』の主人公、高江の安次嶺雪音さんと伊佐育子さんだ。

 彼女たちに出会ったのは2006年、もう11年も前になる。まだ誰も本格的な取材に乗り出していない頃の高江で、ヘリパッドに反対する住民のゲンさんこと安次嶺現達さんと伊佐真次さんの二人を私は主人公に選んだ。その伴侶としてお会いしたのが雪音さんと育子さん。特に育子さんはカメラが嫌いで、いつもインタビューは嫌がっていた。もし育子さんが月並みな女性であれば、嫌がる中で二度三度とカメラを向けたりしなかっただろう。でも彼女は全く気取らない素朴で控えめな女性で、多弁ではないのだが、いつもハッとすることを言う。戻って映像を見ながら、なんて素敵な女性なんだろう、と毎回ため息をつく。育子さんを知る女性なら、私が言う意味をわかって下さると思う。内面から輝くような美人とは育子さんのことだと私は常々思っている。

 そして6人の子どもを育てている雪音さん。下の二人は髙江の自宅で、自力で出産したという肝っ玉母さんで、独自の歌唱ワールドを持つシンガーでもあり、何よりいつも輝くように笑っている。辛かったことも笑って話す才能がすごい。どんなしんどいことでも雪音さんと一緒なら乗り越えて行けそうだと、周りを明るく照らしてくれる太陽のような女性だ。私は母性本能が乏しいほうで、めったに人の子までかわいいと思うことはないのだが、雪音さんの6人の子どもたちは破格にかわいい。目が輝いていて、ちゃんと話ができて、幼いうちから人間力がハンパない。雪音さんとゲンさんに育てられればこうなるのかと納得の家族である。

 高江に住む人たちのこういう人間力がなければ、この10年、ここまで全国の人たちの連帯の輪を拡げることはできなかっただろう。高江の輝く自然と笑顔溢れる人々。それは最初からそこにあり、描くのにあまり苦労はなかった。国家の暴力と向き合う150人ほどの小さな村が「戦後民主主義を守る最後の砦」と言われるほど重視され、彼らと共にありたいと高江を訪ねる人が増え続けているのは、土地と人と、そこに宿る志がシンプルに人を惹きつけて止まなかったからだ。

 しかし、高江のヘリパッド建設に反対して10年も頑張ってきた結果が、去年後半の工事強行であり、6つのヘリパッドがすべて完成という現実である。国が住民を裁判にかけ地形や集落ごと訓練に取り込んでオスプレイを飛ばそうという人権無視の基地計画は、とてもじゃないが容認できない。絶対に止めなければならない。そう思って特集を連打し、放送用ドキュメンタリーの限界を超えようと映画にまでして突っ走ってきた私は、「結局は止められなかったという現実に、正直に言ってまだ向き合えていない

 「この事実を白日の下にさらすことで、絶対に軍隊の好き勝手にはさせない、だから撮影に協力してくれ」。そう啖呵を切っていろんな人に付きまとってきたのに、結局私たちの報道や映画ではこの基地建設を止められなかった。カメラで追い回して人に迷惑をかけただけだった。影響力も訴求力も足りなかったのだ。ベトナム村の話はしたくないと言う住民たちを一人ひとり探し出してマイクを向けたくせに、その負荷は高江のためにならなかった。「今は迷惑に思うかもしれないけど、必ず全国の人たちの力を揺り起こす作品を作るから、待っていて!」と自分を信じて走っていたのは、思いあがりだった。止められなかった。改めて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。これからどの面下げて高江にいけるのだ? どうやって高江を語るのだ? そこから私はまだ全然立ち直っちゃいない

