Sixteen Tones

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ミン・スーが犯した幾千もの罪

2023-01-19 11:06:31 | 読書

トム・リン,鈴木美朋訳「ミン・スーが犯した幾千もの罪」集英社 (文庫 2022/11).
原題 The Thousand Crimes of Ming Tsu.
図書館で借用.

Amazon の紹介*****大陸横断鉄道完成間近のアメリカ西部。妻エイダを奪われ、不当な罪を着せられた中国系の殺し屋ミン・スーは、予知能力を持つ老人の言葉に導かれ、奇術ショーの一座と共に西を目指して疾駆する。妻を取り戻すため、自分を陥れた連中に復讐を果たすための苛酷な旅路。終着地カリフォルニアで彼を待ち受ける未来は、救いか、それとも──。アンドリュー・カーネギー・メダル受賞、驚異的なデビュー作。*****

かって西部劇映画というものがあったが,マカロニ・ウェスタンへと移行し,それも消えてしまったようだ.この本はぼくにとって初めての西部(劇)小説だが,西部(劇)小説の典型とは思えない.著者が北京生まれなら,主人公も中国人.残酷場面はマカロニ・ウェスタンを彷彿とさせるが,この小説はラーメン・ウェスタンと言うには重すぎる気がする.

大陸横断鉄道敷設に使われたのはもっぱら中国人労働者だということは,知らなかった.中国人の白人に対する怨嗟も小説のバックにあるようだ.どんどん人を殺し,何の反省もないのは,キリスト教に囚われていないため ?

おもしろいところ : 解説の東山彰良がマジック・リアリスティックという形容詞を使っている部分.すなわち,盲目の中国人預言者,火をつけても燃えない美女,人の記憶を消せるナヴァホ族の男,テレパシーが使える聾唖少年,主人公をあえて襲わない毒蛇,主人公の飢えと渇きを助ける赤目アルビノのクーガー (ピューマ)...などによるエピソード.東山は中国古典の影響としいうが,ぼくはもっと飛躍して,西遊記を連想した.
でも荒唐無稽が,とつぜん哲学的になったりする.

訳者は女性らしい.


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