Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

フルートとクラリネット : 開管と閉管

2012-06-14 09:05:33 | 新音律


物理の教科書によれば,フルートは開管すなわち両端が開いていて,クラリネットは閉管 すなわち片方が閉じた管と言うことになっている.閉じていては息が入らないのだが,リードで音波に対しては閉じていると説明される.そして閉管では偶数倍(原文は奇数倍 2015/6/28訂正)の高調波が出ない.演奏家は基本波を出すのと同じ指の位置で,技術によって高調波を出せるらしいが,この動画にあるように,クラリネットから出る高調波はひとつおきである.スペクトルは下・左の図 (http://www.phy.mtu.edu/~suits/clarinet.html) に類似のものになる (と,教科書には書いてある).



しかし自分でクラリネットのスペクトルを計ってみたら...と言っても,バディ・デ・フランコの CD が音源だが,けっこう偶数倍波も出ている.

なぜこうなるの ?
と思ったら,
P. Dickens et al., "Clarinet Acoustics: Introducing a Compendium of Impedance and Sound Spectra" Acoustics Australlia 35 (2007) 17.

という論文があった.クラリネットをフルートと比較して論じていて,右側の図はその Figure 1 として載っているスペクトラ.「どっちの周波数スペクトルがフルートでどっちがクラリネットか分からないでしょう.本文を読んで下さい」という趣旨のキャプションがついている.ふつうに計ればこんなものなんだろう.

ちなみに,YouTube でクラリネットとフルートを吹いているオジサンは大学のスタッフでこの論文の共著者のひとりらしい.

論文にはインピーダンスの測定結果もあって,そちらではクラリネットとフルートの違いは一目瞭然であった.
しかしラプラス変換で,インピーダンス Z=R+sL+1/sC と刷り込まれているので,音響イピーダンスはどうも苦手である.

図右の上下では下がクラリネットだそうです.

コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« なかた美術館の 15 周年 | トップ | 井上ひさし「一週間」 »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
クラリネットの倍音 (藤田伊織)
2015-06-28 11:38:56
楽しく読ませていただいております。クラリネットは閉管で、偶数倍音が出にくい、ということなので、「閉管では奇数倍の高調波が出ない」というのは、なにかの書き間違いでは、と思います。「図右の上下では下がクラリネットだそうです」というのも、何かの勘違いで、上の方がクラリネットのはずです。実は、クラシックのクラリネットではヴィブラートをしない、という都市伝説のようなものを考えているうちに、奇数倍が卓越している音、要するに矩形波です、にヴィブラートの周波数変調をかけると、奇妙な音になることがわかりました。それを次のページで解説してみました。ジャズでも同じですが、ベニーグットマンのヴィブラートはほぼ振幅変調で、音は崩れていませんでした。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-06-28 11:41:23
ページはここです。
Music of Reed at Closed End
http://www.geocities.jp/imyfujita/mozart-clarinet-quintet/mozartclarinetquintet.html
返信する
Re クラリネットの倍音 (16とん)
2015-06-28 14:44:52
藤田様

コメントありがとうございました.
「閉管では奇数倍の高調波が出ない」は書き間違いでしたので,本文を訂正しました.
「図右の上下では下がクラリネットだそうです」は,引用した文献の末尾に
The clarinet is the lower spectrum
とあったのでこれに従いました.ご指摘のように,著者 (Paul Dickensその他) の勘違いの可能性もありますね.
返信する
Re ページはここです (16とん)
2015-06-28 15:10:16
再度のコメントありがとうございます.
興味ふかく拝読しました.

学生の吹いたクラリネット音源があったので波形をチェックしてみました.腕前によるのでしょうが,この子の音は,矩形波と言えば言えるかな...という程度でした.

ところで,教えていただいたページにあった
by Physics of Music; B. H. Suits, Physics Department, Michigan Technological University
は雑誌でしょうか?
返信する
クラリネットのヴィブラート (藤田伊織)
2015-06-28 16:15:17
Physics of Music; B. H. Suits, Physics Department, Michigan Technological University はインターネットで検索したものです。
次でご覧いただけます。
http://www.phy.mtu.edu/~suits/clarinet.html

ぴった矩形波になるような音源は自然界にはないでしょうが、奇数波が卓越すればその性質を持ちます。
それで、計算で作った矩形波の音に周波数変調をかけましたらやっぱり変な音、古いコンピュータゲームの音のようになりました。コンピュータゲームの音としては変ではありませんが。
それから引用の内容はともかく、私のページの周波数分析でも示しているように、2倍音より3倍音が卓越しているのがクラリネットの特徴ですから、修正されたらいいと思います。dBの軸だと差がわかりにくいのですが、リニアだと歴然です。
計算のことはともかく、作成したmp3で新しいクラリネット5重奏曲をお聴きいただけると幸いです。弦楽器のヴィブラートを少なくして、モーツアルト時代の演奏を再現してみました。
返信する
きっと冗談 (藤田伊織)
2015-06-28 16:30:48
The clarinet is the lower spectrumは上下が逆に「印字」されているのだから、逆さにすれば上の方がクラリネットということでしょう。
返信する
Re きっと冗談 (16とん)
2015-06-28 17:20:17
そうですね.上下逆に印字というのが変ですね.
返信する

コメントを投稿

新音律」カテゴリの最新記事