 でも、ひしゃげている私にもわかることがある。これから自衛隊のミサイル基地建設着手、という局面を迎える宮古島石垣島で、何とかそれを止めようともがく人々にとって、高江の人たちは大事な存在になるということだ。座り込みもしたことがなく、運動などとは程遠い生活者であった高江の住民たちが、どうやって声を上げ、分断されつつも仲間を増やし、権力に立ち向かっていく体制を作り上げていったか。私もゼロからそれを見てきたからこそ、宮古や石垣に必要な知恵は10年前の高江であり、20年前の辺野古であるということがわかる。彼ら経験者と離島の人々を結ぶことくらいは私でもできる。

 そう思って去年の秋、山里節子さんら石垣のおばあたちと、宮古島の石嶺香織さんや楚南有香子さんを辺野古と高江に案内して住民たちと出会うチャンスを作った。高江の人たちは特に、これから防衛局を相手する先島の人たちにどんな場面が待っているのか手に取るようにわかるだけに、彼らの不安を丁寧に受け止めて「一緒に頑張りましょうと先島の女性たちの手を強く握ってくれた

 そして7月15、16日、ついに雪音さんと育子さんが宮古島に行く機会がやってきた。私はとっても嬉しかった。何より、すでに航空自衛隊の基地と共存しながら、さらにミサイル基地ができたら挟み込まれてしまう運命の野原(のばる)集落の人々と直接ひざを交えて話す機会が作れたのが大きい。野原出身で、自衛隊配備に反対する上里樹宮古島市議の妻でもある上里清美さんが受け入れ態勢を作って下さったおかげで、雪音さんたちは不安の渦中にある野原の人々に、高江が通過してきた具体的な体験の数々を直に伝えることができた。

 夕方、野原公民館で始まった交流会。

   「宮古島で今、どれだけの人たちが反対の声を上げているのかは
    わからないけど、その人たちに、一人じゃないんだよ、
    私たちもいるから一緒に頑張ろう、と伝えたかった」

 雪音さんは来島の動機をそう話した。

 そして高江の座り込み当初の映像を少し紹介した後で、育子さんはこう切り出した。

   「これが10年前、私たちが始めて座り込みをしたとき、
    道路に座ったときの様子です。私たちははじめ、
    ガタガタ震えていました。普通にこれができたわけではありません」

   「私たち区民は、高江区として反対決議をしているので
    工事はできないだろうと思っていた。でも村長が容認している
    ということで2007年の7月に着工されてしまいました」

 宮古島では、座り込んで反対する住民運動というのはあまり経験がない。自衛隊基地は反対でもそこまではやれない、という消極的な声も上がっている。そして野原は地区として反対の声を上げている。それも、かつての高江とよく似ているのだ。しかも、集落の規模も同じ。野原は自衛隊基地と、高江は米軍北部訓練場と戦後を生きてきたという歴史も共通している。地域の声を黙殺して市町村長が容認してしまっているという点まで全く同じなのだ。

 去年の夏からオスプレイの訓練が本格化し、ヘリパッドに最も近い雪音さんの家では昼夜を問わずとどろく轟音と低周波で子どもたちが体調を壊し、避難を余儀なくされた。その現状を繰り返し訴えても、容認している東村としては何も手を差し伸べてはくれない現実防音工事も、引越しの費用も、何の補償もなく黙殺されたままの残酷な状況を説明しながら、雪音さんは「とにかく、作られてしまったら終わりです。その前に止めましょう」と呼びかけた。

   「胸が詰まる。高江は、宮古島の縮図なんですね。
    私たちは二の舞をしようとしている」

 話を聞いていた野原の女性は涙声になった。会場からは深いため息が漏れた。

 育子さんは言った。

   「高江のヘリパッドはできてしまいました。でもこの壊された自然を
    元に戻すのが私たちの使命です。沖縄の闘いというのは、
    こんな4つのヘリパッドどころではありませんでした。
    戦後ずっと人権を勝ち取っていく闘いが沖縄にあったということを、
    この10年間で先輩たちに教わりました。どうしておじいおばあたちが、
    あの炎天下座り込むのか。私たちは学びました。そしてそれを
    次に伝えていく役割がある。ヘリパッドが4つできてしまったから
    もうやめよう、というような問題ではないということを沖縄の皆さんから
    習ったわけです。まだ始まったばかりなんです

