子規の図を云々した夏目漱石 ご本人の水彩画.
色調は良いが,人物が胴長で,左手も長すぎ,どう曲がっているか分からない.
子規は西洋絵画由来の「写生」の概念を応用して俳句・短歌の近代化を進めたが,この漱石の絵では写生すなわちデッサンがなってないのだ.
漱石による「子規の図」の文章を一部借りて,「子規」を「漱石」に置き換えてみると*****
漱石はこの簡単な絵を描くために、非常な努力を惜しまなかったように見える。少くとも五六時間の手間をかけて、どこからどこまで丹念に塗り上げている。彼の画は、拙まずくてかつ真面目まじめである。才を呵かして直ちに章をなす彼の文筆が、絵の具皿に浸ひたると同時に、たちまち堅くなって、穂先の運行がねっとり竦んでしまったのかと思うと、余は微笑を禁じ得ないのである。*****
「子規の図」を読むと,漱石は子規の絵も自分の絵と同レベルと信じていたと感じられる.しかし ふたりの死後一世紀以上すぎて,文庫本になったのは子規の絵のほうだった.
夏目鏡子「漱石の思い出」によれば*****
11 月ごろいちばん頭の悪かった最中、自分で絵の具を買ってまいりまして、しきりに水彩画を描きました。私たちがみても、そのころの絵はすこぶるへたで、何を描いたんだかさっぱりわからないものなどが多かったのですが、それでも数はなかなかどっさりできましたようです。もちろん大きいものもないようでして、多くは小品ですが、わけても多いのは はがきに描いた絵です。*****
でもトップの漱石の水彩画が,16 トンは好きだ.
漱石の小説も 違う意味で好きだ.
漱石の水彩画は熊本大学の HP にも寺田寅彦宛の絵葉書など2枚.ネットを探せば他にも見つかりそう.
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