Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

落語速記はいかに文学を変えたか

2024-09-07 09:43:49 | 読書

桜庭由紀子「落語速記はいかに文学を変えたか」淡交社 (2024/3).

左画像はカバーイラスト,右は1章の扉.このようにたった一枚の絵 (大嶋奈都子) が切り抜かれ,たらい回しにされて大活躍... いいじゃありませんか.

出版社による PR*****

〈文学を変えた「言文一致運動」、そこには落語が大きく関わっていた!〉
〈明治の名人の噺を味わう唯一の方法「口演速記」の魅力に迫る〉

寄席に行かずに落語を知る画期的な方法として明治期に生まれた「口演速記」。三遊亭圓朝ら当時の人気落語家の速記本は好評を博し多くの読者を獲得しました。一方、二葉亭四迷らの言文一致運動にも多大な影響を与え、日本近代文学史上においても重要な役割を果たしています。演芸速記の誕生秘話や発展の歴史、そして坪内逍遙、夏目漱石ら作家たちとの関わりなどを解説しながら、明治期の落語を現在に残す第一級の史料である口演速記について考察。文学ファンのみならず、ディープな落語ファンの要求にも応えます。

目次

1章 演芸速記と言文一致の誕生(速記第一号!怪談牡丹燈籠;三遊亭圓朝が明治にもたらしたもの ほか)
2章 高座を「読む」人情噺(やまと新聞と演芸速記;消えた江戸の幽霊、累とお岩 ほか)
3章 「伝える」ための試行錯誤(江戸後期から幕末までの口語体;江戸っ子と文芸 ほか)
4章 小説と話芸速記の境界線(演芸から小説、小説から演芸;伝説の『百物語』を読む ほか)
5章 演芸速記を読んでみると(絶滅危惧種の速記本;落語は文学か)
*****

この PR が全てを言い尽くしているようだ.

圓朝の「怪談牡丹燈籠」を怪談のつもりで読み進んだら,やたら長くて複雑で,後半ではミステリーと変じて,閉口した覚えがある.御一新の日本では,お上により怪談噺は荒唐無稽と排除されたのだそうだ.

圓朝の速記本はいかにも昔のことに思われるが,4章の「立川文庫から大衆文学へ」「探偵小説誕生前夜」あたりになると,講談社が現れ,中里介山,黒岩涙香,岡本綺堂,果ては吉川英治などが登場.明治生まれの父が 大衆文学が好きだったことを.ついこの間のこととして思い出した.

この本の最後は桂三木助の「文学的」な芝浜.中学時代にラジオで,その後は録音で何度か聞いたと思うが,『安藤鶴夫「わが落語鑑賞」筑摩書房 (筑摩業書 1965)』に,速記から起こされて掲載されているのだそうだ.私見だが,アンツルによる三木助の芝浜の宣伝は,今となってはヨシワルシ ?  彼なしなら文学的ではなく,普通に落語の名演として残っているのかも.

図書館で借用.

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