 なんて強くなったんだろう。育子さんは、私たちは学んだ、だから次の役割が見えているのだとさらりと言った。

 オスプレイが沖縄に飛来した2012年10月1日。普天間基地のゲートで肩を震わせていた育子さん。「日本はもう、平和ではないね。平和が崩れ落ちていく」そういって泣いていた育子さんが、同じ日、夕方になってもオスプレイ反対のプラカードを掲げて県道で手を振り続けていた姿を昨日のことのように思い出す。私は目の前に次々に着陸するオスプレイを見て、心が折れ、尻尾を巻いて帰りたい一心だったあの夕方、育子さんは「私はこれであきらめたりはしない」と自らを叱咤激励するように道に立っていた。ドライバーに向かって頭を下げ、一緒に反対しましょうと手を振ることで自分を保っているように見えた。あの時に、彼女の並外れた精神力を垣間見た気がしたのだが、あれからの5年で、育子さんはさらに揺らがない大きな存在に昇華していた。5年前と同じように現状にへこたれている私と、えらい差がついてしまった。

 雪音さんだってそうだ。自分のことのように宮古の人たちの不安を背負う覚悟で乗り込んできた。自然体で。笑顔で。だから、こういう魅力のある人たちだからこそ私は彼女たちのファンがやめられないし、その続きや変化を見たいし、それが私以外の多くの人たちの心を揺さぶる場面になるのだということがわかるから撮りたいのだ。もう撮影はいいでしょ? と苦笑されるのはつらいけど、私以外にも『標的の村』以降の住民たちがどうなっていったのか、自分のことのように気になっているファンがいっぱいいることを私は知っている。それが次の高江を止める力=辺野古や先島の自衛隊配備を止める力に直結すると思うからこそ、結局また同行取材を申し込んでしまうのだ。

 「宮古島では関心は高くはない。みんな犠牲が出てはじめてびっくりするのではないか。そうならないうちに声を上げたいと思います」。参加した女性は最後にそう言って、「反対ののぼりを立てましょう!」と元気よく呼びかけた。

 集落に迫りくる運命がどんなに過酷であるのか、高江の経験を聞くと確かに戦慄する。でも、ヘリパッドがほぼ出来上がった今も、以前より堂々と前を向いて闘い、離島まで応援に駆けつけてくれた彼女たちの笑顔を見て、野原の人たちが受け取ったものは単なる絶望ではなかったはずだ。

 まだ、止められる。敵を知ること。連帯することで、私たちはまだ強くなれるし、頑張れる。これから始まる奮闘は、決して孤独な戦いにはならないことを確認できた夜になった。

………。

三上智恵(みかみ・ちえ): ジャーナリスト、映画監督/東京生まれ。大学卒業後の1987年、毎日放送にアナウンサーとして入社。95年、琉球朝日放送(QAB)の開局と共に沖縄に移り住む。夕方のローカルワイドニュース「ステーションQ」のメインキャスターを務めながら、「海にすわる〜沖縄・辺野古 反基地600日の闘い」「1945〜島は戦場だった オキナワ365日」「英霊か犬死か〜沖縄から問う靖国裁判」など多数の番組を制作。2010年には、女性放送者懇談会 放送ウーマン賞を受賞。初監督映画『標的の村~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』は、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、キネマ旬報文化映画部門1位、山形国際ドキュメンタリー映画祭監督協会賞・市民賞ダブル受賞など17の賞を獲得。現在も全国での自主上映会が続く。15年には辺野古新基地建設に反対する人々の闘いを追った映画『戦場ぬ止み』を公開。ジャーナリスト、映画監督として活動するほか、沖縄国際大学で非常勤講師として沖縄民俗学を講じる。『戦場ぬ止み 辺野古・高江からの祈り』(大月書店)を上梓。 (プロフィール写真/吉崎貴幸)
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