Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

辻邦生の捕物帳

2017-04-01 15:43:44 | 読書
辻邦生「江戸切絵図貼交屏風」文藝春秋(1992/7).
その後 文春文庫入りし,埼玉福祉会から大活字本も出たが (2002/05),いずれも絶版.

純文学者のミステリは1・2作なら良いが量産すると質が維持できない.悪いけど,その好例が福永武彦の加田伶太郎ものだと思う.辻邦夫のこれも残念ながら後半はマンネリだが,凡百の捕物帳よりはずっと良い.
発表誌は「文学界」だが,捕物帳の定石を踏んでいる.すべてハッピーエンドというわけではないが,後味の悪い終わり方はない.

語り手は歌川貞芳という浮世絵師で,旗本の家に生まれて武士を捨てたという設定.後半で八丁堀与力が,事件が行き詰ると画室を訪れるというパターンが定着する.画家のモデルをつとめる美女がたいてい悲劇のヒロイン.事件は藩のうちわもめで,登場するのは武士ばかり.

各編のタイトルが
山王花下美人図,美南見高楼図前後,湯島妻恋坂心中異聞,無量寺門前双蝶図縁起,根津権現弦月図由来,向島百花譜転生縁起,墨堤幻花夫婦屏風,神仙三圍初午扇,武州浮城美人図下絵
と,すべて漢字7文字で統一されている.扉には江戸の古地図があしらってある.

他の辻作品同様,美術論? が板についている.Wikipediaによれば歌川貞芳は実在したが,活躍の場は大阪だったから,名前を借りただけなんだろう.

☆☆☆

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